思い込みを捨てよ!! 非ITでも成果は出せる――「働き方改革」の実践者が語る大切なポイントVMware Conference 2017 Summer(2/2 ページ)

» 2017年07月19日 08時00分 公開
[田中宏昌ITmedia]
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20日間の“有休義務”を社員に課した

photo ヴイエムウェア 執行役員 ゼネラルビジネス営業本部 本部長 石井晃一氏

 モデレーターとして、ヴイエムウェア 執行役員 ゼネラルビジネス営業本部 本部長 石井晃一氏が加わり、ディスカッションが行われた。

 SCSKの小林氏は「働き方改革の端緒は経営トップが働きかけたことにある。これまでの付加価値をお客さまに提供し続けることができるのか、という強い疑問があり、社内では抵抗もあったが乗り切った」と話すと、サイボウズの中根氏も「きっかけは高い離職率だったが、当時は100人ちょっとしか従業員がおらず、長く働いてもらう土壌を作らないといけないと経営層が判断してスローガン(経営理念)の見直しを行った」と続けた。

 興味深かったのは、小林氏が従業員の権利と義務について語った次の発言だ。「有給休暇は従業員の権利だが、20日会社を休むのは義務だという意識付けを社内にしてきた。それを実現して、仕事で成果を出すことが社員の証という風潮もある。どうアウトプットを出していくのかを社員が考え、結果に対するコミットが強まった」(小林氏)

photo セッションでは、ディスカッションも行われた

 働き方改革を推進している中で、苦労した点は何だろうか。

 小林氏は「取り組み当初は、残業を減らして有休を取ろうとやってきたが、特に中間管理職の層が不満を持ち、人事に注文を付けてきた。そこで、メンバーの心をどうやって変えていくか、理解を得ていくのかを考えるのが大事と学んだ。一方で、短時間でいかに成果を出すのかという視点では、人材育成について悩んでいる」と吐露した。

 中根氏も「本当に苦労ばっかりだった。例えば、働く時間と場所をそれぞれ3種類に分類して、9タイプの働き方を選択肢として用意したが、素直にメンバーが選べるかといったら、実は選べないという現実があった。本当はどうしたいのかを、把握するのに時間がかかった。会社のメッセージが、なかなか社員まで伝わらないのが悩みだ。今では、『そもそも700人近い全社員を、なぜ9タイプに分類するのだ』という疑問が出てきており、それに伴う給与体系についても絶賛考え中だ」と苦笑交じりに語る。

思い込みを捨てて、小さな積み重ねから始めよう

 世間では、働き方改革でITの活用が叫ばれているが、実際のところはどうなのだろう。

 中根氏は「今は売り手市場で人材がなかなか集まらず、人材不足になっている。人事や経理、総務はルーチンワークが多いので、極力ITにがんばってもらいたい。IT部門は本当に強力なパートナーであり、働き方改革では一番大事なパートナーと思っている」と発言。

 逆に小林氏は「当社の場合、働き方改革の成果は非ITが8割くらい出している印象だ。メリハリを効かせて働いている社員を評価しており、かなりの部分が非ITでいけるのではないかと個人的には思っている。とはいえ、残り2割はITの力が必要なのはいうまでもない。業務の質を高めるのにITは不可欠であり、人事、IT、経営が一体となった組織が強いと思う」と主張する。

 これから「働き方改革」を実行する企業に対して、中根氏は「一言でお伝えするならば、“思い込みを捨てよ”に尽きる。自分の中で勝手に作っている思い込みが必ずあり、それに悩みながら殻を破るのが大事だが、1人だけでは解決しない。経営が風土、人事が制度、そしてIT部門が後押しする仕組みができると強い」とし、小林氏は「わたし自身の例で言うと、業務改善や残業時間を減らすなどで総労働時間の10%を減らしてきた。1時間に換算すると6分の削減であり、その積み重ねが働き方改革に結びつく。みなさんの課題に即した対応をすると成果が出せると思っている。また、多彩な施策をするにあたり、経営トップからは“心に訴えかけるように”と強く言われている」とエールを送った。

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