キーボードやアンプがルーターになる未来を見据えて――日本のユーザーニーズを満たし続けるヤマハが解決するクラウド時代の3つのネットワーク課題とは

日本のユーザーニーズを満たした製品づくりで、拠点ネットワークや中小規模ネットワークで人気のヤマハのネットワーク製品がクラウド対応を強化している。クラウド時代に顕在化してきた拠点ネットワークの3つの課題とは何なのか。

» 2018年08月20日 10時00分 公開
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サーバのクラウド移行が先行し取り残される拠点ネットワーク

 日本のユーザーニーズを満たした製品づくりで、拠点ネットワークや中小規模ネットワークで人気のヤマハのネットワーク製品がクラウド対応を強化している。ルーター「RTX」シリーズや、スイッチ「SWX」シリーズ、無線アクセスポイント「WLX」シリーズといった主要製品の機能を強化し、ユーザーの間で急速に高まるクラウド活用のニーズに応えている。

 背景にあるのは、ここ1〜2年の間の国内におけるクラウドサービスの急速な普及だ。2018年7月に総務省が公表した「平成30年版 情報通信白書」には、そのことがはっきりと表れている。白書によると、5年前の2013年には「全社的に利用している」と「一部の事業所または部門で利用している」を併せた割合は33.1%だった。それから年3〜5%の増加率で増えていき、2016年には46.9%に達したが、注目なのは2017年の数字だ。2017年は前年から10%も増加し、56.9%に達している(第5章第2節:PDF)。

ヤマハ 音響事業本部 事業統括部 SN事業推進部 ネットワークマーケティンググループ 主事 奥田審一氏

 こうした一段高の変化は、ヤマハの製品開発の現場でも感じることができていたという。ヤマハの製品の中でもルーターは、多店舗展開する流通小売業や、販売拠点を全国に持つサービス業で特に人気だが、そうしたユーザーから「拠点側からクラウドに直接つなげないか」といった要望が数多く寄せられるようになっていたのだ。ヤマハ 音響事業本部 事業統括部 SN事業推進部 ネットワークマーケティンググループ 主事の奥田審一氏はこう説明する。

 「現場で何が起こっているかというと、本部側のサーバだけが先行してクラウドへ移行してしまう一方で、店舗や拠点側のリアルなネットワークはそのまま残り続けるということです。この状況下で例えば、本部側のネットワーク機能が中継点として残ったり、取り残された拠点側のリアルネットワークの一部がクラウドへ接続できなかったりなど、さまざまな課題が生じているのです」(奥田氏)

 クラウド移行の対象が、業務システムやバックオフィス系のシステムにまで広がってきたことは、情報通信白書からも分かる。これまでクラウド利用と言えば「電子メール」「社内情報共有・ポータル」「スケジュール共有」などだったが、ここにきて「ファイル保管・データ共有」「サーバ利用」「データバックアップ」「給与、財務会計、人事」などの利用が増えてきているのだ(平成30年版 情報通信白書 第5章第2節:PDF)。

 奥田氏が指摘する課題も、まさにこうした分野に関わるものだ。さらに、流通小売業やサービス業などの既存のヤマハユーザーだけではなく、大企業の拠点や文教、公共からの問い合わせも増えている状況だという。

クラウド時代に顕在化してきた拠点ネットワークの3つの課題

 具体的には何が課題になっているのか。ユーザーの声や実際に対応した事例などをまとめると大きく3つに整理できるという。

 1つ目は、導入に関する課題だ。これは、そもそも拠点システムをクラウドにつなぐことが難しかったり、設定に手間がかかったりするということだ。本部のサーバがクラウドに移行すると、これまでと同じようにネットワークを構成することは難しくなる。

 例えば、AWSなら、本部側1カ所であればクラウド側と仮想プライベートネットワーク(Amazon VPC)や専用線(AWS Direct Connect)で接続し、これまでのデータセンター側のセンタールーターが担ってきたアクセスに関する機能をAWS側で実装すればよい。

 しかし、全国に数十、数百とある拠点や店舗でこうした接続環境をひとつひとつ構築していくことは簡単ではない。特に、POSシステムと業務サーバしかないような小規模な拠点では、PCを操作してAWSの管理画面を開いてアクセスキーやシークレットキー、VPN接続の設定情報などを入力するのは大きな手間だ。店舗や拠点のスタッフだけでこうした作業を行うことは、現実的には難しい。

 2つ目は、運用管理の課題だ。これまでのように、一度ネットワーク環境を構成してしまえば、しばらくはそのまま固定的な運用ができたのとは異なり、クラウドサービスによる多様化によって変更の多いネットワーク運用が求められるようになってきている。また、拠点が多いほどネットワークの管理は大きな課題となる。

 例えば、アクセス設定の作業を本部スタッフやパートナーなどが行うにしても、キーなどの接続情報をどう管理するかは大きな課題となる。クラウドの設定は、「一度済ませれば数年間は変わらない」ということはほとんどない。クラウドサービスの機能が増えて設定情報が追加される場合もあれば、クラウド側のシステム更改などで設定情報そのものが変わることもある。

 利用するクラウドサービスが増える場合もある。クラウドが増えれば、その分設定情報も増える。それらを適切に管理していくのは現場にとっては大きな負担だ。環境が複雑になれば、ルーターやルーターに接続されているクライアントデバイスの管理も必要になる。

