データ復旧企業の「ひとり情シス」、ほぼ半年で基幹システムを刷新するの巻【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(2/4 ページ)

» 2018年07月23日 08時45分 公開
[池田憲弘ITmedia]

たった1人で挑んだSalesforce導入プロジェクト

 検討の結果、趙さんが選んだのはSalesforceだった。カスタマイズ性が高く、開発期間が短くて済みそうだということ、そしてシーズンごとに無料アップデートができる点などが決め手になったという。そして開発会社とともに、3カ月ほどでリリースさせるスケジュールを立て、2016年の6月ごろからシステム構築を始めた。

 とはいえ、趙さんはこれまでSalesforceを触ったこともなかったため、開発の方法はおろか、機能を把握するところから苦戦を強いられる。開発会社と協力しながら、機能を一つずつ学んでいったそうだ。開発会社が近くにあったこともあり、毎日のように通う日々が続いた。

 「最初にテスト用のアカウントを渡されてログインしたのですが、機能があり過ぎて、何が何だか全然分からず、それ以降、契約するまで使っていませんでした……(笑)。開発が始まってからは、分からないことは全て開発会社の方に聞いていました。最初は顧客管理だけが目的だったのですが、機能を知るうちに、社内チャットやプロジェクト管理など、さまざまな使い方ができることが分かり、Salesforceへの見方がガラリと変わりました」(趙さん)

 ツールを学ぶのに苦戦した一方で、要件についてはしっかりと決まっていた。社内の業務フローを整理し、作り直したという。これも趙さんが1人で行い、1カ月ほどかかったそうだ。さまざまな部署を転々とし、営業以外の業務を全て経験していたこともあり、業務における課題を把握していたためだ。

 「開発前の段階では、現場へのヒアリングはあまり行いませんでした。要望は尽きないでしょうし、全部を取り入れようとすると開発が破綻することもあります。まずはこちらで仕様を決め、細かい要望に関してはリリース後に吸収していこうと考えていました。最初の時点では70%くらいのものができればいい、というイメージです」(趙さん)

photo 最終的に完成した、業務KPIを可視化した「Salesforce」の画面

 とはいえ、開発はスムーズに進んだわけではなかった。データを復旧するまでには、顧客からの問い合わせを受けてから、診断、契約、復旧、納品と多くのステップがあり、役割分担が細かく、バケツリレーのような形で情報をつないでいく必要があるためだ。FileMakerを使っていた頃は、システムへのデータ入力の権限を設定できず、誤ってデータを消去してしまうといったトラブルもあったため、権限設定については、開発で特に重視したという。

 予定よりも長引いたものの、システムは2016年11月にリリース。ところが、新システムに対する現場からの“猛反発”が待っていた。

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