リアル店舗のディスプレイで「インプレッション単価」を出せる クレストがショーウィンドウにかけたITの魔法【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(2/4 ページ)

» 2018年02月23日 07時00分 公開
[大内孝子ITmedia]

 デジタルな世界とリアルな世界、Webページで広告が表示されたというインプレッションの数字と店舗の前を通る人の数は同じ指標になる。同様に、Webサイトの商品ページを見た人数とリアル店舗の商品テーブルを見た人数は同じ扱いができる。

 Web広告も、画像をちょっと変えたり、クリエイティブを駆使することでクリック率が2%上がるという話はよくある。ウィンドウディスプレイも同じで、「こう変えたら、視認量÷交通量が3%上がった」という具合に、数字で分かるようになるのだ。

 それはつまり、リアル店舗のディスプレイでWebの世界でいう「インプレッション単価」を出せるということになる。例えば、Web広告に100万円を使った場合、インプレッション数が10万だったら「1表示あたり10円」という計算になる。同じように、ウィンドウディスプレイに50万円をかけて5万人が前を通ったら、1人あたり10円となり、そのうち、2万5000人がディスプレイを"見て”くれたら20円という計算になる――というわけだ。

 「このような考え方をすることで、Web広告の世界と同じ目線でデータを扱うことができます。いずれは個人認証を行って、会員管理とひも付ければ、あらゆる分析ができるようになります。“ウィンドウディスプレイにAの商品を入れたからAの商品が売れました。その購入者がまた別の日にBの商品を購入しました”――というように、いずれはファネルの上と一番下を結び付けて相関関係をとるようなことまで可能になるでしょう」(永井氏)

 カメラを設置することで、これまで効果が測れなかったウィンドウディスプレイから店内のビジュアル、小さなPOP1枚まで、あらゆるものを対象に計測ができるようになる。こうして数値化した効果を元に戦略を練ることで、ファクトに裏付けられたマーケティングが可能になるというわけだ。「これこそが、デジタルマーケティングの領域での常識をリアル店舗で再現するということなのです」(永井氏)

実店舗でESASYを見てみると

 ESASYは店舗のどんな場所にどのような形で設置されているのか。クレストが運営するグリーン雑貨の店、「IN NATURAL(インナチュラル)」で見せてもらった。

Photo IN NATURAL 湘南店の様子(店舗前の交通量を把握するためのカメラ)

 IN NATURAL湘南店では、店舗の正面入口にカメラを設置し、店舗前の交通量を計測している。店内を俯瞰する位置にも設置しているが、トラフィックカウンターとは異なり、「この売り場に滞留していた人の量」を記録している。

 カメラには通った人の形を認識するモードと、顔を捉えて「見た」ことを認識するモードがあり、交通量か視認数の取得かといった目的に応じて適した端末を店内に置いている。

Photo IN NATURAL 海老名店の様子(洋服ゾーンのカメラ)

 「IN NATURALでは衣料スペース、植物スペースといったように、部門ごとにカメラを設置しています。この店舗は植物よりも衣料に興味を持つ顧客がが多いねとか、そういう傾向も見えてきます。また、洋服のゾーンでどの服を前面に出したら効果的か(視認率と購買率が上がるのか)などというものも見ています」(永井氏)

 永井氏によれば、そもそも店舗スタッフは経験則を元とする仮説検証を繰り返してきた結果、“感覚的な勝利の方程式”を持っている人が多いが、それが本当に正しいかどうかを裏付ける方法がなかったという。この感覚が数字になれば、本部と店舗との間で共通の指標が生まれ、具体的な施策を提案しやすくなると考えており、それはIN NATURAL湘南店の店長も同じ意見だ。

Photo IN NATURAL湘南店店長の伊藤氏

 「お客さんの興味関心度を見るために、よく正面の売り場を変えています。どれくらいの人が立ち止まって見るか、それに伴って在庫がどれくらい減っているかを確認しながらだいたい2週間くらい見て成功かどうか判断します。ESASYのデータは、これまで体感でしかなかったものが、データで裏付けられるというイメージです。上がっているだろうなとデータを見直すと、やっぱり上がっているんです」(IN NATURAL湘南店店長の伊藤氏)

 実際、ウィンドウディスプレイに対する関心度となる視認数と視認時間を基準に店内ディスプレイを改善することで、売り上げで前年比20%増を達成したという。

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