データサイエンティスト不足に悩んだ「LIFULL」 突破のカギは、機械学習の自動化(3/4 ページ)

» 2018年08月02日 09時00分 公開
[大内孝子ITmedia]

 「さばける仕事が劇的に増え、複数のプロジェクトを並行して進められるようになったので、忙しさはこれまでと変わらないですね(笑)。DataRobotがモデル選定を自動でやってくれるので、相談が受けた際に『試しにやる』というのが、気軽にできるようになったのも大きいですね」(椎橋さん)

 精度が高い順に予測モデルが並ぶため、ユーザーは最適だと考えるモデルを選ぶだけで済む。それが本当に実用に耐え得るものなのかどうかは、あくまでデータサイエンティストがテストデータで試して確かめる形で運用しているという。

photo DataRobotの画面

DataRobot導入で、広告投資を最適化

 LIFULLがDataRobotで成果を上げた例としては、広告費配分の最適化などがある。主にWeb広告でROIを最大化する投資の方法を検討しているそうだ。各チャネルへの投資シミュレーションを行い、どのような配分だと効果が高いのか、予測モデルを作成するのだという。

 賃貸についてはどうか、不動産売買についてはどうか、など、およそ50個ほど見るべき指標があるため、約50個の予測モデルが出来上がる。これだけであれば、別に人間がやってもいいのかもしれない。しかし、Web広告のトレンドは動きが激しい上、ヒットする商材は時期によって大きく変化する。その都度、予測モデルを改めるのは人力では厳しい。

 「賃貸物件は年度が変わる直前の2月や、3月に大きく動きます。賃貸と売買だって同じモデルになりませんし、一括でモデルを作るのが非常に難しいんです。DataRobotは複数のモデルから一番良いものが選ばれるので、細かな場合分けにも対応しやすい。また、毎月や半年といった期間で定期的に自動で更新するようにスクリプトを組んでおけば、外的要因が変化したとしても対応できます。Web広告のような変化の激しい分野には適しているでしょう」(椎橋さん)

 もちろんDataRobotにも得手不得手はある。値の予測や二択の判定に置き換えられる問題であれば、DataRobotで扱いやすいそうだ。不動産業界であれば「物件を見たユーザーが問い合わせをするかどうか」という問いだと考えれば分かりやすいだろう。

 「弊社が掲載している物件は約700万件あります。各物件の情報における、価格や駅からの距離といった数値や、テキストや写真の有無といった要素が、物件の問い合わせ確率とどれだけ相関があるのか分かれば、「いい物件」の条件が分かる。つまりは、問い合わせの確率を高める方法を予測できるのです。写真の効果を確認できれば「どんな写真を何枚用意すればいい」といったこともシミュレーション可能ですし、Webへの掲載方法や不動産投資のアドバイスにも生かせるはずです」(椎橋さん)

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