システムの数だけパッチ適用プロセスのパターンをカスタマイズ(作成)すれば、プロジェクト工数や想定外の作業が増えて、スケジュールが遅延しやすくなりますし、何より、膨大なカスタマイズで生まれる成果物の維持管理が大変です。管理対象が増えれば、品質維持も難しくなります。
こうした個別カスタマイズの考え方の対極にあるのが「標準化(standardization)」です。標準化とは、今まで同じ目的のためにバラバラに存在していたものを統一化すること。私たちの文明の発展は、標準化なしには考えられません。皆さんがなにげなく使っているcm、kgといった単位、日常的に使っている(もはや、使っていると意識しないレベルの)インターネットも標準化の産物です。
想像してみてください。隣の人が、知らない重さの単位でモノの重さを伝えてきたらどうしますか。恐らく、その重さの単位の説明から聞く羽目になるでしょう。重さを共有したいだけなのに、それ以前の会話から始める必要があるのです。本来の何倍もの時間を費やすことになるでしょう。
先ほど例に挙げたパッチの適用にも同じことが言えます。システム開発者は、ただシステムのサーバOSにパッチを当ててほしいだけなのに、会社(またはサービス)として標準的な方法が確立されていないために、そのやり方から考える必要が出てくるのです。それも多くの企業がWindowsやLinuxといった、デファクト・スタンダードなOSを使っているにもかかわらず。
これは企業活動として大変な“ロス”だと思います。外資系のパッケージソフトウェアは特に、そういった標準化の概念が根底にあると考えた方がいいでしょう(マニュアルには、特にそのような解説はありません)。そうと知らずに使ってしまうと、本来の効果が得られないばかりか、かえって非効率な結果を招くことになります。それで「このソフトウェア、使えないね」といわれてしまっては、ソフトウェアがかわいそうです。
しかし、日本企業のIT運用で「標準化」がなされている現場はほとんどないと言っても過言ではありません。
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