「まず、行内にどんなデータがあるのかを洗い出すところから始まりました。今回のシステムで何を達成したいのかを考え、必要最低限のデータを検討、議論していきました。銀行内にあるデータは膨大です。単純に全部を放り込むと、情報量だけが増えて扱いにくくなってしまいます。
一つひとつのテーブルについて、情報システム部門に意味を聞きながら、形式や項目といったデータ格納の仕組みを定めていきました。業務の目線とシステムの目線、この両方をつなげるのに苦労しました。本当に細かい作業でしたね」(井上さん)
もともと井上さんは前職のヤフーでDWHチームとともに仕事をしていた経験もあり、DWHに関する知識があったという。さらに、システム構築を担当していた情シスが非常に協力的であったのも、プロジェクトがスムーズに進んだ要因だと井上さんは話す。データの説明に加え、よりよいデータ格納に向けて積極的なフィードバックがあったそうだ。
DWHを導入して、まず効果があったのは分析にかかる時間の短縮だ。Accessで分析していたころよりも4〜5倍速くなったという。
「DWHを導入してから、作業内容が広がったので単純な比較はできませんが、体感では5倍くらい早くなったと思います。これまでは、昨日と今日の取引や残高を比べたり、1カ月前と比べたりする作業が本当に憂鬱(ゆううつ)だったんですよ。データ量が増えるとPCがフリーズするし、データサイズの上限もあります。Accessはリソースを食うので他の作業もできませんでしたし。
分析の途中で追加で必要な情報が出てくれば、またデータの取り込みから始めなければならない。DWHであれば変数をもう1つ加えればいいだけなので、導入してからは、そういったストレスがなくなりました」(じぶん銀行 マーケティングユニット マーケティング部 調査役 冨加見大晃さん)
自らデータ分析を行うユーザー部門の人間が増えたのも、DWH導入の大きな効果だという。社員約220人のうち、現在は30人程度がDWHを利用してデータを分析しているそうだ。その数は導入前と比べておよそ3倍。特に派遣社員に任せていた分析作業を自ら行うようになった人が多いという。
「実際に自分たちで手を動かして数字を見て、何か意志決定するという動きは、以前よりも飛躍的に増えているように思います。データ分析を行うときは、個人情報を扱う専用のPCで作業するのですが、DWH導入後は端末の台数が3倍に増えました。それも今は空きが全然ありません」(冨加見さん)
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