システムは複雑化する一方なのに万年人手不足……「情シス覆面座談会」で見えた“運用管理の闇”、その解決法とは

複雑化するシステムの運用管理で四苦八苦しているのに、「ビジネスに貢献せよ」と言われても……。この状況、どうにかならないものなのか――。ITmedia エンタープライズ編集部では、そんな運用管理に悩む情シスを集めた覆面座談会を実施。現場がどんなことに困り、悩んでいるのかを明らかにするとともに、その解決方法を探ります。

» 2018年01月31日 10時00分 公開
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 「サイロ状に乱立したシステムを仮想化で統合」「ハードは持たずに必要なリソースはクラウドで調達」――。このように、企業が使うITインフラのトレンドは、テクノロジーの進化と歩調を合わせて常に変化し続けています。しかし、こうした新技術を通じて、企業のIT部門が長年抱えてきた「運用管理負荷の軽減」や「コスト削減」といった課題をすぐ解決できるかと言えば、現実はそう単純ではありません。

 管理するシステムは複雑化する一方であるにもかかわらず、新たな技術に精通した運用管理者の確保は難しく、かえって負荷が増してしまうようなこともある中で、経営からの「IT部門はビジネスに貢献せよ」というオーダーにも応えなければなりません。

 このがんじがらめの状況を、どうにかできないものか――。ITmedia エンタープライズでは、読者コミュニティー「俺たちの情シス」から、システムの運用管理に悩んでいる情シスを招いて覆面座談会を実施。さまざまな業種のIT部門が今、どんな問題で悩んでいるのかを明らかにするとともに、解決の糸口がどこにあるのかを探ります。

座談会参加者

  • 総合大学の情シス
  • 運輸業システム子会社の情シス
  • ベンチャー企業の情シス
  • 建設業の情シス

業界や会社によって「情シス」が抱える課題はさまざま

ITmedia: 本日はお集まりいただきありがとうございます。最初に、皆さんの情シスとしての役割と、どんなシステムの運用管理を行っているかをお聞かせください。

総合大学情シス: 総合大学の情報システム部門で働いています。部門の役割としては、主に回線やハードウェアといったインフラ部分の管理を担当しています。業務システムそのものについては、最近ではそのシステムを使う各部門側で管理を担当するようになってきており、よりインフラの導入や運用管理に注力する傾向が強まっています。

ベンチャー企業情シス: ソーシャルメディア系のベンチャー企業でIT部門に所属しています。見ている対象は情報資産だけでなく、管理部系のサービスもカバーしており、営業支援を含む事業に直結した役割も広く担っています。

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建設業情シス: 建設会社の情報システム部門に所属しており、現在は業務システムの見直しに関する企画業務を担当しています。主に親会社で企画業務、グループ会社でネットワーク管理に関する業務を行うという形で役割分担をしています。

運輸業情シス: 運輸業のシステム子会社に務めています。全体で130ほどあるシステムのうち、約100システムがオンプレの仮想環境上で稼働しています。VM数で言えば、開発保守用の環境も含めて、約1000VMといったところでしょうか。プライベートクラウドと呼んでいるのですが、現状は「仮想化による統合」が終わった段階です。

 稼働しているインフラについては、4年後にEOS(End of Support:サポートの終了)を迎えることも見えていますので、それ以降の基盤をどのようなものにしていくか、現在検討を進めています。

用途やニーズによる「クラウド」と「オンプレ」の使い分けが一般的に

ITmedia: 皆さんの会社はいずれも「オンプレ」と「クラウド」の環境が混在しているようですね。その使い分けや運用はどうしていますか。

総合大学情シス: メールや授業支援システムといった、主に学生が使うシステムについては、クラウドサービスの活用を進めています。一方で、学生の名簿や成績、大学の会計や人事などを扱うシステムは外部に出さずにオンプレで運用しています。やはり、秘匿性が求められるデータをクラウドで扱うのは、まだ難しいですね。

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運輸業情シス: われわれの場合は、今のところオンプレの仮想化環境上での運用が基本です。ただ、ミッションクリティカルである必要がないもの、SaaSとしての機能が充実しているもの、データ分析のように大量のストレージが必要になるものなどについては、徐々にクラウドに移行していく傾向にあります。

