クラウドシフトで“脱・売り切りモデル”の組織へ 大型組織変更に見るMSの覚悟(後編)Microsoft Focus(2/2 ページ)

» 2017年08月26日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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 もう1つの新設組織であるコンシューマー&デバイス事業本部は、米本社のコンシューマー&デバイスセールス部門と連動した組織で、大手ディストリビュータや量販店をはじめとするリテールパートナー向けの支援組織であるとともに、日本マイクロソフトのオンラインストアと、デバイスパートナーへのOEMも担当する。

 組織名の最初にコンシューマーという文字が入っているだけに、コンシューマー向け組織とのイメージが強いが、デバイスの領域においては、担当領域はコンシューマー分野だけにとどまらない。

 デバイスパートナーとのOEM施策を担当するチームは、コンシューマー向けPCやタブレットなどを開発、販売するデバイスメーカーにとどまらず、コマーシャル向けPCやタブレットを開発、販売するデバイスメーカーも担当。さらに、サーバやIoTデバイス、ミックスドリアリティー製品、スマートフォンといった製品を開発、販売するデバイスメーカーもサポートする。

 折しも8月23日に、レノボ・ジャパンがクラウドソリューションプロバイダー(CSP)プログラムに参加することを発表。デバイスメーカーと日本マイクロソフトの関係が、単にOEMという関係だけではなく、“デバイスとともにMicrosoftのクラウドサービスを共同で販売する”という役割も担うことになる。これも、クラウド時代に向けたデバイスメーカーとの新たな関係を象徴するものといっていいだろう。

役員も刷新、新たなアプローチで挑む成長戦略

 今回の新たな組織体制では、担当役員に大きな変更があったことも特徴だ。

 例えば、コンシューマー&デバイスを担当していた高橋美波氏が、パートナー事業本部を担当。パートナーを担当していたゼネラルビジネスを統括していた高橋明宏氏が、新設のインサイドセールス事業本部を統括。また、コンシューマー&デバイス事業本部には、約30年間に渡って、東芝でPC事業に関わってきた檜山太郎氏が入社し、この組織を担当する。かつての高橋美波氏がソニー出身であったことから、コンシューマー&デバイス事業本部のトップは、ソニー出身者から東芝出身者へのスイッチということもできる。

 そして、ISVをはじめとする開発者や、社内エバンジェリストなどを担当していたデベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部を統括していた伊藤かつら氏は、デジタルトランスフォーメーション事業本部を担当。デジタルトランスフォーメーションの観点から企業をサポートする役割に変わった。

 ちなみに、エバンジェリストたちは、コマーシャルソフトウェアエンジニアリング本部に編入することになったが、業務執行役員である西脇資哲氏だけはコーポレート戦略本部に所属。西脇氏は、エバンジェリストとしての位置付けに差があるようだ。

 もう1つ、今回の新たな組織体制で触れておきたいことがある。それは、組織名を統一したことだ。

 これまでの組織名は、ゼネラルビジネス部門、エンタープライズサービス本部、パブリックセクター統括本部などと、それぞれに組織の位置付けが分からなくなるほど、まとまりのない名称であった。しかし、今回の新組織では、基本的には、顧客に接する全ての組織を「事業本部」という名称に統一した。

 マーケティング組織を統括するマーケティング&オペレーションズは「事業本部」という名称が付いていないが、ここには、Windows&デバイスビジネス本部、クラウド&エンタープライズビジネス本部、Officeマーケティングビジネス本部といった「本部」の名称を使った組織があり、事業本部の下に本部ができるという複雑さを回避するために「事業本部」という名称を使わなかったようだ。ちなみに、これらのマーケティングチームの各本部には、新たに「ビジネス」という名称が加えられている。

 また、事業本部を統括する事業本部長を、全て執行役員常務とした点も今回の組織変更における特徴の1つだ。それぞれの組織が執行役員常務という同格の役員が統括し、横の連携を行いやすい体制を作ったというわけだ。

 ちなみに、エンタープライズ事業本部長は、平野社長が兼務する形で就任している。最も顧客数が多いエンタープライズ事業本部を平野社長が担当することで、日本における事業にドライブをかけるとの見方もできるようだが、どちらかというと暫定的な色合いが濃いともいえなくもない。この組織には、新たなリーダーが誕生する可能性が高そうだ。

 こうしてみると、今回の大規模な組織変更は、まさにクラウド時代に向けた新体制であることが分かるだろう。しかし、細かい部分では、担当領域に重複してみえる部分もあり、新たなパートナー施策の推進におけるリソース配分の見直しが必要なところも出てくることも予想される。

 日本マイクロソフトは、今回の大規模再編で誕生した組織をベースに、今後も柔軟に組織を変更しながら、クラウドをベースにした成長戦略を加速することになりそうだ。

Photo 2018年度の組織体制
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