端末追跡に「Wi-Fi as a Service」……ワイヤレスネットワーク最新トレンド2017年 企業向けワイヤレスネットワークトレンド(後編)

ワイヤレスネットワークの進化は、高速化だけではない。今後の技術動向は企業のネットワーク戦略を大きく左右することになる。これから何が登場するのか?

» 2017年10月18日 10時00分 公開
[Rene MillmanComputer Weekly]
Computer Weekly

 前編(Computer Weekly日本語版 10月4日号掲載)では、企業のワイヤレスネットワークを今後担う「802.11ac Wave 2」と「IEEE 802.11ad」について解説した。後編では、今後普及が予想される新たなネットワーク技術を紹介する。

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ワイヤレスIoTのID管理とローミング

 「モノのインターネット」(IoT)の出現により新しいIDプロバイダーが登場する可能性があるため、システムを「エンタープライズ」レベルまで拡張する必要がある。従って、エンタープライズワイヤレスIoTのID管理とローミングが登場することになる。

 「だがIoTの場合、IDプロバイダーにとってのエンタープライズとは、都市、製造業、Wi-Fiサービスプロバイダー、従来の通信事業者になる」と話すのは、Wireless Broadband Allianceでマーケティング担当シニアディレクターを務めるトン・ブランド氏だ。

 同氏によれば、エンタープライズコンテキストで期待されるのは、ブローカーが大規模な導入において重要な役割を果たすこと、それがEAP(PPP Extensible Authentication Protocol:拡張認証プロトコル)情報や事前共有鍵などの認証情報の管理下に置かれることだという。また、こうしたオンボーディングメカニズムにおいてセキュリティが重要な側面として考慮されることも期待される。これらを最も効果的に実現可能にする主要テクノロジーであり、業界プロセスでもあるのが「Hotspot 2.0」だと同氏は話す。

 「結果として認証は、NGH(Next Generation Hotspot:次世代ホットスポット)の主要機能(企業がセンサーの再構成をほぼ全て回避しつつネットワークアクセスの制御を確保するなど)を活用しながら、SSID(Service Set Identifier)には依存せず、シームレスなネットワーク検出に基づいて実行されるようにならなければならない」(ブランド氏)

 また同氏は、数百のIDプロバイダーに拡張することを想定して設計されている従来の通信事業者のローミングを引き合いに出し、ローミングシステムを数万のIDプロバイダーに拡張できるよう強化するチャンスはあると付け加えた。

位置情報と機器の追跡

 マネージドコミュニケーションサービスプロバイダーのMaintelでCTOを務めるルーファス・グリッグ氏によると他にも、端末を追跡して位置を特定するWi-Fi機能の普及が予想されるという。

 「例えば、病院の高価な資産の位置特定から、ショッピングモールの靴屋周辺の足音を追跡することまで、その用途は多岐にわたる。これは、未来型の強力な業種固有の分析システムも実現する」

 企業は今後「Wi-Fi as a Service」を使用することに関心を持つようになると同氏は付け加えた。Wi-Fi as a Serviceでは、コアインテリジェンス、管理、セキュリティポリシーのエンジンが、完全なマネージドサービスとしてクラウドで提供される。

 「Wi-Fi as a Serviceは、大規模なセキュリティサービスの一環として提供されるのが望ましい。そのセキュリティサービスとは、関連付けられたWebフィルタリングや境界セキュリティをサポートしながら、ゲストや社内のインターネットアクセスをオフロードできるものでなくてはならない」(グリッグ氏)

 HPE Arubaで北欧、中東、アフリカ地域担当バイスプレジデントを勤めるモーテン・イルム氏は次のように語る。「屋内位置情報サービスは、エネルギー使用量などのユーティリティー(熱、電気、水)のリモート監視だけでなく、エンタープライズワイヤレスの代表的なケースだ。このサービスによって、重要な資産が場所によって追跡され、近くにある別の端末と通信することが可能になる、スマートな職場を構築できるようになる」

2018年以降

 将来を見据えると、次に来る大きなトレンドは「ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)」だと話すのは、World Wide Technologyのアンダーソン氏だ。

 「『実はワイヤレスネットワークは10年以上前からSDNである』というジョークを同僚と楽しんでいる。というのも最新のWi-Fiアーキテクチャのほとんどは、既にソフトウェア定義のインテリジェンスを備えたワイヤレスコントローラーを使用して、あまりインテリジェントではない末端のAPを一元的に制御しているからだ」

 このようなWi-Fiアーキテクチャには、最新のAPIによる真のネットワークプログラマビリティーが欠けているとも同氏は付け加える。「SDNの時代が始まろうとしている。特にその傾向が見られるのはMist SystemsなどのOEMで、SDNのアーキテクチャを完全にゼロから構築している」

 WatchGuardのオルシ氏の話では、2018年以降はWi-Fi、Bluetooth、900MHz(ISMバンド)のIoTセキュリティがさらに注目を集めるという。「マルウェアの『Mirai』は、こうした機器がいかに脆弱(ぜいじゃく)かを知らしめた。Wi-Fiがこうした機器に搭載されていると、企業はWi-Fiの攻撃対象領域において脆弱になる」

 また同氏は、無線LANの導入モデルは容量設計モデルにずっと近くなるだろうとも話す。設計モデルの種類は2つ。信号強度を考慮した受信範囲の設計と、多数の端末およびトラフィックの種類に向けて設計される容量設計だ。

 「つまり、今後も企業はあらゆる場所にさらに多くのAPを導入し、電力を節約するために最新のエンタープライズ無線LANシステムに見られる無線リソース管理機能を利用し続けるだろう。例えば、バーの中で友人の声が聞き取りやすいのは、周囲の人々が叫んでいる(高電力)のではなくささやいている(低電力)状態だ」

 アンダーソン氏いわく、ワイヤレステクノロジーはビジネスモデルの誕生やビジネス上の利益の創出に役立っているケースが多く、新たな革新の段階に入ったという。

 「かつては会議室やカフェにおいて便利なネットワークだった無線は、今や従業員や顧客にとって主要でミッションクリティカルなネットワークになりつつある。ワイヤレスネットワークは、革新を促し、既存のビジネスモデルを打破するプラットフォームになろうとしている。これからが見ものだ」(アンダーソン氏)

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