こうした背景から、ALSOKが今注力しているのが、AI活用だ。冒頭に挙げた監視カメラの映像解析を始めとして、カメラやセンサーの検知をAIに担わせることで、「警備員の目」を増やそうという考え方だ。同社は非IT企業ではあるものの、警備業務のノウハウを生かしてシステムを開発していきたいという。
「警備員が異常だと感じる要素は、警備先や目的によって変わります。“お仕着せ”のロジックでは、誤報だらけのアラートになってしまうでしょう。また、警備員のノウハウをベースにすれば、判断する要素を最小限にできる。つまり、検知に必要なコンピューティングリソースを抑えることができるのです」(干場氏)
そして、このAIを強化する技術としてALSOKが研究を進めているのが4Kと5Gだ。映像解析の精度を高めるためには、高品質な画像が欠かせない。画像認識には一定の画素数が必要であるためだ。4Kカメラ(4000×2000ピクセル程度の画面解像度)であれば、HDカメラと比べて、数倍の距離まで認識が行えるため、肉眼では捉えられないような異常も捉えられるという。
しかし、解像度が高まれば、映像データを伝送する負荷は高まる。その解決策が2020年をメドに実用化される次世代通信規格「5G」というわけだ。5Gでは上りの速度が4Gに比べて圧倒的に早く、遅延も少ない。ALSOKでは、2016年からNECおよびNTTドコモと協力して実証実験を実施している。
遅延が少ないため、危険の予兆もほぼリアルタイムで警備員に送ることができる。不審者がその場から立ち去る前に捉えるためには、5Gは不可欠だと干場氏は話す。
「オリンピックに向け、都市全体を監視しようとすれば、間違いなく警備員もセンサーも足りなくなる。センサーをたくさんつけるよりも、1つのカメラで広範囲を押さえ、画像をAIに読み込ませる方が早い。今後は火山災害などに代表される自然災害や、インフラのモニタリングについても、AIを活用したサービスを提供していく予定です」(干場氏)
もともと非IT企業だったということもあり、現場や経営層のAIに対する理解や、慣れない開発プロセスに苦戦することもあったという。「決して簡単な道のりではなかった」と干場氏。異変が起きてから駆け付けるのではなく、異変を未然に予知し、対処する。AI、4K、5Gといった先端技術は、警備のあり方に革命を起こすだけの力を持っているのだ。
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