ベンチャー企業情シス: システムは基本的に内製で、インフラに「オンプレ」と「クラウド」のどちらを採用するかは、お客さまのニーズに合わせて選択しています。昨今では6対4くらいの割合でクラウドに対するニーズのほうが高いです。

建設業情シス: うちは基本的に「外で使うシステム」については、セキュリティ上のリスクが許容できればクラウドを活用します。「社内だけでしか使わないシステム」についてはオンプレで運用するという方針です。

 とはいえ、機密保持やセキュリティの観点から、クラウドで運用できるケースは多くないですね。公共案件をはじめとして、設計書などの管理は厳重に行わなければなりませんし、協力会社に関する情報などにも漏えいのリスクは許されません。そうなると、やはりクラウドではなくオンプレでの管理が妥当というものが増えてきます。

サイジングも拡張も難しい「オンプレ」環境

ITmedia: 各社とも、クラウドの採用には前向きであるものの、オンプレを全廃して完全にクラウドへ移行するわけにはいかない事情もあるようですね。オンプレとして残る環境を運用していく上で、特に大きな課題だと感じていることはありますか。

総合大学情シス: オンプレについては、大手ベンダーのハードウェアを使って大規模な仮想化環境としており、仮想サーバの構築からアプリケーションの導入まではわれわれで担当し、導入後のシステム運用については、主に各部門に引き継ぐという形になっています。

 インフラの運用にあたっては、仮想マシンが増え続ける中でのリソース確保や性能維持が課題と感じています。特にストレージまわりの容量、パフォーマンスをどう確保していくのかは問題です。構築時に想定したサイジングが5年もたないという事態は当たり前のように起こります。

スキルの継承やレベル向上がますます難しくなる「情シス」

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建設業情シス: 業界的な特色として、常に新たな現場が立ち上がったり終わったり、移動したり――といった状況が続くので、結果的に常に新たなネットワークが必要になります。以前より協力会社からの持ち込み機材は多いのですが、近年では3Dデータをはじめ、各種のセンサー類やドローンのようなIoTを活用する現場も増えており、ネットワークの複雑化と同時に、扱うデータ量が加速度的に増加しています。

 また、われわれの場合、システムに関わる人たちがジョブローテーションで定期的に入れ替わるので専門家が育たず、スキルやハウツーの継承が難しいというのも大きな課題になっています。仕事の中で口伝したり、ドキュメントを作成したりといった取り組みは行っていますが、やはり限界があります。例えばドキュメントなどは、新しく来た人が読んでも理解できないこともありますから……。スキルの継承やレベルアップが難しい中で、高度化していくシステムに対応していけるかどうかは不安を感じています。

運輸業情シス: 確かに、新しい概念や製品が次々と出てくる世界なので、運用する側のキャッチアップが難しいというのはありますね。今、「ドキュメントを読んでも理解できない」というお話がありましたが、たとえドキュメント通りの対応まではできたとしても、基礎となる知識が乏しければ、想定外の障害が起こったときに対応できなくなってしまいます。

 さらに私たちの場合は、130あるシステムのどれかに、常に何らかのEOSが来ている状態なので、常にその更改作業に追われる状況です。ビジネスにとって本質的ではない業務に、潤沢とはいえないIT部門のリソースが割かれる状況は、正直なところ厳しいですね。

総合大学情シス: 大学の情シスは、一般的な企業の情シスとは、かなり状況が違いますね。先ほど、ジョブローテーションの話がありましたが、われわれの大学でも人事異動が前提となっており、情シス部門に専任として長くいられる人がほとんどいない状況です。

 そうなると、教える側も、「苦労して新しい人を育てても、どうせすぐにいなくなってしまう」と思ってしまい、なかなか技術継承が進みません。そんな形で運用を続けていると恐ろしいことに、せっかくシステム化した部分まで、隙あらば“アナログに戻してしまおう”とする力が働いたりするんですね。常に油断できない状況です(笑)。

