“ささやかな抵抗”とは、Googleに全ての情報を押さえさせないこと。Googleは情報を集めていますが、それによる注目――監視の目も集めています。特に個人情報は「利用者が削除を希望したとき、確実に削除されること」が求められます。EU圏では「忘れられる権利」や「一般データ保護規則」(General Data Protection Regulation: GDPR)などでも、個人情報の削除が適切に行われているかが注目されています。ならば、Googleから、“移動できる情報を他のクラウドに移す”ことで、“Googleに全てを渡さない”ようにできるはずです。
そこで、簡単に移動できる個人情報を別のクラウドサービスに移すことを考えました。Googleマップ(ロケーション履歴)やGoogleフォト、そしてGmailはとても便利なので、これはGoogleに担当してもらうとして、その他の重要な情報である「カレンダー」「Todoリスト」「連絡先」を、他のサービスに移したのです。これで、万が一アカウントが漏れたとしても、サービスが“Evil化”しても、全てをとられないようにできるのではないかと考えたわけです。
カレンダー情報はいったんiCal形式でエクスポート。連絡先情報はvCard形式でエクスポートをして、受け皿としてアップルのiCloudへインポート。そしてGoogle側の情報をきれいに「削除」することにしました。スマートフォンにつながる情報を分割したとしても、スマートフォン側で複数のクラウドサービスを利用できますし、保存先も選択できるので、利用する上でほとんど影響はないはずです。
このように、クラウドを分割して使うのは、意外と簡単です。ただ、実効性があるかどうかは何とも言いがたく、もしかしたら無意味なのかもしれません(したがって、あくまで“ささやかな抵抗”なのです)。
もはやiOSやAndroid、Windowsなどを利用する上で、クラウドサービスの利用は避けて通れません。これらの機能はとても便利ですが、「それと引き替えに情報が取得されている」ことは、もっと知られてもいいと思うのです。この点は、サービスを提供するベンダー側も強調すべきでしょう。それを承知の上で、サービスが便利だと思う人は使えばいいのですから。
この仕組みにプライバシー上の恐怖を覚えた人は、ささやかでもいいので対策を打ってみてはいかがでしょうか。
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
筆者より:
2015年2月10日に本連載をまとめた書籍『デジタルの作法〜1億総スマホ時代のセキュリティ講座』が発売されました。
これまでの記事をスマートフォン、セキュリティ、ソーシャルメディア、クラウド&PCの4章に再構成し、新たに書き下ろしも追加しています。セキュリティに詳しくない“普通の方々”へ届くことを目的とした連載ですので、書籍の形になったのは個人的にも本当にありがたいことです。皆さんのご家族や知り合いのうち「ネットで記事を読まない方」に届けばうれしいです。
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