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» 2018年01月24日 10時00分 公開

マルチクラウド神話を打ち砕く(後編):それでもマルチクラウドを夢見る管理者のための処方箋

マルチクラウドは幻想にすぎない。プロバイダーのうたい文句通りにはいかない。それでもマルチクラウドが必要なのであれば、次善策を検討しよう。

[Daniel Robinson,Computer Weekly]
Computer Weekly

 前編(Computer Weekly日本語版 1月10日号掲載)では、クラウドプロバイダーが主張するクラウド間のシステム(ワークロード)移行が容易なことではなく、現実的ではないことを解説した。

 後編では、それを踏まえてクラウド移植性を実現する方法を検討する。

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クラウド移植性を実現する次善策

 機能やサービスはクラウドプラットフォームごとに異なるため、ワークロードが非常に単純かつ自己完結型でない限り、単純にワークロードを別のクラウドに移行するのは難しい。ただし、この困難を回避する方法が1つある。それは、PaaSなど、特定のクラウドプラットフォームに結び付いていないアプリケーション環境を利用する方法だ。アプリケーションに必要なサービスの多くはPaaS自体に多数用意されているため、クラウド間で環境全体を移行できる場合にはPaaSが移行に役立つ。

 Gartnerのテクノロジーおよびサービスプロバイダー調査グループでリサーチディレクターを務めるマシュー・チャン氏は、次のように説明する。

 「PaaSプロバイダーは、実のところIaaSに全く価値を見いだしていない。例えると、家全体を持ち上げて別の場所に移すようなものだ。基盤となるインフラが全てそろっていれば、それほど苦労はしない」(チャン氏)

 その顕著な例が、Red Hatの「OpenShift」だ。このプラットフォームでは、ユーザーがDockerコンテナを使ってアプリケーションを構築、導入できる。Dockerコンテナは、オンプレミス、Azure、AWS、GCPに導入可能なバージョンが用意されている。従って、理論上は先述した任意のプラットフォームにアプリケーションを移植できる。

 だが、ここでも依存関係に関する同じ注意点が当てはまる。アプリケーションが特定のクラウドプラットフォーム固有の機能やサービスを利用していれば、別のクラウドプラットフォームに移行するのは難しくなる可能性がある。ロックイン状態を招く恐れがあるから便利な機能やサービスを使用しないと開発者が考えるのは、恐らく望み薄だろう。

サーバレスコンピューティングの将来性

 PaaSの先に見えるのが、サーバレスコンピューティングと呼ばれる新しいトレンドだ。これは、特定の従量課金機能を中心に構築されたアプリケーションのことで、「Functions as a Service」(サービスとしての機能)とも呼ばれている。その好例が「AWS Lambda」だ。

 ほぼ全てのサーバレスプラットフォームがPythonに対応するため、アプリケーションをPythonでプログラミングすると、コードをプラットフォーム間で簡単に移植できる。繰り返しになるが、アプリケーションコードが非常に汎用(はんよう)的でクラウド固有の特定の機能やサービスへの関連付けがないならば別だが、クラウドごとにサポート機能が異なる場合、シームレスな移行はできない。

 クラウド移植性を実現する上でもう1つの壁となるのが実際のデータだ。コンプライアンスと規制上の理由から、社外に移動するのは現実的ではない情報もある。

 また、ワークロードの移行先にも制限が生じる場合がある。データセンターの所在地の制限や、特定のワークロードの実行に必要な資格レベルを満たすプロバイダーが限られていることなどがその理由だ。

 さらに、データの量も移行を難しくする要因になる可能性が高い。現在は比較的高速なインターネット通信を利用できるが、インターネット経由で何GBものデータを転送すると、転送完了までに何日もかかる恐れがある。

 オンプレミスからクラウドへデータを移行する場合、ディスクベースのアプライアンスを使用してクラウドプロバイダーのデータセンターに輸送するという方法がある。「AWS Snowball」がその例だ。

 だが、クラウドプラットフォーム間のデータ移行はオンプレミスからクラウドへのデータ移行よりも難しい。クラウドプロバイダーによって、データ保存に使用しているAPIや規格が異なるからだ。クラウドプロバイダーが採用している価格モデルも、データの抽出と移行に多額のコストが発生するとユーザーに感じさせる要因になっている。

マルチクラウドの管理

 このような問題が相まって、クロスプラットフォームクラウド管理ツールは依然として比較的未成熟な状態にある。Gartnerは最近のレポートでこの状態を「高度に細分化した新興市場」と表現した。

 クラウドやインフラのプロバイダーは独自の管理ツールを用意している。だが、そのようなツールでは主に自社のソフトウェアスタックとの緊密な統合を想定しており、複数のクラウドをサポートできる形の統合レイヤーの提供はサードパーティー任せだ。

 このような状況で、IT部門はマルチクラウド環境管理向けに組み合わせた一連の管理ツール全てを習得するか、限られた範囲の機能しかないクロスプラットフォーム管理ツールを使用するかの選択を迫られる。

 まとめると、クラウドプラットフォーム間の移植性は、コンテナなどのテクノロジーによって実現に一歩近づいたが、引き続き大きな問題になっている。クラウド戦略策定の際には、十二分に注意されたい。将来的に別のクラウドの方が役立つと判断してクラウドプロバイダーを替えるとさまざまな問題や多額の費用が発生する可能性があるためだ。

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