なぜ日本企業はSFAやERPをうまく使いこなせないのかITソリューション塾(2/2 ページ)

» 2017年06月15日 11時00分 公開
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違いを理解した上での活用がキー

 ITに関わる製品やサービスが、欧米生まれであるということは、作られた国の文化やビジネス環境を前提にしていることを忘れてはならない。だから、「欧米の製品は使えない」という短絡的な話ではなく、そういう違いを理解して、“うまく付き合う”ことを考えるべきだろう。

 例えば、SFAを導入したがなかなかうまく使いこなせないのは、営業の考え方ややり方が日本と米国では大きく違っているからだ。既に述べたが、欧米の経営者は人的資産を効率よく統制し、自分たちの事業目的の達成に向けて、確実に動かす仕組みを求めている。当然、経営者は、現場の末端に至るまで、迅速正確に情報を収集する術を必要とする。SFAとは、そのための道具だ。

 また、そこに働く営業は、個人事業主に近い独立した専門職である。従って、雇用者に対して、自分の抱えている案件の進ちょくを報告し、それに従って成果を上げなければ、報酬(コミッション)を得ることができない。結果として、経営者は営業案件の進ちょく状況やパイプラインを正確に把握することができる。このように、両者の利害が完全に一致しているからこそ、SFAは正しく機能する。

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 日本では、個人の営業業績を個別に評価するのではなく、組織やチームの業績として評価することが多い。また報酬もコミッションはなく固定給であり、個人の業績に直接連動していない。また、SFAへの入力は、自分たちには直接的な益のない「報告事務」という余計なオーバーヘッドと考える。そのため、営業活動の進ちょくをリアルタイムに入れることにモチベーションはない。

 しかし、営業チームの責任者は経営者から頻繁に報告を求められる。そこで、一人ひとりの営業に個別に話を聞いて、自らの主観を交えて営業状況をExcelにまとめる。そして、月末になって部下にそのExcel集計を手渡し「この通り入力しなさい」と指示し、まとめてSFAに入力させている。つまり、経営に対して数字を集計報告するためのツールとしてしか機能していないということになる。これでは、高いお金を払ってSFAを入れても、全く意味がない。

 とはいえ、SFAを入れてしまった以上は、使わなくては責任者のメンツがつぶれる。そこで、「SFA活用委員会」なるものを立ち上げて、活用を促すものの、本来の思想や文化が違うわけなので、結局は、その取り組みも破綻する。

 このように背景にある文化や思想の違いを考えず、表層的な機能や性能だけでシステムを導入しても、うまく使えないのだ。

 SFAに限らず、製品やサービスは、課題やニーズがあるから存在する。その前提となる思想や文化が異なるのであれば、たとえ優れた機能や性能であっても、そのままでは使えない。その当たり前を十分に確認しないままに選定することは、厳に慎むべきだろう。もちろん、ITベンダーもそのことを正しく伝える責任を負っていることを忘れてはいけない。

著者プロフィール:斎藤昌義

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 日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィールはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら

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