Fintech企業は脅威ではなく仲間――三菱UFJ銀行の経営トップが語る「デジタル変革」への覚悟Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2018年06月18日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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問われる新中期経営計画の実現性

 では、デジタライゼーション戦略とはどのようなものか。図2が、その全体像である。三毛氏によると、先述したチャネル、顧客基盤、人材といった課題に対するデジタライゼーションへの取り組みを、図にあるように「改善」「改革」「非連続」に分けて整理し、「改善と非連続の両方を取り組むことによって、最終的に改革を実現していく」という行程を描いている。

Photo 図2 デジタライゼーション戦略の全体像

 三毛氏は、このデジタライゼーション戦略のポイントとなるところについて、まず「店舗サービスのデジタル化/チャネルの見直し」では、「店舗への来店者数がこの10年間で4割減少した一方、インターネットバンキングへはこの5年間で4割増加した」ことから、顧客のネットシフトへのニーズにきめ細かく応えていく構えを示した。

 また、「個人オンラインサービス」では、ネットシフトの加速に向けてスマートフォンなどの非対面チャネルのユーザーエクスペリエンスを改善し、顧客接点の一層の拡大を図っていく。「デジタルマーケティング」では、先述した顧客基盤に対する課題を踏まえ、対面・非対面の各チャネルを使ってOne to Oneのマーケティングを実施し、人工知能(AI)なども活用してニーズの予測に基づく最適なアプローチを導出するとしている。

 さらに「RPA」の取り組みについては、図3のように業務フローの抜本改善を挙げた。例えば、住宅ローンの業務では図のように自動化を進め、これによって「定型業務から開放された社員は顧客と向き合う時間が増え、培ったスキルやノウハウを存分に発揮できるようになる」(三毛氏)と見込んでいる。

Photo 図3 業務フローの抜本改善

 デジタライゼーション戦略(図2)において「非連続」に挙げられている2つの取り組みも紹介しておこう。図4は、MUFGのFintech関連子会社「Japan Digital Design(JDD)」についてだ。三毛氏によると、これまでMUFGの内部組織だった「MUFGイノベーションラボ」を2017年10月に独立させた事業体だという。とりわけ、図の右側にあるように、MUFGとしてのAI活用に向けた研究開発を担っている。このJDDがMUFGのデジタライゼーションにおける競争力の要になりそうだ。

Photo 図4 Japan Digital Designの内容

 もう1つは、「新型ブロックチェーンによるペイメントネットワーク」。図5がその新決済プラットフォームの内容である。三毛氏はこの取り組みについて、「今後、IoT化が進めば、サービスを利用した分だけの課金やシェアリングエコノミーによる決済などがどんどん増え、通信トラフィックが爆発的に増加することが予想される。私たちはこれを円滑に処理するために、さらなる高性能なネットワークが必要だと考えている」と説明した。

Photo 図5 新決済プラットフォームの内容

 以上が、筆者が抜粋した三毛氏の講演内容である。非常に興味深い内容だが、新中期経営計画として具体的にどこまで実現できるかが問われる。

 三菱UFJ銀行も既に着手しているが、メガバンクは店舗の整理をはじめとして、今後相当のリストラを余儀なくされるとみられる。もう一歩踏み込んで言えば、これからの時代の金融サービスとして、メガバンクという存在が果たして求められ続けるのかどうか。金融としての機能をはじめ、信用、安全、安心、親切、利便性、スピード、コスト、グローバル、エクスペリエンス……、いろいろと因数分解して考えていく必要がありそうだ。

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