汎用的なAIよりも業界ごとのフィット感を大切にするNetSuiteSuiteWorld 2018 Report

ラスベガスで開催中のSuiteWorld 2018は2日目を迎え、開発を統括するエバン・ゴールドバーグ執行副社長が登場。「汎用のAIを作るつもりはない」とし、「裸足感覚」で急成長するVIVOBAREFOOTの導入事例を紹介した。

» 2018年04月26日 08時45分 公開
[浅井英二ITmedia]
NetSuite創業者で現在も開発を統括するエバン・ゴールドバーグ執行副社長

 米国時間の4月25日、ネバダ州ラスベガスのベネチアンホテルで行われているクラウドERPの雄、NetSuiteの「SuiteWorld 2018」カンファレンスは2日目を迎えた。創業者のひとりで、Oracleによる買収以降も開発を統括するエバン・ゴールドバーグ執行副社長が午前の基調講演に登場。AIや機械学習を組み込んだIntelligent Suiteの構想や具体的な活用例を披露した。

 AIや機械学習については、実に多くのITベンダーがそれぞれに構想をぶち上げ、やや食傷気味だが、NetSuiteのそれは明確で分かりやすい。

 ゴールドバーグ氏は、「汎用のAIエンジンを作るつもりはない。NetSuiteのAIに対する取り組みは、それをすべての製品に組み込み、ビジネスユーザーの体験をより良いものにしていくのが狙いだ」と話す。

どんどん賢くなるNetSuite

 基調講演のステージでは、NetSuiteの大きな強みであるダッシュボードの次世代版がデモされ、毎日、ログインするたびに財務や人事、サプライチェーンや製造の担当者がそれぞれ必要とするだろうインサイトを収集し、提示してくれるスマートな機能が紹介された。こうしたインサイトは、財務上のリスクや優れた人材の退職リスク、あるいはサプライチェーンや製造ラインで将来起こるであろうトラブルなど、多岐に渡る。サプライチェーンの担当者には納品の遅れを回避するための解決策まで提示され、より良い意思決定を支援していくという。また、ほかのユーザーが使っているKPI(重要経営指標)をレコメンデーションするデモも行われている。

 ダッシュボードに比べれば地味だが、実際にはビジネスユーザーの体験を大いに改善してくれるのが、Intelligent Form Assistant機能だろう。フォームに入力するとき、可能性の高い選択肢から表示するのはもちろん、可能性の高い値をデフォルトで入力し、その理由も表示してくれるという。

 「NetSuiteは4万社を超える企業によって使われ、膨大な取引データが蓄積されていく。大切なのはデータ。AIや機械学習によってNetSuiteはどんどん賢くなっていく」とゴールドバーグ氏。

Amazonの推奨機能では顧客を引き付けられない

 NetSuiteはERPでありながら顧客管理(CRM)を別建てのシステムで構築する必要がなく、また段階的にe-コマースの機能も追加できるのが大きな特徴だが、B2Cの領域にAIを活用していくこと、例えば、e-コマースにおけるレコメンデーションの精度をAIによって高めていくのは、まだまだ難しいとみている。

 「Amazonは長い年月と莫大なコストをかけ、レコメンデーション機能を強化してきたが、必ずしも忠誠心の高い顧客を引き付けているとは言えない。特にアパレルがそうだ。顧客の期待に応える、優れた体験を提供できていないからだ。むしろ、B2Bの体験に改善の余地は大きいし、業界ごとに固有の機能要件をしっかりと満たしていくことの方が大切だ」とゴールドバーグ氏は話す。

 彼は最近、Oracle創業者のラリー・エリソンCTOからバーチカルソリューションの重要性について助言されたことを明かす。

 「業界を絞り、細部にまで機能を拡充し、まるであつらえてもらったかのようにフィットするNetSuiteにしていきたい。まずはアパレル、そして隣接するフットウェアへといった具合だ」(ゴールドバーグ氏)

 NetSuiteはこの日、英国の老舗シューズメーカーであるClark Shoesの7代目、ガラハッド・クラーク氏が2012年に起業したVIVOBAREFOOTの事例を発表した。同社は、裸足が健康に良いという「barefoot」の流れに乗り、薄いソールとシンプルなデザインで世界中のランナーから支持されている。創業した年の販売数は6000足だったが、その後、e-コマースに力を注ぎ、昨年には12万足へと急成長を遂げた。同社は、さらにe-コマースへの移行を進め、より良い顧客体験を提供するため、NetSuiteを選んだという。

取材協力:日本オラクル株式会社

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