マイカー旅客運送の安全管理に“なりすまし防止”機能付き「呼気アルコール検知器」導入――日立と養父市が共同実証

日立製作所は、兵庫県養父市が開始した市民ドライバーによるマイカー旅客運送サービスで、「クラウド連携型呼気アルコール検知器」の有効性を検証する。スマートフォンのカメラを利用した顔認識機能で、ドライバーの呼気検査の“なりすまし”などの不正利用を防止し、安全性向上を図る。

» 2018年05月28日 16時30分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 日立製作所と兵庫県養父市のNPO法人 養父市マイカー運送ネットワークは、“なりすまし防止機能”を搭載した日立の「クラウド連携型呼気アルコール検知器」の実証を2018年5月26日から開始した。同日に養父市で開始された市民ドライバーによる運行サービス「やぶくる」で、ドライバーの安全管理に利用する。

 養父市では、タクシー事業者の対応が困難な山間部2地域(関宮、大屋)の新たな交通手段として、やぶくるを開始。市民が登録ドライバーとなり、自家用車を使って、有償で住民や観光客の短距離輸送を担う。2018年3月に事業の実施主体として設立された養父市マイカー運送ネットワークには、市内の交通事業者、観光関連団体、地域自治組織などが参画。安全運行に向けた体制を整備するため、市民ドライバー向けの運転講習や運行管理業務は、タクシー・バス事業者に委託される。

 今回の実証は、その安全体制の構築施策の一環として実施される。実証期間は、2018年5月26日の事業開始から1年間の予定。NPO法人に登録された市民ドライバーのうち10人(予定)に検知器を配布して、運行前の遠隔点呼とアルコールチェックに活用し、その効果を検証する。運行管理を担うタクシー事業者が遠隔から市民ドライバーの点呼と安全を確認することで、業務効率と安全性の向上を図る。

 実証で利用するのは、スマートフォンの内蔵カメラを利用した顔認証機能を搭載する呼気アルコール検知器。ドライバーが携行するスマートフォンに取り付け、専用アプリで呼気アルコール検査をすると、検査と同時に被験者の顔画像を取得して顔認証を行うため、“なりすまし”などの不正利用を防止できる。

 スマートフォン連動のセンサーで検知したドライバーの呼気データは、クラウド上の管理システムに収集。運行管理者は遠隔から、各ドライバーのアルコールチェック結果や運送状態の確認・管理が可能になる。

 また、同クラウドシステムは、市民や観光客からの配車依頼に対して、ドライバーの空き状況の確認や運送ドライバーの決定・通知を行う機能も搭載する。

Photo 新型呼気アルコール検知器
Photo 養父市での実証の概要

 なお、日立はこれまで、独自技術を用いたポータブル呼気アルコール検知器の開発を進め、2017年6月には試作機での実証試験を実施している。今回の実証で導入するのは、その改良版の新型機。同社は、今回の実証結果も活用し、養父市と同様のニーズを有する自治体や、旅客・貨物運送事業者向け展開を視野に、検知器の改良を進めるとしている。

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