リアル店舗のディスプレイで「インプレッション単価」を出せる クレストがショーウィンドウにかけたITの魔法【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(3/4 ページ)

» 2018年02月23日 07時00分 公開
[大内孝子ITmedia]

交通量から滞在時間、注視した人の数までを測定

 EsasyはRaspberry Piを使って、USB経由でカメラの映像を取り込み本体内部で画像解析を行う。人物を認識したログデータをCSVファイルに書き出すというところまで、完全にスタンドアロンで動作する。CSVファイルのみをWi-Fi経由でサーバにアップロードする。仮にネットへ接続できない環境の場合、SDカードへデータをストックされ、後からまとめてアップロードできる。保持データはCSVファイル形式なので、1週間程度であれば十分オフラインでも稼働しデータも保存される。

Photo ESASYの仕組み
Photo ESASYの設計を手掛けたシステムディレクター兼マーケティングディレクターの江刺家直也氏

 ESASYの設計にあたっては、2つのコンセプトがあったとシステムディレクター兼マーケティングディレクターの江刺家直也氏。まず1つは、どこでも手に入る安価な汎用製品を採用し、調達のしやすさや安価な導入を実現することだ。

 ESASYは、ボディーにRaspberry Piを採用したことで、電源ユニットもWebカメラも近所のショップで購入できる部品で構成を変更できる。独自基板を使っていないため、家電量販店へ行けばすぐに必要な部品は調達できるなど、かなり柔軟な対応が可能だ。

 もう1つは手軽に設置と撤収ができること。リアル店舗では、店内にカメラを設置したものの、視野角の影響でうまくデータが取れず計測位置を動かすこともある。また、店舗運営の目線から見ても現状回復の容易さは必須検討事項になっている。そのためぱっとつけてすぐに外せるようにしている。「ウィンドウディスプレイ、店内レイアウトを変えるたびに施工会社が入るようではESASYのコンセプトに合わないので手間を掛けないよう、製品設計しました」(江刺家氏)

 個人情報の保護に最大限の注意を払っているのも、特長の1つだ。この手の製品では、画像データを一度記憶媒体に記録し、解析してから削除するケースも多いが、Esasyでは記憶媒体への画像データは保存せず、解析したデータのみをCSV出力している。

 総務省から「カメラ画像利活用ガイドブック」がリリースされたのは2017年1月のこと。開発中はまだ具体的なガイドラインはなく、「画像データがネットワークプロトコルに乗る時点でアウト」という極度に限定的な設計方針をもって設計された。

 「弊社の場合はデモ用として、キャプチャーをオンにしていますが、お客さまに提供するときには削除します」(永井氏)

Photo ESASYのログデータ。交通量/顔検知や滞在時間などを取得している

 これらのデータを目的別に加工、集計することでデータの中の注目ポイントをあぶり出すことができる。例えば、複数店舗の店舗前の交通量を日単位で見ていくことで、「x日のxx店は雨なのに人が多かった」「連休なのに、交通量が少ないのはなぜか」といったことから見えてくるからだ。

 「インプレッションがよければ、『そこからどうコンバージョンするか』という話になりますし、そうでないなら『何が問題なのか、入っている商業施設の問題なのか、施設内での立地なのかサービスの問題なのか』という話になる。分析結果をもとに、仮説が立てやすくなります」(永井氏)

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