敵は社内にあり! 抵抗勢力との向き合い方 「頑固な抵抗に対処する」榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』(2/3 ページ)

» 2017年08月11日 10時00分 公開
[榊巻亮ITmedia]

2. 「現状の悪さ加減」ではなく、「将来どうすべきか」に話を向ける

 「現状に課題がある」といわれると、すごく拒否反応を示す人がいる。長年、第一線で頑張ってきた人ほど、その傾向があるように思う。今までやってきた努力が否定されるような気がするのだから、当然といえば当然である。

 私は、現状調査や課題分析のとき、とても気をつかう。「今の状況が問題であるか否か」で時間を使うより、「将来に向けて改善の余地があるのかどうか」を語る。相手が現状にこだわりを持っている人なら特に、だ。

 これまで積み上げてきたものが問題か、そうでないのかの押し問答をするのは、時間の無駄で意味がない。現状がどんな経緯で作られたのか、いかに妥当な判断だったのかをひたすらに説明されるのがオチだ。

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 過去の話は極力少なめに。「今、発生している問題は、このプロジェクトをキッカケに解決しなくて良いのか?」「このまま放っておいていいのか? 改善に向けた検討をすべきなのか?」を問うのだ。

 一方で、強烈な自己反省がプロジェクトの原動力になるケースもある。本来はこちらの方が健全だが、生え抜きの社員だったり、現場業務への思い入れが強い人だったりするほど、受け入れるのが難しいのも事実である。状況を見ながら使い分けたい。

3. 数字で語る

 感情論から脱出し、客観性を取り戻すには、実は「数字で語る」のが一番手っ取り早い。なぜなら、数字には感情が乗らないからだ。

 説明に使えそうなものについて、とにかく徹底的に数値化しておくと、後でも何かと使えて便利だ。

4. 不満を“見える化”する

 以前、かたくなに批判をする人が多かったプロジェクトで、「不満や懸念点を洗い出す」ことだけを目的に、2時間も会議を開いたことがあった。不満や不安は洗い出して、誰の目にも見えるようにしておかないと、どんどん膨張していく。

 東日本大震災で中断していたプロジェクトが再度動き出したときのこと。施策は中断前にだいたい固めていたのだが、1年近く中断していたため、検討メンバーの大半が入れ替わってしまった。そのせいもあり、固まりかけていた施策プランに対して、懸念や不満の声が続出した。

 このままでは一丸となって施策を実行できない。そのため、不満や懸念を自由にぶちまけてもらう会議を開いた。それぞれの立場から40ほどのリスクが出され、整理して優先順位を付けた結果、「今後、対応していくべきリスク20」が会議の成果として残った。これが、この時点でのリスクの全てということになる。

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 こうした“見える化”は、発想の転換を促す。「アレもコレも問題だ! 絶対成功しない」という後ろ向きなマインドから、「この20のリスクさえ解消できれば、いい施策になる」という前向きなマインドに変化する。しかも、どこか“お客さま”モードだった新メンバーも、加入前に検討していた施策について深く議論することで、腹に落ちたようだった。

 もちろんマインドの変化だけでなく、今後起きるであろう問題に先んじて手を打つこともできた。挙がったリスクに対して1つずつ真摯(しんし)に対策を講じ、リスクを最小化していった。

 この会議を開かずに、不安や懸念が新メンバーの頭の中だけにしまわれていたままだったら、どれだけ効果が期待できる施策であっても、絶対に支持されなかっただろう。

5. 将来を見据えて念を押す

 この課題を「5年放っておくとどうなるのか?」を示す方法だ。「5年後にはこんな状態になるが、それでも今改革せずに先延ばすのか?」と問いかける。何かを変えるリスクは語られても、何もしないリスクはなかなか語られないものだ。

6. 反対意見を撤回しやすくする

 一度「反対」と宣言してしまうと、多くの人が引くに引けない状況に追い込まれてしまう。自分の意見を正当化するために、反対につながる情報だけを集めたり、反対につながる情報を重要視したりしてしまう。宣言が強ければ強いほど、大勢の前で「反対である」と宣言すればするほど、その傾向は強くなり、かたくなな抵抗勢力になってしまう。

 これに対応するには、宣言を撤回しやすい雰囲気を作るしかない。

 例えば、「あのときと前提が変わりましたからね。今の状態だと賛成してもらえるんじゃないかと、ちょっと期待しているのですが」「あのときは、この情報をちゃんとお伝えできていなかったんですね。すみませんでした」などと、一言添える。

 議論に勝って相手をやり込めるのが目的ではないのだから、間違っても「おや? 反対って言われてましたよね? ご意見を変えるってことでいいですか?」なんて言わないようにしたい。

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