「理想ドリブン」で考える――世の中に新しい価値を生み出す秘訣「3か月」の使い方で人生は変わる(1/2 ページ)

「クラウド会計ソフト freee」を開発するとき、創業メンバーは「専門知識がないから難しい」などとはは考えず、開発するうえでの理想的な状態を考えたという。新しい価値を世の中に生み出すとき、鍵となるのは、経験ベースや現実ベースではなく、理想ベースで考えてみること。そのために必要なマインドセットとは。

» 2018年08月09日 07時00分 公開
[佐々木大輔ITmedia]

この連載は

 本連載は、freee創業者・代表取締役CEOの佐々木大輔著、書籍『「3か月」の使い方で人生は変わる Googleで学び、シェア1クラウド会計ソフトfreeeを生み出した「3か月ルール」』(日本実業出版社刊)から、一部を抜粋、編集しています。

 「何かをつかめる、何かが変わる」そういう感触を得られるのが「3か月」という時間で、そこで「1つのテーマ」に取り組むことを繰り返すことで、誰でもイノベーションを起こせる可能性が開けると、本書で著者は説いています。

 本連載では、そのエッセンスを、7回に渡って紹介します。


■書籍『「3か月」の使い方で人生は変わる』からエッセンスを紹介


理想ベースで“枠”を大きく

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 最初は「理想」をベースにする。

 多くの人は「今の自分にできること」をベースにものごとを考えがちである。「これしかリソースがないから、こういうことしかできない」という発想のように。

 しかし、「本当はこれがしたい。そのためにはこれだけの人やお金が必要だ」などと、まずは理想ベースで考えてみることが大事だ。なぜなら、「今できること」だけを基準に考えると、「発想の枠」がどうしても狭くなってしまうからだ。

 理想的な状態にするために、まずは本当はどうするのがベストなのかを考えてみる。このことをfreeeでは、「理想ドリブン」と呼んでいる。「理想ドリブン」もfreeeの価値基準の1つだ。新しい価値を世の中に生み出すとき、「マジで価値ある」と同じく、とても役に立つ考え方だと思っている。

 「クラウド会計ソフト freee」を開発するとき、「会計業界の慣習は、30年間も変わっていないのだからやめておいた方がいい」と周りから言われた話は先にした通りだ。ただし、そのとき僕たちは、「自分たちには会計に関する専門性がないから、イノベーションを起こすようなソフトを開発するのは難しい」などとは考えなかった。むしろ、開発するうえでの理想的な状態をまずは考えた。

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 創業当初は、ソフトの開発が何より優先すべき課題だったので、とにかくスピード感をもって開発にあたる必要があった。そのため、理想的な状態は「創業メンバーの僕を含めた3人全員が、エンジニアになる」ことだった。

 CTO(Chief Technology Officer /最高技術責任者)の横路(よこじ)は、もともとエンジニアだったが、Web開発の経験はなかったので、一生懸命勉強しながら開発をしていた。

 もう1人の平栗は、プログラミングとはそれまで縁遠い人間だった。彼は、ロースクールを出て司法試験に3回落ちて、ニートをしたあとに、freeeに入ってきた人物だ。もし、「できること」をベースに考えるなら「プログラミングができないから、お茶でもくみます」とか「法務担当になります」という展開になっただろう。

 でも、それは理想的な状態ではなかった。ソフトウェアの開発というミッションをいち早く完了させるには、全員がエンジニアとして即戦力になるのがベストだった。だから平栗も、プログラムが書けるように自然と猛勉強を始めた。当時の経歴からはとても考えられないけれど、その後、彼は開発部門を統括する責任者にもなった。

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