まるで“現場に瞬間移動”したような感覚 “HoloLens×建設”がもたらすインパクトMicrosoft Focus(2/2 ページ)

» 2017年04月22日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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3Kといわれる建設業界のイメージを変えたい

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 小柳建設がHoloLensの採用に乗り出した背景には、社長を務める小柳氏の「建設業界を変えたい」という強い思いがある。同氏は2014年に社長に就任し、以降、建設業界の課題解決に積極的に取り組んでいる。

 「ただでさえ少子高齢化の進展で人材確保が難しいのに、建設業界は、“きつい、汚い、危険”といわれる3Kの職場でなかなか人が集まらない。また、“古い業態のまま”というマイナスイメージがそれに拍車を掛けている。さらに、データの改ざんや耐震偽装の事件によって、“不透明な業界”というレッテルも貼られている。業界を変えるために一石を投じないといけない」(小柳氏)

 さらに、社内の改革にも乗り出す姿勢を見せている。

 「社員は現場で一所懸命に仕事をして、さらに書類づくりで夜遅くまで仕事をしている。そんな社員たちを、“どうしたらもっと楽にできるか”を考えている。今はデジタルトランスフォーメーションによって建設業を再編しなくてはいけない時代。HoloLensを活用することで、これまで仕方なくやってきたことや、変わらない仕組み、人の意識を一気に壊せるのではないかと直感的に感じた」(小柳氏)

 同社Webページの中で小柳社長は、建設業界の現状について、いろいろなITの取り組みが始まってはいるものの、いまだ人の手や昔ながらの考え方や風習に縛られているとし、「すさまじいスピードで進む社会環境の変化に“ついていく”のではなく、“時代を引っ張る存在”となり、先端技術を地域の人々に提供する使命がある」としている。実際、ドローンを活用した測量などにもいち早く取り組むなど、その言葉に偽りはない。

建設業を、“子供があこがれる仕事”に

 建設業界が抱える課題を、最新技術を使ったデジタルトランスフォーメーションに取り組むことで改革し、子供たちが憧れる「カッコイイ仕事」にする――。これが小柳氏のビジョンだ。

 「壮大な仕事をしている建設業界から3Kのイメージを払拭(ふっしょく)して誇りをもって取り組める仕事にしたい。魅力ある業界にしていくためにマイクロソフトの力を借りたい」(小柳氏)

 その意気込みは、日本の発売前に米国でHoloLensを購入し、自社の業務にどう生かせるかを検討してきたことからもうかがえる。

 「HoloLensがあれば、計画から施工中、検査の段階でも、発注者が善しあしを判断でき、タイムスライダーを使えば未来を見ることもできる。これは大きな強みになる。さらに、こうした過程がガラス張りになり、紙自体もいらなくなる。建設業で働く人たちの働き方が変わると思っている。社員の働き方もカッコよく、効率よくなっていく。新潟の企業でも、世界の最先端を走ることができるということを示し、この業界を引っ張る存在でありたい。マイクロソフトとともに、新潟から世界を変え、世界の大きな力になれる企業になりたい」

 米本社の開発プログラムは誰でも参加できるものではなく、そこには明確なビジョンや熱い思いが欠かせない。今回のプロジェクトは、小柳建設の描くビジョンと小柳社長の熱意が米本社に届いた結果といえるだろう。そして、この取り組みは、建設業界の働き方改革にもつながるはずだ。

 「このメリットを自社で活用するだけでなく、業界全体に知ってもらいたい。HoloStructionはきっと、i-Constructionの広がりをバックアップする取り組みになる」(小柳氏)

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