Lenovoエンタープライズ事業トップが語る「競合追撃の決め手」Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2017年09月11日 12時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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競合追撃の決め手は「顧客からの高い信頼と満足度」

 この新戦略を打ち出した背景には、図1の左側に示すように、2020年には「ニューIT」と「ハイパースケール」といった分野が市場の多くを占めるようになるとの予測がある。フォーカスした4分野は、これら成長市場に向けたものだ。

Photo 図1 Lenovoにおける市場の捉え方と重点戦略(出典:レノボ・エンタープライズ・ソリューションズが7月12日に開いた事業戦略会見より)

 ちなみに、ハイパースケールはパブリッククラウドサービス向け、HPCは高速計算処理向けのサーバを指す。また、SDIは「ハイパーコンバージドシステム(HCS)」や「ソフトウェアデファインドストレージ(SDS)」、そしてトラディショナルITではx86サーバ単体でなく、例えば「SAP HANA」と組み合わせたプラットフォームとして提供するといった形だ。それぞれの特長については、図1の右側を参照していただきたい。

 こうした注力事業を挙げたスコーゲン氏に、「それらの分野は、Lenovoのエンタープライズ事業にとって先行する競合のDell EMCやHPEも注力しているが、どう差別化を図って追撃しようと考えているのか」と、単刀直入に聞いてみた。すると同氏は「3つのイノベーションがカギになる」として、次のように説明した。

 「1つ目は製品のイノベーション。x86サーバを中心に今後もこれまで以上に品質の向上に注力する。この部分は小さなことの積み重ねが大きな差別化要因になると確信している。2つ目はパートナーシップによるイノベーション。Lenovoは強力なx86サーバを提供しているが、注力する4つの分野に向けてさまざまなソリューションを提供していくために、それぞれの分野に得意なパートナーと協業を進めている。そして3つ目はアジャイルイノベーション。正しい方向にどこよりも俊敏にアクションを起こしていくという意味だ」

 ちなみに、2つ目のそれぞれの分野でのパートナーシップを示したのが図2である。スコーゲン氏はパートナーシップについて、「どの協業も顧客ニーズに基づいたものだ。競合にはないユニークな協業も進めている。これだけ柔軟にパートナーシップを広げているのはLenovoだけだ」と強調した。

Photo 図2 Lenovoのエンタープライズ事業の注力分野とパートナーシップ(出典:レノボ・エンタープライズ・ソリューションズが7月12日に開いた事業戦略会見より)

 そのうえで、スコーゲン氏は競合を追撃する決め手として「顧客からの高い信頼と満足度」を挙げた。とくに顧客満足度については、x86サーバにおいてトップとの最新の外部調査もあり、同氏は「データセンター事業部門の報酬評価も顧客満足度への貢献度に基づいて行うようにした」とのように、最も重視している姿勢を示した。

 インタビューの最後に、スコーゲン氏自身がIntelからLenovoへ移った決め手になった点を聞いてみた。すると同氏はエピソードを交えてこう答えた。

 「Lenovoのエンタープライズ事業の中核であるx86サーバは、私がIntel時代に設計に携わったワークステーションが原形だ。その後、幾度ものイノベーションを目の当たりにしてきて、今度はLenovoというPCで数々のイノベーションを起こしてきた企業で、x86サーバを中核としたソリューションでイノベーションを提供する役目を担うことになった。そのイノベーションを手掛けたいと思ったのが決め手だ。非常に楽しみにしているのは、これからIoT(Internet of Things)や人工知能(AI)、第5世代通信方式(5G)といった新しい市場が広がっていくことだ。それらを支えるLenovoの仕事も間違いなく広がっていく。ぜひ期待していただきたい」

 インタビューで印象深かったのは、どんな質問にも笑みを浮かべながら落ち着いて答えていた姿だ。ただ、先行する競合についての質問に対し、即座に「何をもって“先行する”と言っているのか」と切り返してきた。このピリッとした感覚に、筆者はスコーゲン氏の“本気”を見た。

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