「優秀な若手は5年で必ず現場へ異動」 三井住友カードの情シスキャリアパスがすごいデジタルトランスフォーメーション時代に必要な人材とは?(3/3 ページ)

» 2017年11月28日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]
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 しかし、森氏はそういった“抵抗勢力”に対し「ビジネスとITの両方が分かる人材を生み出すのも、情報システム部のミッションであるべきだ」と説き続けた。1年半ほどの時間がかかったが、2009年からそのプログラムをスタート。現在までに、約70人をシステム部門から輩出したという。

 「人を出すのはいいですが、その分の人員が入ってこなければ、仕事が回らなくなります。そのために人事部と協力し、3年から5年先を見据えた人材配置を描きながら、綿密な計画を立てています。コールセンターからシステム部に来た若者は、口をそろえて『今までやってきた仕事の裏が分かった』と言ってくれます。今度はプログラミングの“苦しみ”を覚えて、ビジネス部門に巣立っていくわけです」(森氏)

 情シス部門の戦略的なキャリアパスを作ったことで、最近では、情シス部門に異動したいという若者が増えていると森氏。「これがスムーズに回るまでに10年かかりました」と振り返る。

森氏が考える「デジタルトランスフォーメーション時代に必要な人材」

 森氏は、こうした新たなサービスを構築するために必要な力は4つあると考えている。まずは「現場力」。これはビジネスの変化を感じ、対応する力を指す。2つ目は「ITアーキテクトの資質」だ。クラウドなど新技術の使い方を把握し、実践できる力だという。

 3つ目は「プログラミングスキル」。ビジネスで生まれた要件をプログラムで表現できること。「自らが実装しなくてもよいが、その苦しみや難しさを知っていることが重要」と森氏は話す。4つ目は「CX(Customer Experience)マインド」だ。顧客ニーズに基づく、不明確な要件をあぶり出せる力だ。これもまた、さまざまな部署を渡り歩くことでしか得られない。

 こうした要素を基に、森氏が主張する人材像が「プロデューサー的エンジニア」。ビジネスとITの間に立ち、収益基盤を作り具現化する――これが新たなビジネスを創造するプロデュース力だ。そして、新しいことに挑戦しつづけるために「ロマンを忘れてはならない」と森氏は強調する。

 「従来、IT部門はきつい、苦しい、帰れないという3Kの職場だといわれていたように思います。しかし、そんな職場から夢を描き、それを実現することはできません。デジタルトランスフォーメーションが加速する今、ITでビジネスを生み出せる時代になりました。これは大きなチャンスです。

 昔の人もさまざまな未来予測をしていました。技術の進歩が早い今、未来を予測することは昔よりもずっと難しくなっているかもしれません。しかし、それでもやらなければならない。そのためにはロマンが必要です。そして、『最先端にいようとするならば、変わらざるを得ない』というマインドセットも忘れてはいけません」(森氏)

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