本音で腹を割って話せるプロジェクトは、世の中にそう多くない。それに相当こだわってるケンブリッジでも、全部のプロジェクトがそうだとはいえないくらいだ。
しかし、少しでもそうなるように、いろいろな工夫をしている。幾つか例を挙げて紹介しよう。
「客先常駐」にこだわっているのも、その工夫の1つ。
客先に迎合して御用聞きをするためではなく、顧客と互いの価値観をぶつけ合い、誤解なく理解し合うこと。その先にこそ、顧客のA案でもコンサルタントのB案でもない、C案が生まれる。プロジェクトでは、これが成功の決め手になる。
客先に常駐するのは、“本音で話す関係”を作るためだ。
そして、プロジェクトは、日々状況が変わる。今日の検討結果で、昨日まで考えていたことが変わるなんてことは日常茶飯事だ。今日の検討結果で、人の考え方が変わることも頻繁にある。「Aが大事だと思っていだが、今日の検討でxさんの話を聞いて、むしろBが重要なんだと気が付いた」みたいな話だ。
客先に常駐するのは、顧客と高密度でやりとりすることで、こうした変化を即座につかむため。そしてまた本音で議論する。そして即座に軌道修正する。だからプロジェクトがうまくいく。
ケンブリッジが常駐スタイルにこだわっているのには、こうした理由がある。
本音で話すためには、本音で話す「機会」が必要だ。
僕のプロジェクトでは、週1回(プロジェクトが進むと月1回)「振り返りメール」を送り合うようにしている。
今週を振り返って「よかったこと/気付き」「モヤモヤすること/懸念点」「残念だったこと/改善点」を自由に書いて送るのだ。
例えば、こんなメールを、プロジェクト関係者全員に送る。
x月x日、榊巻です。振り返りメールを送ります。
今週から課題分析のフェーズに入ったが、他部署も含めた状況を俯瞰してみると、一目で状況が把握できるようになってきた。
これまで玉石混交ゴチャゴチャした状況だったのに、正直これは見事。
霧が晴れていくような感じがしている。
気のせいかもしれないが、A部署のxさんが明らかに部署視点から全社視点での発言をするようになったと思う。
自分も見習わなければ。
霧が晴れてきたのはよいが、ここから取り組みの優先順位を付けることになるはず。
うまく全員の合意が得られると思えない……。
私自身が会議を欠席することがあり、前回の議論についていけないことがある。反省。
……
キレイに、丁寧に書く必要は全くない。感じたこと素直に書く“日記”のようなものでいい。これが、プロジェクト関係者全員から送られてくる。
週1回、こういう機会があると、格段にモノを言いやすくなる。本音で腹を割るためには、お互いの考えに触れ合う機会を多くする必要がある。どんな人間かも分からない人と腹を割って話せるわけがない。Googleのいう“心理的安全性”を確保するための1つの方法ともいえる。
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