DMPで顧客の傾向やビジネスのタネを見つけたものの、ここで他社と同じような施策に走ってしまっては、その効果も半減してしまうでしょう。今回は、DMPを用いた具体的な施策についてのお話です。
本連載では、DMP活用の目的をビジネスにつながる「インサイトの発見」だとお伝えしてきました。この顧客にはこういう傾向がある、この顧客にはこんなメッセージが刺さるのでは――そのような“仮説”を得たとして、次に何をすればいいのでしょうか。DMPを用いた施策について、次のような状況に陥って困る人は少なくありません。
DMPの運用を始め、少しずつですがインサイトらしきものを発見しています。「この集団は〇〇だから、この商品に興味を持ってくれるのではないか?」という仮説も出てきました。しかし、その仮説を生かす先がDSP(※)以外にあまりないんです。他のシステムと連携しようにも「あなたのところだけ特別扱いできない」「別途で追加費用がかかる」という話になり、非常に困っています。
※DSP……Demand Side Platform。複数のアドネットワークに一括で出稿できるシステム
ビッグデータを駆使して「1to1マーケティング」を実践し、オフラインとオンラインを横断したマーケティング全体を最適化する――。昨今、DMPを検討する企業はこのような目的を持っているケースが多いです。こうしたお題目に反対する人は少ないと思いますが、問題はそれをどう実現するか。私は、これまでのDMPはインサイトよりも施策が重視されていたと考えています。代表的な例を1つ挙げましょう。
「この人たちは製品を知らない潜在層だが、興味を持つ可能性が高いのではないか?」という仮定や施策は、データがあることで実現するものですが、あくまで可能性にすぎず、閲覧履歴やCookieを用いたリターゲティング広告配信の前に、CVR(Conversion Rate:顧客転換率)で比較されて敗れることが多いのです。
既存のクラスタと似たような行動を取っていても、趣味や嗜好(しこう)まで同じとは限らないですし、それが違えば、製品を気にいる可能性は非常に低いでしょう。本来、DMPを生かしたアクションとリターゲティング広告配信は、目的が異なるため、単純に比較すべきではないのですが、結果的に「なんだ、DMPってダメじゃん」というらく印を押す人が多いのも事実です。
こうした誤解が生まれる背景には2つの理由があります。1つは、インサイトの発見と施策がセットで語られる機会が多かったこと。もう1つはインサイトを発見するためのデータがデジタルに限られるケースが多いことです。発見したインサイトの生かし方は無限にあるはずですが、この2点から施策の幅が狭まり、「インサイトを発見しても生かしようがない」という誤解につながるわけです。
そこで今回は、DMPからどう具体的な施策につなげるかをお話ししようと思います。
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