創業63年、箱根の老舗ホテルが人工知能を導入した理由【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(3/4 ページ)

» 2017年08月07日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

宿泊客にAIが情報を提供する

 今後はAIが学習したデータを宿泊客に対して提供することを考えているという。宿泊客が“今”知りたい情報をWebコンシェルジュのような形で表示するのだ。予約前や予約後に寄せられる質問から、宿泊中に出てきそうな質問を推測し、各部屋のテレビに表示するソリューションを開発しているところだという。

 「疑問点も時間によって変わると思うんです。チェックインしたときに知りたいこと、食事前、食事後、寝る前、など。例えば帰るときだったら次に行く観光スポットの情報とか。そういう疑問を時間帯別にカテゴリ化すれば、より精度の高いAIが作れるはずです。

 また、うまく情報を与えることで、ピークマネジメントのようなものができればと思っています。お風呂やレストラン、おみやげなど、どうしても混雑する時間ができてしまいがちですが、平準化することで私たちにとっても、お客さまにとってもメリットが出てくる。『今空いてます』といった押し付けではなく、情報提供の頻度などで変えられないかと考えているところです」(原さん)

photo ホテルおかだの「よくある質問」ページ。こうした情報は宿泊客にも有用なものだという

エンジニア時代よりも技術を学んでいる

 最新のITトレンドに合わせ、さまざまなツールを導入している原さんだが、今でもITの勉強は欠かしていないどころか、エンジニア時代より、勉強する意欲は高まっているそうだ。「Japan IT Week」や「AWS Summit」など、展示会やイベントにも足しげく通っているという。

 「エンジニアをやっていた当時よりも、自分で考えて自分で作れるから、今は本当に面白いです。技術の進歩も早いですし。昔の経験が生きているわけではないですが、それこそAWSが流行っていると思ったら、自分で契約して使ってみて、新しいAPIがないかって探したりして。

 昔は新しい技術が好きだったんですが、技術そのものを追求するイメージでした。今はその技術をどう仕事に生かすかを考えるのが楽しい。そこから動くまでのスピードも今の方が圧倒的に早いです。だから、情報を取りにいく欲求も昔より高くなっている気がします。そうした方が、経営に役立つと自分の中で確信しているので」(原さん)

 またリクルートやじゃらん、楽天など旅行業界の技術者と情報交換をすることで、最新の情報を得ることもあると原さん。「半分趣味みたいなところもあると思いますけどね」と笑う。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