敵は社内にあり! 抵抗勢力との向き合い方 「チーム編成の極意」榊巻亮の『ブレイクスルー備忘録』(2/2 ページ)

» 2017年08月16日 07時00分 公開
[榊巻亮ITmedia]
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どうやってメンバーを集めるか?

 次は、「チームメンバーの集め方」を見てみよう。上記で解説したようなメンバーを、どう選ぶか? これには大きく3つの方法がある。

1. 組織図から選ぶ

 「経理部門から1人は出してもらう必要があるので……」などと、組織図をにらみながら人集めをするのはよくあるパターンだが、実はあまりよい方法とはいえない。

 部署にこだわり過ぎると、その部署の利益代表的な位置付けになってしまうことが多いからだ。「経理としては、この案だけには賛成できません!」といった感じだ。立ち上げ期に参加してもらう同志として必要なのは、経理部としての意見ではなく、全社最適の立場で一緒に考えてくれるような人だ。

 そして、プロジェクトワークには、向き不向きがある。「適切な部署から来た、プロジェクトワークに不向きな人」と「プロジェクトに直接関係がない部署出身だが、プロジェクトワークに向いた人」とでは、半年、1年単位で考えると、圧倒的に後者に参加してもらった方がよい。とはいえ、経理のプロジェクトで経理部を外すわけにはいかない。

 そう考えていくと、プロジェクトメンバーを集める一番いい方法は、もともと問題意識を持って語り合っていた同志を必要な部門から集めることだろう。これができれば、主体性のないメンバーが集ってくることを避けられる。

 次のイラストの「オズの魔法使い型」がこの方法によるチーム形成法だ。

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2. “一本釣り”で選ぶ

 もう1つ、“一本釣り”的な方法もある。変革について一緒に語り合いたい人、これから伸びそうな人、プロジェクトワークに向いた人、一癖ある人など、見どころのある人材を会社全体から探し出し、1人ずつ口説いていく方法だ。上記イラストの「桃太郎型」にあたる。

 もちろんそういった優秀な人材は、忙しい。どんな部署にいたとしても、大事な仕事を任されているだろう。最初は兼任で意見だけもらうことにしたり、役員を通じてその人の上司に話をつけたりする必要もあるだろう。

 先に紹介した例のように、成功するプロジェクトのリーダーは、「これは」と思った人をプロジェクトに引きこむために、妥協せずあらゆる手段を使っているものだ。

3. 公募で選ぶ

 「やる気がありそうな人を公募すればいいではないか」という考え方もある。確かにそうだ。ところが、これには大きな落とし穴がある。

 「20人のメンバーを公募して業務革新活動を始めたのですが、成果を出す前にダレてきてしまいました」。クライアントからこんな相談をもらったことがある。公募すると、たいてい途中脱落者が出て、チームがゆるんでしまう。

 これを防ぐには、脱落者が出ることを覚悟したうえで、それでも前に進むことをあらかじめ宣言するのがいい。

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 確かにプロジェクトではやる気が大事なのだが、やる気の持続性というのは、人によってかなり差があるものだ。熱しやすく冷めやすい人もいれば、逆の人もいる。

 公募制で、熱しやすく冷めやすい人を排除するのは難しい。だが、そういう人は最初に盛り上げてくれる、貴重なメンバーでもある。ただ、冷めてしまった人が早々に脱落していくと、残った人たちがつられて士気を下げてしまう。かといって、無理やり引き止めるのは不毛だ。やる気や仕事の優先順位はごく個人的なものなのだから、他人からはコントロールしにくいものだからだ。

 たとえ脱落者が出ても、それは現在歩んでいる道の困難さを確認し合うだけのこと、という認識があらかじめできていれば、残った人たちのモチベーションは下がらない。

まとめ

 チームのつくり方について解説してきたが、実際は何かと制約が多いものだ。そもそも「このメンバーでやれ」と所与の条件として与えられるケースもある。この場合は、チームビルディングを入念にしないと先行き成り立たないのだが、これについては次回解説する。

 少しでもチームメンバーを選ぶ余地があるなら、今回のお伝えしたことに注意して、チームづくりを進めてほしい。

著者プロフィール:榊巻亮

book 『抵抗勢力との向き合い方』

コンサルティング会社、ケンブリッジのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。

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