このように、GoogleもAppleも、新しいHTML(後のHTML5)に積極的でしたが、Microsoftは少し違っていたようです。
もともとMicrosoftは、ネイティブアプリ指向ですし、「Windows 95」以降、ほぼPC市場を独占したため、独自技術でユーザーを囲い込むというのが戦略としては正しいからです。
2001年に発表された「Windows XP」には、「Internet Explorer 6」(IE 6)が搭載されていましたが、「IE 7」の発表は2006年と、実に5年間もメジャーバージョンアップされませんでした。Microsoftにとって、Webブラウザはそれほど重要ではなかったのかもしれません。むしろ、“自社の独占状態を脅かしかねないクラウドへの移行を積極的に助ける考えはなかった”としても不思議ではありません。
IE 7にしても、IE 6よりも進化したとはいえ、独自の拡張機能が残っていたり、JavaScriptのチューニングが不十分で実行速度が遅かったりと中途半端なものでした。
Googleが2008年に「Chrome」をリリースしたのは、MicrosoftがIEの強化に消極的なことに業を煮やしたためともいわれています。Googleはさらに、IEをHTML5対応にするためのプラグインまで出したことがあります。「動かないMicrosoft、どうしても動かそうとするGoogle」といった構図が見えて面白いですね。
FlashはiPhoneの大成功が一因で終了に追い込まれましたが、Microsoftもまた、大きな影響を受けました。PCの出荷台数が伸び悩み、スマホへの転換もうまくいかず、クラウドへの転向を迫られたのです。
Microsoftは戦略を大きく転換し、最近のMicrosoftのオープン化戦略やクラウド移行は奏功しています。「Windows 10」ではIEを捨て、「Edge」というHTML5対応の新設計のWebブラウザを標準としました。
その一方で、PWAへの消極的な態度もそうですが、AppleはHTML5から距離を置き始めているように見えます。HTML5の機能やパフォーマンスがまだ不十分なこともあるでしょうが、App Storeが収益の柱として育ってきたこともあるのではないでしょうか。以前のMicrosoftと同様、高いシェアを取ったからには、独自技術で囲い込む方が戦略としては正しいのです。
もともとAppleは、Microsoft以上に自社技術へのこだわりが強い企業です。iPhoneの成功とクラウドへの普及は、MicrosoftとAppleの立場を逆転させただけ、ということなのかもしれません。
成長の鈍化が指摘されるAppleですが、今後どのように戦略を転換していくのかが注目されます。
訂正:2017年9月19日8時30分 初出時に誤字脱字がありましたので修正しました。「エンジ無題の予定ニア」→「エンジニア」「HTM」→「HTML」
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