クラウドとオンプレの混在で「運用管理の負荷」は増大

ITmedia: ここまでのお話をまとめると、まず、クラウドの採用には意欲的ではあるが、特にセキュリティやデータ保護の観点からオンプレも手放せない状況は続いているということ。一方で、オンプレは、導入時に数年後のシステムニーズを見据えたサイジングが難しかったり、それを管理する人材の育成、最新技術へのキャッチアップが難しかったりするといった課題があるようですね。実際のシステム運用の中で、解決していきたいと考えている課題はありますか。

運輸業情シス: われわれの場合はこれまでの経緯から、仮想サーバの基盤部分と、ネットワーク、ストレージの設計が個別になってしまっています。そのため、新たなサービスを立ち上げたいというときに、どうしてもスピード感がありません。また、結果的に全体の構成が複雑になってしまっており、全体を把握できる人でなければサービス設計そのものが難しくなってしまっています。何かやろうとするたびに、サーバ、ネットワーク、ストレージのそれぞれのベンダーの担当者に依頼しなければならない状況は非効率ですよね。そのような事情もあり、次期の基盤構築においては、サーバ、ストレージ、ネットワークを個別にインテグレーションするような提案は受け入れられないだろうと考えています。

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建設業情シス: 先ほどのジョブローテーションの話や、最初にお話しした親会社とシステム子会社での担当分けの話とも関連してくるのですが、多くの現場が立ち上がったり、なくなったりということが繰り返される中で、システムがどう使われているのかが分かっている人と、システムの中身で何をやっているかを把握している人とが完全に分断されてしまうという状況が起こりがちです。その両方がローテーションでいなくなってしまうと、誰も面倒を見ていないゾンビのようなシステムが基盤上に残ってしまうことがまれにあります。

ベンチャー企業情シス: 当社の場合は、テクノロジーが大好きなメンバーがIT部門に集まっているので、スキル面での大きな問題はありません。ただ、お客さまに使っていただくシステムを内製し、運用しているという性質上、フルタイムでのインシデント対応が基本です。24時間365日、いつどこでアラートが出るか分からない状況なので、スタッフはメンタル面でも体力面でもタフでないと務まりません。

 会社側では、IT部門のストレスや負荷を軽減する仕組みとして、お客さまとIT部門との間に、お客さま側で起こっている問題を整理し、技術的なタスクに落とし込むチームを設けるといった対策を行っています。ただ、オンプレの場合は、停電だったり、ハードの物理的な故障だったりと、負荷が高い要素が増えてしまうのが厳しいですね。インシデント対応の負荷を下げるという意味でも、クラウドへの移行を積極的に進めたい状況です。

柔軟なワークスタイルを実現する「デスクトップ仮想化」−DaaSかVDIか?

ITmedia: 仮想化環境の進歩やネットワークアクセスの普及に合わせて、かつてはセキュリティの観点で注目されていたVDI、いわゆる「デスクトップ仮想化」が、リモートワークのような働き方改革の側面からも再び注目を集めています。近年では、デスクトップ仮想化をクラウドで提供する「DaaS」と呼ばれるサービスも増えていますが、みなさんのお勤め先では、これらを活用されていますか。

総合大学情シス: 私の大学では、主に学生が使うシステムについてクラウドの採用が進んでいると先ほど話しましたが、デスクトップ環境についても、特に学生向けのものについてはDaaSを検討してもいいのではないかという雰囲気になってきています。現在、VDI導入のために高性能なオールフラッシュストレージなども検討していますが、コストとメリットをみながらDaaSにすべきか、オンプレでいくかを考えたいと思っています。

建設業情シス: VDIについては、われわれも検討を進めています。建設会社は出張が多く、建設現場はどうしてもセキュリティが弱くなりがちなので、主にセキュリティ面と管理面でのメリットを享受したいという考えです。一方で、VDIの使い勝手は現場のネットワークやサーバ側のリソースに大きく依存することになります。ネットワークを潤沢に使える現場ばかりではないのが実情なので、運用時の安定稼働に必要なリソースの確保にかかるコストなども踏まえながら考えたいと思っています。

情シスが考える「理想の運用管理」の姿とは?

