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» 2017年01月25日 10時00分 UPDATE

Computer Weekly:ARM HoldingsのシガースCEOに聞くIoT戦略、そしてARMの強さの秘訣

ソフトバンクによる買収を受け入れたシガース氏に、ARMの戦略を聞いた。大きく伸びているIoTへの取り組み、そしてソフトバンクによる買収による影響とは?

[Lis Evenstad,Computer Weekly]
Computer Weekly

 英国IT業界で最も大きな影響力を発揮した個人に贈られる賞「UKtech50」の2016年度受賞者サイモン・シガース氏にとって、2016年は多忙な年だった。チップメーカーARMの持ち株会社であるARM HoldingsのCEOを務めるシガース氏は、モノのインターネット(IoT)セキュリティ部門の拡大など、一連の改革の指揮を執り、ブレグジット(英国のEU離脱)対応にも取り組んだ。しかし特筆すべきなのは、日本のハイテク企業ソフトバンクグループによる買収を受け入れ、同グループに加わる決断を下したことだ。

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 同氏は2013年、前任のウォーレン・イースト氏がARM Holdingsを去ったことで同社のCEOに就任。スマートフォン時代の到来が追い風になり、同社は大きく成長した。同社はここ3年ほど急成長を続けているが、2016年の成長の要因になったのはIoT分野が空前の伸びを見せたことだ。

 増加中の「コネクテッドデバイス」の事業を進めるには、真の経営手腕が要求される。2016年10月、ARMは日本の産業用チップメーカーAdvantechと提携し、IoTシステムの展開を加速させた。

 ARMのIoTデバイスプラットフォーム「mbed」は、エンドツーエンドの管理ソリューションとして活用されることを目指している。複数のOS、クラウド、開発エコシステムをカバーするとともに、IoTの大規模な開発の安全な管理をできるだけ楽に進められるよう設計されている。

 「IoTデバイスの用途は限りなく広い」とシガース氏は話す。「コネクテッドデバイスは、産業界でも人々の日常生活の中でも急激に普及している。だからこのデバイスを適切に管理することが、今後ますます重要になる」

 2016年10月に発生した、DNSプロバイダーDynに対する分散型サービス拒否(DDoS)攻撃は、その必要性を痛感させるものだったとシガース氏は付け加える。攻撃は過去最大級のもので、アンダーグラウンドなフォーラムで公開された、IoTデバイスを狙うマルウェアコード「Mirai」が使われていた。攻撃者はIoTデバイスのセキュリティが総体的に甘いところに着目し、出荷時設定のままで利用されていたり、静的なユーザー名やパスワードが設定されていたりするデバイスを攻撃した。

 ルーター、防犯カメラ、DVR(デジタルビデオレコーダー)など多数のデバイスが相互接続で1つにまとまっていることを利用したのだろうと、シガース氏は推察する。

 「これからもっと怖い世界になるかもしれない」と同氏は語る。「業務用、一般家庭用を問わず、コネクテッドデバイスは全て攻撃される恐れがあるが、被害は何としても避けたい。あの(Dynへの)攻撃を見てくれ。対象にされたデバイスのセキュリティはひどいものだった」

ITリーダーが配慮すべき課題

 シガース氏は、ビジネスリーダー、CIO(最高情報責任者)、CDO(最高デジタル責任者)の立場にある者はサイバーセキュリティを最優先施策として「気に掛ける」べきだという持論を展開する。

 「IT部門の人間はファイアウォールなど従来のセキュリティ対策について、完璧とはいえないまでも十分に知恵と経験を蓄積しているからだ」と同氏は語る。

 「ところがネット接続の防犯カメラは新たな攻撃の的になっているにもかかわらず、その事実を考慮していない個人や企業が非常に多い」

 コネクテッドデバイスは全て、使用可能な間はずっと、管理と(内蔵システムの)更新を継続しなければならないとシガース氏は考える。「われわれは現在、(攻撃を受けても)デバイスが復旧するように、その基礎となるテクノロジーの開発に取り組んでいる」と同氏は説明する。

 2016年前半、ARMはイスラエルのクファールネッターにあるデザインセンターに配置しているIoTエンジニアリング部門を拡張中だと公言していた。同デザインセンターは、IoTやモバイルコンピューティング向けに、高性能システムオンチップ(SoC)のIPに影響を及ぼすテクノロジーの開発を目的としている。

 「チップやその他の製品で必要とされる、基本的なセキュリティ機能を幾つか開発中だ。これが実現すれば、IoTデバイスは、Webブラウザのようにその寿命を終えるまで更新が繰り返されるマネージドデバイスになる。コネクテッドデバイスは全て同様の機能を実装すべきだ」とシガース氏は主張する。

英国にとどまることを確約

 シガース氏が明言したことをもう1つ挙げるとすれば、たとえ早晩課題に直面するとしても、ARMは拠点を英国から移すことはないと確約したことだ。

 同社は2016年9月にソフトバンクに買収されたため、いずれは日本に移転するのではないかと解釈する向きもあったが、ARMもARM Holdingsも、拠点は英ケンブリッジのままで当面変更はない。実際のところ、ソフトバンクは英国勤務の従業員を倍増させるだけでなく、英国以外の拠点の従業員も増員する計画があることを発表した。

 「当社は真の意味でグローバル企業だ」とシガース氏は話す。本社が英国にあるとはいえ、事業の大半を英国外で展開している。

 同社が常に考えているのは、「世界で今何が起こっているのか」。つまり、未来を制するテクノロジーはどこにあるのかということだ。

 「(全世界で事業を展開する)年中無休の会社を経営すると、常に何かが起こっているものだ」(シガース氏)

 ソフトバンクがARMを買収した理由の1つは、ARMが半導体に関する知的財産(IP)とIoTの分野では世界的に強いだけでなく、イノベーションの面でも多くの実績を重ねていることだった。ではシガース氏はCEOとして、業界内のARMの地位をどのようにして守り続けているのか。

 「当社のエコシステムを推進、拡大することと、サプライチェーンの拡張や縮小を主導できるほど、多くの関連企業との関係を構築することを重視している」と同氏は主張する。

 「また、世間に隠れてコソコソと何かをでっち上げるのではなく、大切なパートナーと密接に連携しながら事業を進めていることを保証することも大事だ。第一線に居続けるための秘訣(ひけつ)は、関連各社と良いパートナーシップを構築することだ」

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