創業70年目の挑戦 農用機器メーカー「ネポン」がクラウドサービスを進化させる理由新規農家をAIで救いたい(3/3 ページ)

» 2018年06月25日 12時00分 公開
[高木理紗ITmedia]
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AI進出にこだわる切実な理由

 現在、ネポンでは、IBM Cloudのデータ容量の大きさを生かし、これまで15分単位だったアグリネットのデータ更新を、1分単位へと増やそうとしている。「より繊細な管理を望む生産者の声に応えたい」と、太場氏は話す。

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 同社が特に力を入れているのが、篤農家の栽培データを活用し、Watsonと連携した栽培シミュレーション機能の実装など、AIを活用した農家への栽培ノウハウの提供サービスの開発だ。

 「専門の農産物を数十年作り続けた農家でもたどり着けなかった栽培ノウハウの高みを、複数の農家でデータ活用、分析のPDCAを繰り返すことで、数年で達成できるようにしたい」(太場氏)

altalt AIを使った「アグリネット」の構想例

 ネポンがAIとの連携にまい進する背景には、農家の減少に歯止めたいという思いがある。一般的に、農業を始めてから軌道に乗るまでには10年ほどかかるといわれている。多くの農産物は、1年に一度しか生産できないため、ノウハウの蓄積にどうしても時間がかかるためだ。しかし、これでは誰も農家になりたがらない。「AIによって、新規農家が3年で黒字化できるようになれば」と、同氏は話す。

 また、海外に進出して栽培に乗り出す農家に向け、日本にデータを置いたまま、海外に建設した農業ハウスを遠隔管理できる機能の開発も目指しているという。「これからは、今まで蓄積したデータを生かせる時代。貴重な知的資産としての栽培ノウハウを守り、『Made by Japan』としての農産物の価値を高めたい」(太場氏)

 農用機器メーカーにクラウドサービス事業者の肩書を付け加えたネポン。IT化が進む農業業界における、デジタルトランスフォーメーションの好例といえるだろう。

【訂正:2018年6月26日午後1時50分】初出時、「2018年4月にサービスの基盤を他社のクラウドから『IBM Cloud』に刷新した」となっていましたが、正しくは「従来使っていた他社のクラウドに加えて、2018年4月に『IBM Cloud』を導入し、AI活用サービスなどを含むアグリネットの新機能構築へ動き出した」の間違いでした。おわびして訂正いたします。(編集部)

【訂正:2018年6月26日午後4時10分】初出時、タイトルは「農用機器からクラウドサービスへ転身 老舗メーカー「ネポン」70年目の選択」となっていましたが、ネポンは農用機器メーカーであると同時にクラウドサービスにも進出しているため、誤解のないよう「創業70年目の挑戦 農用機器メーカー『ネポン』がクラウドサービスを進化させる理由」に修正いたしました。(編集部)



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