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ITmedia: 企業が現状抱えている情報システムの運用管理にあたって、皆さんのお話から実にさまざまな課題があることが分かりました。ここで、特にオンプレについて、そうした状況を少しでも改善していくためには、どんな仕組みやツールがあればいいと思いますか。

建設業情シス: 1つは、より高度で簡単に扱える「自動化」の仕組みではないでしょうか。具体的には、データへのアクセス権限の設定が簡単にできたり、システムの異常検知をより早い段階でできたりするような感じでしょうか。さらに言えば、異常に対して、われわれの側での設定変更で対応できるのかなど、対処方法まで掘り下げて分かりやすく示してくれるものがあるとありがたいですね。

ベンチャー企業情シス: 多くの企業で、高いスキルを持つエンジニアの確保が難しくなっている状況を考えると、非エンジニアでもウィザード形式でサーバを構築できたり、運用管理が行えたりする仕組みは必須でしょう。

運輸業情シス: サーバ構築はもとより、構築が済んだ後のテストも自動的に行われ、その結果が通知されるような仕組みがあるといいですね。さらに、そのサーバや構成情報が自動で監視ツールに登録され、ダッシュボードから全部確認できる。障害が起きたらダッシュボードをドリルダウンすると対応するオペレーションが提示され、候補から選ぶとジョブが投入されて再起動される……というところまで実現できれば理想的だと思います。

ITmedia: それは、今、一般に流行っているようなパブリッククラウドサービスの感覚で使えるオンプレ運用の仕組みが求められているということでしょうか。

運輸業情シス: それに近いと思います。調達から運用開始までのスピード感、コスト面などでパブリッククラウドへの関心が高まっている一方で、企業によっては、どうしてもパブリックには出せないシステムがあったり、他システムとの連携が難しかったりといった理由でオンプレも完全になくすのは難しいというのが現実ではないでしょうか。

 オンプレの維持にあたっては、人件費やサポート料金も含めた運用コスト(OPEX)がクラウドよりも高くなると考えられがちですが、それは会社の事情によって異なります。例えば当社の場合、IaaSとしての費用だけで比べると、今、稼働しているシステムのためにパブリッククラウドを使うよりも、オンプレ環境で運用を続けたほうが安いんです。同じようなケースで、運用監視が高度に自動化され、管理の負担が軽減されれば、長期的に見てオンプレの方が安くつく企業も増える可能性があると思います。

 実際に、海外ではそうした観点でクラウドからオンプレに回帰する傾向があるといいます。日本でも、クラウドに置いていたものを、自社で使っているデータセンター内の基盤に戻そうとする動きが出てくるかもしれませんね。

クラウド感覚で使えるオンプレ環境が欲しい――その解決策は

 今回の座談会を通じて、オンプレミスのシステムを保有する企業の課題として、次のようなものが見えてきました。

  • あらゆるスキルレベルの担当者がシステムの運用管理をできるようにしたい
  • 運用管理の負荷を軽減したい
  • 必要に応じてリソースを柔軟に拡縮したい
  • 複雑な機器構成により、システムの設計や構築に時間をかけたくない

 近年、こうした課題を解決し、情報システム部門の業務効率を高めていくための仕組みとして注目を集めているのが「ハイパーコンバージドインフラ」(HCI)と呼ばれるソリューションです。

 HCIは、CPUやメモリなどのコンピューティングリソース、HDDやSSDによるストレージシステム、仮想化基盤といった、サーバシステムの構築に必要なコンポーネントを、1台のラックマウント筐体にまとめたソリューションの総称です。

 従来、オンプレミスのサーバシステムを増強する場合には、メモリやストレージなどのコンポーネントを個別に増やしていく形が一般的でした。HCIでは、新たな筐体を1つずつ追加していくことで、インフラ全体の性能を向上させることが可能です。また、追加した筐体内にある各リソースは、ソフトウェア的に統合されており、ユーザー側からは単一のリソースプールとして運用、管理を行えます。情報システム部門がHCIに注目する理由は、リソース拡張の「柔軟性」と高い「管理性」にあります。

 次回は、HCIを使ったシステム運用管理の課題解決について、ノークリサーチ シニアアナリストの岩上由高氏と、富士通HCI製品の開発者およびマーケティング担当が解説します。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2018年2月28日