2つ目のデータに対する不安感では、「CEOとして、顧客の関心に応える責任感は増大しているか」との質問に対し、「はい」と答えた割合はグローバルのCEOが70%だったのに対し、日本のCEOは92%に上った。
だが一方で、「良質な顧客データの不足が顧客理解の阻害要因となっているか」との質問に「はい」と答えた割合は、グローバルの45%に対して日本が82%に上っている。
また、「自らの判断の基礎としているデータの完全性に懸念を感じているか」との質問に「はい」と答えた割合は、グローバルの56%に対して日本は78%、さらに「データに基づいて重要な経営判断を行うには、データの品質向上のためのかなりの投資が必要か」との質問に「はい」と答えた割合は、グローバルの36%に対して日本は49%と、いずれも日本が高い数値を示している。(図2)
これはすなわち、日本のCEOは顧客を理解することの重要性は認識しているが、その基となる自社の顧客データの品質に不安感を抱いていることを示している。逆に言えば、自社の情報活用に対する自信のなさの表れとも見て取れる。
そして3つ目のCEOの進化では、「リーダーとして直面したことのない多くの重要課題を懸念しているか」との質問に「はい」と答えた割合は、グローバルの37%に対して日本は66%に上った。
その一方で、「新たな外部からの影響や新たなコラボレーションをこれまでになく受け入れる姿勢にあるか」との質問に「はい」と答えた割合は、グローバルの70%に対して日本は95%にも上った。
多くの重要課題を懸念しているだけではCEOは進化しないが、日本では大半がオープンな姿勢を心掛けているところに進化の可能性があるというのが、KPMGの見立てのようだ。
さて、こうした調査結果を踏まえ、会見の質疑応答では「破壊的技術への懸念やデータへの不安感を払拭するために、CEOは何をなすべきか」との質問が飛んだ。それに対して宮原氏が答えた内容が、冒頭で紹介したメッセージである。
さらに同氏は、「CEOも最近ではさまざまなところで、人工知能(AI)やIoT(Internet of things)などのデジタル用語を聞いて知ってはいるが、それをどうビジネスやマネジメントに役立てていくかを考えて積極的かつ効果的に投資し、プロジェクトをどんどん押し進めるくらいのリーダーシップを発揮すべきではないか」とも語った。
また、「CEOがさらに進化していくためにはどうすればよいか」との質問には、「信頼できるブレーンを探すこと。社内にいなければ社外でもよいし、専門分野ごとでもよい。大事なのは、CEOが自社の情報活用に自信を持ち、自らもデジタル化に積極的に乗り出していく姿勢だ」と答えた。
宮原氏の会見でのメッセージは決して目新しいものではないが、今もなお非常に重要な指摘である。
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