敵は社内にあり! 抵抗勢力との向き合い方 「頑固な抵抗に対処する」榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』(1/3 ページ)

目立たぬ時に解決できなかった抵抗勢力が「頑固な抵抗」にまで育ってしまったら……。理性的な判断力でを取り戻し、客観的な判断をしてもらうための対応策を紹介します。

» 2017年08月11日 10時00分 公開
[榊巻亮ITmedia]

この記事は榊巻亮氏のブログ「榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』」より転載、編集しています。


 これまで「隠れた抵抗」と「表に出た抵抗」への対処の仕方を解説してきた。

 2回めで解説した「抵抗の強さの4段階」でいうと、主にレベル1〜2にあたるものへの対処が中心だった。基本的なことだが、これらをしっかりやるだけで相当、抵抗を解消できる。

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 実は、抵抗レベル2までに抑えるのが、抵抗と向き合うコツだ。レベル3以上になると、途端に対応が難しくなるからだ。隠れた抵抗を拾い上げ、表に出た抵抗に丁寧に対応すれば、多くはレベル2までに抑えられるだろう。

 とはいえ、やはりレベル3〜4の抵抗に直面することもある。そこで、「抵抗勢力との向き合い方」を解説する連載の5回目では、レベル3〜4の「頑固な抵抗」への対応策を見ていこう。

レベル3の「何が何でも反対」に対応する

 レベル3の「何が何でも反対」というレベルになると、合理性を欠いた反応が見られるようになる。

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 例えば、会社全体で効果が高い施策について、「大変になる部署があるから、やりたくない」と全体感を欠いた主張をする人がいる。めったに起こらないリスクを挙げて、「リスクが大きいから、実行すべきでない」と強硬に主張する人もいる。もっと強い拒絶反応から、へりくつとしかいいようのない理由で変革に反対する人もいるだろう。

 私の経験では、施策の是非を検討する場面で、「理由は説明できないが、とにかく嫌なんだ」と面と向かって言われたこともあるし、「全体としてはいい変革だと思いますが、この部分はやるべきではないと思います」と、その方の部署が担当するところだけ、変革を拒否されたこともある。

 「今の業務に思い入れがある」「現在のシステムを全部設計してきたプライドがある」「改革を推進する人が嫌い」など、いろいろな事情によって、「とにかく反対」という状態になっているのだ。

 これらに丁寧に反論していくのは非常に骨が折れるが、変革プロジェクトを進める側としては、我慢のしどころだ。理性的な判断力を取り戻し、さまざまなしがらみを超えた客観的な判断をしてもらうために、私がよく使う7つの工夫を紹介しよう。

1. 自分のことではなく、「人ごと」としても考えてもらう

 人はとにかく、変化や不確実なことを嫌う。心理学や行動経済学の実験では、「将来手に入ると期待されるものよりも、現在持っているものを大事にし過ぎてしまう」という人間の不合理な性質は、よく確認されるという。

 人間は、そもそも合理的に判断できない生き物なのだ。だから、現在の業務やシステムに問題があったとしても、実際以上に価値があるように感じてしまう。そして変化への一歩が踏み出せなくなる。

 そこで、今の立場から離れて考えてもらうために、こんな問いかけをしてみると良い。

 「今、この業界に新規参入する会社が、ゼロからこの仕事を設計するとして、やっぱり同じようなやり方をしますかね?」

 これはなかなか効く。自社のしがらみをいったん取っ払って考えることができるので、現状維持から抜け出すきっかけが作れる。実際、「いやー、だったらこんな業務にはしないよ」と返ってくることも多い。

 そうなればすかさず、「なるほど、どうしてでしょうか?」と掘り下げていけばいい。その後、たいていは「でも、ウチの現状では無理だな」といわれるが、話のきっかけとしては良い。

 他にも「ライバルのA社さんだったら、同じようにやりますかね?」「仮に組織の制約がなかったとしたら………」「仮にあなたが社長だったら……」など、多少強引にでも仮定して、考えてもらうよう促すことが有効だ。

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