10分で分かる、今さら聞けないクラウドの真の価値デジタル改革塾(2/3 ページ)

» 2017年06月09日 11時45分 公開
[下玉利尚明ITmedia]

「失敗のコスト」が劇的に下がり、イノベーションを加速

 企業はクラウドが登場したことで、必要なシステムを簡単に素早く、低コストで手に入れられるようになった。従来であれば、ITを使って新しいプロジェクトを立ち上げたいと思っても、失敗した場合のリスクを考えて着手できなかった案件が、クラウドなら「数千円の損失」で済むのでハードルが下がる。これこそが、爆発的なイノベーションが起きている理由の1つだ

 「クラウドの登場によって、失敗のコストが下がった。成功確率は今も昔も変わらないだろうが、今は失敗のコストが安くなったからたくさん失敗できる。失敗の数が増えれば、当然、成功の実数も増える。それがITにおけるイノベーションを爆発的に加速させている」(斎藤氏)

 ITの難しさが隠され、利用者の裾野がどんどん広がっていく。そしてITの利用価値がさらに高まっていく――。このようなサイクルが生み出されたことが、クラウドのもたらした大きな価値というわけだ。

クラウドの分類

 斎藤氏は続けて、クラウドには提供されるサービスモデルによって「SaaS」「PaaS」「IaaS」があることに触れた。アプリケーションをサービスとして提供するのがSaaSで、これは例えば、Office 365、Salesforce、Gmailなどが挙げられる。

 PaaSは、データベースの機能を提供する。データベースを使うには、導入設定やバックアップ、トラブル対応、ソフトウェアの修正パッチの適用などを行う必要があり、この運用の手間を全部請け負ってくれるのがPaaSだ。

 IaaSは、物理的なコンピュータをユーザーごとに能力で切り分ける。「1台のハードウェアだが、それをあたかも10台や20台のコンピュータが存在するように見せかける技術を『仮想化技術』という。仮想化によってサーバやストレージを貸し出してくれるのがIaaS」(斎藤氏)

Photo クラウドをサービスモデルで分類

 クラウドはサービスモデルだけでなく、「配置モデル」でも分類できる。企業が「自分たちの会社だけで専用のクラウドを使いたい」と考えた時に適しているのがプライベートクラウド。施設やデータセンターを自社で借りて専用のクラウド環境を構築するスタイルで、当然、費用も掛かる。

 一方、パブリッククラウドは共同利用モデルだ。運用管理の全てを「クラウドの事業者へ任せる」という考え方だ。クラウドは、大きく分けるとプライベートとパブリックに分けられるが、物理的にはパブリックで、全体の運用管理はクラウド事業者に任せ、特定の領域を自社専用に割り当ててもらう使い方がある。これを「ホステッドプライベートクラウド」という。また、プライベートとパブリックを必要に応じて使い分けようという、「ハイブリッドクラウド」という考え方もある。

Photo クラウドを配置モデルで分類

クラウドが備える5つの特徴とは

 斎藤氏は、クラウドの特徴として次の5つを挙げた。

  • オンデマンドセルフサービス→メニューから選ぶだけで必要なシステムの構成や機能を調達できる
  • 幅広いネットワークアクセス→PCだけでなく、スマートフォンなどさまざまなデバイスからアクセスできる
  • リソースの共有→複数の企業が共同で利用できる領域を持っている
  • 迅速な拡張性→必要に応じて拡張や縮小ができる
  • サービスの計測可能・従量課金→どれくらい使ったかがひと目で分かる

「これらの5つの特徴を持っているものを、クラウドコンピューティングと呼ぼうという考え方がある」(斎藤氏)

Photo クラウド5つの特徴

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