“変わらなくてはならない”企業に何を提供できるか MS平野社長が新年度メッセージに込めた思いMicrosoft Focus(2/2 ページ)

» 2017年09月23日 09時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
前のページへ 1|2       

「日本の社会変革に貢献する」に込めた平野社長の思いとは

 Microsoft本社が発信するメッセージとは異なり、日本法人が独自に発信してきたのが、「日本マイクロソフトが目指す企業像」だ。

 もともと樋口泰行氏(現パナソニック代表取締役専務)が日本マイクロソフトの社長に就任した際、「顔の見えるMicrosoftにしたい」という考えのもと、目指す企業像を掲げたのが最初だ。

 樋口氏は、「お客さまに顔が見え、親しまれ、かつ尊敬される企業」「パートナーとの密な協業を推進できる企業」「前向きで生き生きとした人材にあふれ、仕事を通じて自己の成長を実現できる企業」「常に革新的な技術をお届けできる企業」「日本の社会に根ざし、良き企業市民として社会に貢献できる企業」の5つを掲げ、“日本で尊敬されるベストカンパニー”を目指した。

 このメッセージは、樋口氏の社長時代の約7年間、一度も変更されることなく使われてきた。

Photo

 そして2015年7月、社長に就任した平野氏が新たに打ち出したのが、「革新的で親しみやすく、安心でき、喜んで使っていただけるクラウドとデバイスを提供する」という企業像だ。

 とくに、「喜んで」というところに平野社長はこだわったという。それは、2015年7月に発表した際の資料で、「喜んで」という文字を太くハイライトしたことからも見て取れる。平野社長は、「Microsoftに足りなかったところは、『喜んで使ってもらう』という点。いまこそ、喜んで使ってもらうことが大切な要素」と、この言葉を盛り込んだ理由を語っていた。

Photo

 この“目指す企業像”についても、このほど新たなメッセージを打ち出した。それが冒頭に示した「革新的で、安心して使っていただけるインテリジェントテクノロジーを通して、日本の社会変革に貢献する」というものだ。

 平野社長がこだわっていた「喜んで」という言葉をなくし、「クラウドとデバイス」を、「インテリジェントエッジ」に変更。そして、「日本の社会変革に貢献する」という新たな言葉を追加した。

Photo

 なぜ、このメッセージにしたのか。平野社長は、「できれば『喜んで』という言葉は残したかった」としながらも、「新たな目指すべき企業像は、世界観の変化を反映したもの」と位置ける。

 「悩みに悩んだ結果、『喜んで』という言葉をなくすことにした。もちろん、残すことも考えたが、それよりも、『社会変革に貢献する』という言葉を入れたかった。どちらも入れてメッセージを長くしても、かえって伝わりにくくなる。そこで、『喜んで』という言葉を取った」とする。

 では、平野社長がこだわってきた言葉を取ってまで残した「社会変革への貢献」にはどんな思いが込められているのだろうか。

 「お客さまと話せば話すほど、“変わらなくてはならない”という危機感を感じていることが分かる。これは、この2年間の大きな意識変化だともいえる。日本の社会自体が今、大きな変革期にある。デジタルトランスフォーメーションを通じて、日本の社会や企業の変革にどれだけ貢献できるか、そこでどんな成果を上げられるか。日本マイクロソフトはそこにこだわっていきたい」(平野社長)

 「日本の社会変革への貢献」という言葉については、「あまりにも大きな言葉を入れてしまったという思いがある」と笑うが、「こうした心意気を持って、社員が一丸となって取り組んでいくことが大切である。それによって、喜びというものが達成できるのではないかと考えている」とする。

 一方で、「クラウドとデバイス」を「インテリジェントテクノロジー」に置きかえたのは、米本社が、これまでの「モバイルファースト、クラウドファースト」から「インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ」へとメッセージを変えたことにのっとったものだ。

 平野社長は、「日本マイクロソフトは、日本に根ざした企業になるために一歩ずつ歩みを進めてきており、それをさらに推し進めるためには、日本の社会変革への貢献は不可欠。これが、新たな目指すべき企業像となる」と結んだ。

 日本の社会変革への貢献は、日本マイクロソフトにとって、当面のテーマとなりそうだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