チームの力で“攻めの情シスへの壁”を崩していく 旭硝子のPoC部隊奮闘記(後編)【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(2/2 ページ)

» 2017年07月20日 07時00分 公開
[やつづかえりITmedia]
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講師もタジタジの質問が飛ぶように

Photo サーバーワークス クラウドインテグレーション部 技術1課の千葉哲也課長

 4月からトレーニングを続けてきたサーバーワークスの講師2人は、メンバー4人のやる気と成長に驚いている。

 「1週間に1日くらいしか時間を取れないと聞いていたので、最初は正直難しいな、と感じていたんです。プログラマーって、仕事の時間であろうがなかろうが、頭が冴えているときならいつでも書きたくなっちゃうみたいな、趣味に近いようなところがあるじゃないですか。

 今回、職業プログラマーではなく、そういうプログラマーを育てることを目指して、良いコードを書くにはどうするかを常に考えることだとか、そのためには時間がなくても本を読むということだとか、そういう心構えもお話しました。その時点で結構引かれちゃうかもしれない、それならそれで、向いていないということで仕方ないと思っていたんですが、全くそんなことなくて、皆さんが予想以上にガツガツと来られるので驚きましたね」(千葉氏)

 今回の参加メンバーは自ら手を挙げ、選抜されたメンバーだと知って「なるほど」と納得したという千葉氏。全員が非常に前向きに、真剣に取り組んでいるため、回を追うごとに質問のレベルが上がっていき、今ではそれに応えるのもひと苦労だそうだ。

 「毎週金曜日に座学やハンズオンのトレーニングを実施し、翌月曜日に振り返りのための課題を出しているんです。初めの頃はまだ、“何を分かっていないのかすら分かっていない”ような漠然とした質問やコメントが多かったのですが、最近は僕が教えていないところまで調べた上での“突っ込んだ質問”が来るようになりました。僕も調べて回答するのが大変なくらいで、最近では、どんなすごい質問がくるのかとちょっとビクビクしています(笑)」(山中氏)

Photo サーバーワークス クラウドインテグレーション部 技術1課の山中大志氏

“助け合える関係”がスキル向上のエンジンに

Photo

 今回の試みがうまくいっているもう1つの要因として、久保田氏はチームワークの良さも挙げている。

 「新しいことを学ぶのに、個々人がそれぞれで黙々とやるという方法もあると思います。でも今回は、みんなで同じステップを踏んで進んでいます。そんな中で分からないことを分からないと言うのって抵抗があるものですが、僕らの間では心理的なハードルが徐々になくなってきているという感覚があって、それが良い結果につながっていると思うんです。

 最近では、誰かが質問したときに千葉さんや山中さんに教えてもらうだけでなく、メンバーの中から『それってこうなんじゃない?』という発言が出てくるようになりました。そういうのを見ていて、“1人のスキルでは限界があることも、チームであれば技術的なハードルとか、心理的な壁みたいなものとかを壊せるんじゃないか”という気がしてきました」(久保田氏)

 今回のメンバー4人は、本業では担当領域が異なり、仕事上の接点はほとんどない。浅沼氏は、意識的に仕事のしがらみがない多様性のあるチーム編成をしたというから、それが功を奏したのかもしれない。

 このプロジェクトで力を付けたメンバーたちが、本当に“攻めのIT”で社内に貢献する人材になっていくためには、何が必要だろうか。

 千葉氏は「そうなりたいという気持ちがあれば、技術はいくらでも吸収できる」としながらも、今回の取り組みを通じて「会社として、その気持ちを後押しする姿勢」が非常に重要だと感じたという。

 久保田氏も、チームのモチベーションが高いとはいえ、これを維持していくためには、この取り組みを続けるとともに、さらに広げていくための“組織としてのバックアップ”が必要だと話す。

 「アルバイト感覚じゃなくなってきて、もっと取り組みたいと思い始めたメンバーもいます。そういう気持ちを組織にどう適合させていくかというのも、今後の課題かもしれません」

 浅沼氏は、軌道にのってきた今回の取り組みをさらに拡大し、継続していきたいと話す。2年後の組織の姿はまだ想像もつかないというが、きっと大きな変化が起こっているはずだ。

(聞き手:後藤祥子、構成:やつづかえり)

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