なぜ“パシャふり授業”を思い付いたのか、太目さんに尋ねたところ、「旅行へ行った後に撮った写真を見直して、その旅行の思い出を鮮明に思い出すことってありませんか? それを勉強にも生かせたら、と思ったのがきっかけです」という答えが返ってきました。
私も旅行に行くことが多いので、太目さんの言うことがよく分かります。写真を撮った場所と撮らなかった場所は、記憶の残り方が違うんですよね。もちろん写真を撮ることに集中しすぎて、肉眼で見ることをおろそかにしてはいけないのですが……。写真に残した場所は、「そうだそうだ。ここに感動したから写真を撮ったんだよね」とその時の情景を思い出しやすいんです。
「生徒自身が『分かった!』と気づいたり、『こうしてみよう!』と考えたりする、生徒の主体性を大切にできるような学習・教育方法を研究しているんです」(森本先生)
太目さんの提案する“パシャふり授業”は、森本先生の指導の下、生徒が自ら学びやすいようにと考えられた学習方法なのです。
さらに、“パシャふり授業”の利点は、kintoneに残したデータをみんなで共有できるところ。先生も生徒たちがどこに注目したのか、授業の理解度をチェックでき、生徒同士も他の人がどこを重要だと思ったのか確認できて、便利ですよね。
勉強ができる人って、授業の受け方やノートの取り方からして既に違うものですが、なかなかマネできない。勉強ができる人のノートを借りられたら、もう少し私も勉強ができるようになったんじゃないかしら、と思うのですが、“パシャふり授業”は、それに近いものがありました。
スマートフォンとkintoneを活用した“パシャふり授業”。私も学生時代に経験してみかったなあ、と森本先生の講義を受けながらうらやましくなってしまいました。
とはいえ、気になることが1つ。
皆さん、それぞれ好きなタイミングでパシャパシャ撮ってますけど、他の人のシャッター音って気になりませんか? ふつう講義の最中は、邪魔にならないように音を消して電源切ってマナーモードに設定して、かばんの中にしまっておきますよね。
森本先生に聞いてみると、「逆に音が鳴ることで、周りが撮影しているのが分かるので、『あれ、ここ重要なのかな?』と授業に集中し始める人もいますよ」とのことでした。
なるほど! これを聞いた私は、学生の頃、「授業中、先生の話のどこが重要なのか分からない」という悩みを抱えていたのを思い出しました。隣の席で勉強ができる子が“パシャふり授業”でスマートフォンを構えていたら、「ここが重要なのかな!」と一緒になって写真を撮ったでしょう。
撮るという行為を自分ですることで、授業のどの話の時に撮ったのかが記憶にしっかりと残り、復習の役に立つ。“パシャふり授業”が画期的な学習方法であるということがよく分かりました。
もちろんスマートフォンを使う以上、TPOは大事です。“パシャふり授業”がどの授業にも応用できるかと聞かれれば、そうではありません。
森本先生は、講義よりはむしろ、野外学習など、もっと動きのある授業の中でこの学習方法を活用してほしいと話します。
将来の先生たちに「こんな学習方法もあるぞ」とさまざまな方法を伝えていきたいという森本先生の熱意が強く伝わってくる取材でした。
打てば響く*たたけば鳴る*当たれば砕く*思う念力、岩をも徹す!……をモットーにフリーランスライター&アクター&アルバイター=“フリーター”をしております。ブログではアルバイト先の漫画喫茶やライター取材の模様をつづってます。
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