日本では、業種の偏りなく、さまざまな企業でRPAの導入を検討あるいは実装し始めているが、大規模導入につながりやすいのは、金融機関だという。同社では、金融機関や電力やガス、行政機関など、国内向けにサービスを提供してきた組織は業務改善の余地が大きく、RPAの導入先として可能性を感じているそうだ。
「銀行であれ、保険会社であれ、金融機関には膨大な事務手続きがあります。人海戦術で行っている業務に適用しようとなると、100台単位での導入になることも多いのです。逆に製造業では、良くも悪くも既に血のにじむようなコスト削減努力を重ねているので、まずはお試しで数台入れてみて、徐々に適用範囲を広げていくパターンが多いですね」(信國氏)
RPAを動かすにはPCのデスクトップ環境が必要だが、導入する分だけPCを用意する――というわけではなく、導入が大規模になれば、サーバに仮想デスクトップ環境を用意して動かせばよい。管理コストやリソースの柔軟性といった面でも有利になる。
RPAに実行させる作業を設定するには、まずは一連の作業を人間が行って記憶させ、細かな条件分岐や、繰り返しといった細かなロジックを追加していく。作業の“標準化”に似たイメージだ。
プログラミング作業自体は高度な技術を要するものではなく、大規模なシステムを開発するのに比べると、RPAの導入費用は非常に安価で、試験導入までにかかる期間も1〜2カ月と短い。そのため、まずはユーザー部門で試験導入してみて、全社的に展開するとなった際に情報システム部門も巻き込むというケースが多いようだ。
「RPAを導入しても、ロボットの作業結果を、人間が頻繁に確認する必要があるようなプロセスでは非効率です。もともと行っていた作業をそのままロボットに適用するのではなく、より効果が出るように、プロセスの順序を多少入れ替えたり、方法を変えたりするなど、自動化できる範囲を広げられるよう、BPR(Business Process Re-engineering)のような手法を採ることもあります」(信國氏)
ロボットが仕事を代替するというと、どうしても「人間の仕事がなくなってしまう」というようなネガティブな捉え方をしがちだ。しかし、前述の通り、少なくとも日本においては、人手不足の窮状を救う“救世主”となる可能性が高い。信國氏は、自社におけるRPA導入の結果を社長に報告したときのことをこう振り返る。
「先ほどのデモを社長に見せたとき、最初の感想は『すごいね』とかではなく、『こんな地味な仕事をみんなよくやってくれていた』だったんです(笑)。貴重な人材を、ロボットができるような仕事にこれまで使っていたのかと。日本の会社の場合、やはり事業の将来を考えて動くといった、より付加価値が高く、人間が本来すべきことをする時間を創出するために、RPAを使うのがよいと思います」
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