同社は、2016年12月に中国・深センで開催したハードウェア開発者向けカンファレンスの「WinHEC」で、ARM版Windows 10をデモンストレーションした。QualcommのSnapdragon 820による開発プラットフォームを使って、x86/x64ベースのAbobe Photoshopを動かすというものだ。
WinHECの基調講演のビデオを見る範囲では、ある程度問題がないパフォーマンスで動作していた。同社は、CAD/CAMや3Dグラフィックなど負荷の高いアプリケーションは難しいが、Officeなどオフィスワーカーが利用するアプリケーションでは問題のないパフォーマンスで動作すると語っている。
ARM版のWindows 10には、Windows 10のインストールベースを広げていく上で大きな意味がある。
ここ数年、デスクトップPCやノートPCなどの市場シェアが減少し、2in1 PCやタブレットPCといったモバイルデバイスへのニーズが高まっている。低価格のタブレットではIntelのAtomプロセッサとWindows 10の組み合わせが用いられていたが、IntelがAtomプロセッサの開発を中止してしまったため、低価格でモバイル向けとなるx86/x64プロセッサが見当たらない。Core Mや低消費電力版のCoreプロセッサを用いると、高価なタブレット製品になってしまう。そこでWindows 10のインストールベースを増やすには、低価格なタブレット製品のためのプラットフォームが必要になる。
ARM版のWindows 10は、QualcommのSnapdragon 835をベースに開発が進められている。ただしSnapdragon 835はハイエンドプロセッサのため、2017年にリリースされるARM版Windows 10タブレットは、それほど低価格にはならないだろう。2018年もしくは2019年にSnapdragon 835の派生製品が低価格で提供されるようになれば、ARM版Windows 10のPCのバリエーションが増えることだろう。
だからMicrosoftは、ARM版Winodws 10を提供するために、安定したプラットフォームを持つQualcommをパートナーとして最初に選んだと思われる。将来的には、より低価格なARMプロセッサを提供しているMediaTek、RockChipなど、さまざまなARMのチップベンダーにも働きかけるだろう。もちろんARM版Windows 10のエコシステムがうまく機能する環境を整えないといけない。
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