「上司が辞めた」「異動で情シスデビュー」「Win10に四苦八苦」――情シス、悲喜こもごもの2016年俺たちの情シス 第8回 リポート(2/2 ページ)

» 2016年12月30日 07時00分 公開
[大類大吾ITmedia]
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突然、情シスに任命されたら?――新人情シスの苦難と葛藤

 続いて登壇したのは、建設会社の事務職から情シス部門に移動したTさん。2015年から情シスとして働き始めたTさんは、「配属されて1年、思ったのは『勉強することが多過ぎる!』ということだった」と振り返ります。

 情シスには、さまざまな部署から質問や要望が飛んできます。Tさんの元にも、「ランサムウェアの回避方法は?」「タブレット端末の弱点は?」「Webブラウザの違いは何?」といったような質問や、「もっと使いやすいシステムを作って」「業務でLINEを使いたい」といった改善要求などが届き、それに対して「きちんとした知識を備えた上で、技術とコストの面から説明し、理解してもらうことが困難だった」といいます。

 また、Tさんは「情シスには人員が足りない」という問題も指摘。「社員数が2500人以上なのに対して、情シスはわずか10人。異動も頻繁なため、専門知識が身に付く前に転出してしまう人も少なからずいる」とし、結果的に「ITスキルの低い人間に要件定義が任される事態になっている」と警鐘を鳴らしました。

 突然任命された情シスを全うするための対策として、Tさんは「ひたすら勉強すること」を選択。さまざまな勉強会に参加し、書籍やニュースサイトを読み漁ったそうです。他にも、「自宅でコードを書いたり、資格も受けた」というTさん。こうした経験から、基本が身に付いていないと何もできないということを学び、それを「不安定な土台に立派な家は建たない」という言葉で表しました。

 情シスとして、こうした難しい状況を解決するには、「知ったかぶりをせず、社外の人に対しても素直に『分からない』ということが重要」とTさん。「情シスの仕事ではいろいろな部署の人から依頼を引き受けるのですが、その中には経験したことのない仕事の話も含まれています。例えば、会計の仕事で、卸した商品が売り上げとして計算されるのはどのタイミングなのかということは、全く分かっていませんでした。他部署と話をするときには、そのような、業務の根っこの部分を尋ねるように心掛けてきました」(Tさん)。

 Tさんは、「他のさまざまな部署と接点を持ち、一緒に課題を解決できるのは情シスならでは」といい、情シスの仕事を通してITの知識が深まっただけでなく、マネジメントや内部統制などについても学ぶことができたと語りました。

Photo Tさんが情シスになって良かったと思ったこととは

 また、「情シスは仕事に関することであれば、人事や総務など、どんな人に質問をしても許してもらえると感じた」と発言。Tさんと同じ総務系情シスであるアイティメディアのイシノが、「他の部門とのコミュニケーションで得られるものは大きい」と同意すると、会場に共感の輪が広がりました。

Vistaから脱却、Windows 10へ。ITリテラシーの溝を埋める環境構築も

 来場者によるライトニングトークのトリをつとめたSさんは、「俺たちの情シス」に毎回参加しているレギュラーメンバー。NPO法人で困窮者や自立を目指す若者を支援するSさんは、2015年に取り組んだこととして、Windows VistaからWindows 10に移行したことを挙げます。

Photo 俺情皆勤賞のSさんが、ついにライトニングトーク登壇を決意

 Sさんは「Vistaの前はWindows XPだったが、そのときもサポートが切れるぎりぎりになって乗り換えた」と振り返り、その際、経費節約のために「無理をしてWindows 7を使うよりもVistaで生き延びよう」という考えに至ったと説明。そのVistaでもコスト削減に行き詰ったことから、NPO法人向けに寄贈プログラムを提供しているTechSoup(テックスープ)のサービスを利用して、Windows 10とセキュリティソフトを導入しました。

 Sさんは「本当はWindows Serverを入れたかったけれど、テックスープの手続きが切り替わる時期だったため購入できなかった」といい、これを次に取り組むべき課題として挙げました。

 また、セキュリティ対策として、自動ログインのPCしかなかった状況を刷新し、新たにWindows 10の「Windows Hello」や、PIN入力によるセキュリティ環境の構築にも取り組んだそうです。

 こうした経験を通じてSさんは、仕事に対する認識が変わったといいます。「学生時代には、“情シスの仕事は人と会うことなく、ネット経由で済む”と考えていましたが、実際に働く上では、直接会って話すことが重要だと再認識しました」(Sさん)

オフィスの引っ越しで着ぐるみに包まれた謎の金庫と対面!?

 最後に登壇したのはアイティメディアの情シス、イシノ。2016年のハイライトとして挙げたのは「アイティメディアのオフィス移転」でした。

 移転の際には、旧オフィスから着ぐるみに包まれた謎の金庫が出てきたり、予想をはるかに超える大量の紙の処理に追われたりと、予想外のあれこれに対応すべく大忙しだったとか。自分でも気付かぬうちに疲れがたまっていたようで、移転の翌月、突然、倒れるという事態に……。

 「会社で上司と話していたはずが、気づいたら床に寝ていたんです」(イシノ)

 精密検査の結果、異常はみられなかったようですが、イシノは今、早めの帰宅を意識しているようです。頑張るのもほどほどに!

Photo イシノを慌てさせた引っ越しのあれこれ

2016年の「俺たちの情シス」の2016年を振り返る

 最後に、司会をつとめたITmedia エンタープライズ編集部のイケダが、2016年の「俺たちの情シス」を振り返りました。

 初回から“モデレータという名の客いじり”をしてきた結果、まるで芸人のようなトークが身につき、それを見たサイボウズのイベント担当者から、モデレータを依頼されるという“事件”が起こりました。また、ほかの会社の人から「俺たちの情シスのファンです」といわれるようになるなど、すっかり知名度がアップ。「これも、俺情に来てくださるみんなのおかげ」と、感謝することしきりでした。


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 ITmedia エンタープライズは、2017年も俺情を開催致しますので、ぜひ、情報交換の場としてお役立てください。

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