クラウドシフトで“脱・売り切りモデル”の組織へ 大型組織変更に見るMSの覚悟(前編)Microsoft Focus(2/2 ページ)

» 2017年08月19日 09時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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多角的できめ細かな新体制でエンタープライズビジネスを加速

 クラウド時代に向けた新たな組織体制として象徴的なのが、エンタープライズ部門の6つの組織だ。

 そのうち、先に触れたグローバル企業を担当するグローバル事業本部と、ユーザー企業を担当し最も多くの顧客を抱えるエンタープライズ事業本部、公共分野や教育分野を担当するパブリックセクター事業本部の3つは、法人を直接担当する営業組織で、特に金融、流通、製造、政府・自治体、教育、ヘルスケアの6つのインダストリーを重点業種に位置付ける。もちろん、これは直販を強化するものではなく、パートナーを通じたビジネスが基本路線であることに変わりはない。エンタープライズ部門の各組織とパートナーとの協業によって、これらの重点業種を攻略することになる。

 そして、200人規模で新設したクラウド&ソリューション事業本部、100人規模となるデジタルトランスフォーメーション事業本部は、技術的な切り口から、新たなクラウド案件を獲得する役割を担う。

 日本マイクロソフトでは、デジタルトランスフォーメーションの実現に向けて、「社員にパワーを」「お客さまとつながる」「業務を最適化」「製品の変革」という4つの枠組みを提示してきたが、2017年7月以降、これに加えて「モダンワークプレース」「ビジネスアプリケーション」「アプリケーション&インフラストラクチャ」「データ&AI」という4つのソリューション枠を新たに追加した。

 クラウド&ソリューション事業本部とデジタルトランスフォーメーション事業本部では、この4つのソリューション枠から、「Microsoft Azure」をベースにした新規案件を獲得する戦略的組織であり、評価の指標となるのは「コンサンプション(消費)」。まさに「クラウド時代の組織」を象徴するものとなる。

 エンタープライズサービス事業本部は、これまでと同様に、技術面からエンタープライズユーザーをサポートする組織になる。

Photo 日本マイクロソフトの新組織体制

 日本マイクロソフトの平野社長は、「Azureをプラットフォームとした業務特化ソリューションをこれまで以上に出していきたいと考えている。今回の新組織では、業種向け営業部隊を再編して、スペシャリストによる業種アプローチを徹底する」と意気込む。

 6つの重点業種のうち、製造業では、IoTを活用した工場現場の革新のほか、コネクティッドカーやスマートコンストラクションなどにAzureを活用。教育分野では、日本の大学の競争力向上や、グローバル人材の育成にAzureを活用していくことを示した。また、金融分野においても、国際競争力の向上に加えて、Fintechによる新規ビジネスの創出にAzureの活用を提案していくことを提示。ここに6つのエンタープライズ組織が連携しながら、営業活動を推進していくことになる。

 特に、最大顧客数を抱えるエンタープライズ事業本部は、日本マイクロソフトにとって、メインストリームともいえる領域であり、ここには依然として数多くのオンプレミスユーザーが存在する。これらの顧客をいかにクラウドへと移行させるかが、新たなエンタープライズ事業本部に課せられたテーマとなっている。

 ここでは、「日本マイクロソフトが自らデジタルトランスフォーメーションを実践してきたノウハウを、日本のエンタープライズユーザーに対して提案していくことになる」(平野社長)との姿勢も示している。

Photo 組織体制の再編とビジョン

 6つの組織で構成されるエンタープライズ部門は、クラウドをビジネスの主軸にした営業組織となり、その評価指標も変わっている。

 後編では、パートナー事業本部、インサイドセールス事業本部、コンシューマー&デバイス事業本部のビジョンにフォーカスする。

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