 さらに、クラウドを活用したビッグデータ分析やIoTなどの取り組みも増えており、それらのデバイスや設定も含めて管理できるようにしたいというニーズがある。

 3つ目は、柔軟性の確保だ。柔軟性というのは、デジタルビジネスを推進していく上で、ネットワーク構成を素早く変更したり、これまでは難しかった機能を追加したりすることだ。また、QoS(Quality of Service)を管理したり、アプリケーションを可視化したりといったニーズも増えている。これらは、これまでハードウェアで実装してきた機能をソフトウェア化して、SD-WAN(Software Defined-WAN)として新しい機能を提供することも含まれる。

ルーターからさまざまなクラウドサービスに簡単に接続できる

 ヤマハでは、こうした導入、運用管理、柔軟性確保という3つの課題に対して、それぞれ「リアルネットワークをクラウドにつなぐ」「ネットワークがクラウドから見える」「ネットワークをつくる」をテーマに取り組みを強化している。それぞれについて、どんなアプローチをしているのかを見ていこう。

 まず、「リアルネットワークをクラウドつなぐ」では、ヤマハのルーターからさまざまなクラウドサービスに簡単に接続できるような設定を追加している。もともとヤマハルーターは、コマンドを使うことでAmazon VPCやAWS Direct Connectなどに接続できることは検証されていた。ただ、「実際につながるだけ」なのと、「誰でも簡単につなげられる」のでは、現場への展開方法は大きく異なる。

 「Webサイト上で相互接続の検証結果や設定例を公開するなどして、ネットワーク担当者が簡単に導入できるようにしました。さらに、クラウドサービスごとに、簡単に設定を済ませることができる画面も用意し始めました。例えば、RTX1210、RTX830では、AWSへの接続を自動で設定できる機能を開発し提供しました」(奥田氏)

AWSへの「かんたん設定」

 AWSへの自動接続機能は、「アクセスキーID」「シークレットアクセスキー」「VPN ID」を入力し「リージョン」を選択するだけで、Amazon VPCに接続できるというものだ。設定も簡単で、ルーターの管理画面から「かんたん設定」を選び「VPN」の中の「拠点間接続」「リモートアクセス」「クラウド接続」から、クラウド接続を選択するだけでいい。

 かんたん設定は、AWSの他にも、富士通クラウドテクノロジーズが展開する「ニフクラ」版を開発中だ。また、「Oracle Cloud Infrastructure」や、さくらインターネットの「さくらのクラウド」、中国のアリババグループが展開する「Alibaba Cloud」についても接続検証をしており、かんたん設定の対応も予定している。これらの機能強化は、ファームウェアのアップデートで対応しており、順次、対応クラウドサービスを追加していく予定だ。

クラウド上からネットワーク機器を一元管理

 2つ目の「ネットワークがクラウドから見える」については、ヤマハが新たなサービスとして提供した「Yamaha Network Organizer(YNO)」がある。YNOは、ヤマハのネットワーク機器の監視、管理をクラウドベースで実現するネットワーク統合管理サービスだ。

 「クラウドとの相互接続検証の提供やルーターかんたん設定機能を利用することで導入時のネットワーク管理者の負担を軽減できます。ただ、問題は運用管理です。各拠点に設定情報を安全に配布したり、どんなデバイスがあるかを調査し把握したりしていくことが大きな負担になっています。新しい取り組みをしようとしても、その負担が大きいことが取り組みの足を引っ張っている面もあります」(奥田氏)

 YNOを使うことで、ネットワーク機器の情報を全てクラウド上で管理するため、設定情報を持ち歩くことなく、安全に一元管理できるようになる。また、複数の機器設定を変更するなどの作業もYNOのWeb管理画面上で簡単に行えるため、ネットワーク管理者の負担を大きく軽減できる。

 またYNOでは、基本的にローカルにあるヤマハのルーターでできる設定は全てクラウドから行える。特にユニークなのは「GUI Forwarder」だ。これはヤマハルーターの管理画面そのものをYNOの管理画面にフォワードし、そこから設定の確認や制御を可能にするものだ。

GUI Forwarder機能

 例えば、ヤマハルーターの中でも便利な機能の1つに「LANマップ」がある。ルーターに接続しているデバイスの情報を、ARP(Address Resolution Protocol)テーブルやMAC(Media Access Control)アドレスなどからエージェントレスで自動収集するもので、PCやサーバだけではなく、複合機やタブレット、スマートフォン、IoTデバイスなどをツリー表示で可視化できる。つまり、離れた拠点のルーター配下にあるスマホやIoTデバイスなどをクラウド上から簡単に把握できるわけだ。

 この他「ゼロコンフィグ」も有益だ。ルーターの設定情報などをクラウドに保存しておき、拠点でのネットワーク構築や設定変更があった場合に、その情報を自動で設定できる。設定の際には、インターネットに接続し、「プレースID」を指定するだけでよい。ネットワーク機器の事前のキッティングや現場での設定、確認作業も不要になる。

ゼロコンフィグ機能

ヤマハが考える「SD-WAN」と今後の展開

 3つ目の「ネットワークをつくる」は、いわゆるSD-WANとしての展開だ。SD-WANに対してはさまざまな考え方があるが、ヤマハでは「変更のスピード」「スケーラビリティ(設定変更の柔軟性)」「多拠点への配布」といった特徴を備え、WAN側の柔軟な運用を実現して回線を常に最適な状態にすることを「SD-WAN」と捉えている。

 「こうした特徴を実現していくためには、クラウド側の基盤だけではなく、拠点側でのルーターやスイッチ、無線アクセスポイントの存在が重要です。すでにYNOの機能としてゼロコンフィグなどを提供していますが、今後は、アプリケーション単位での細かな設定を多拠点展開で利用できるような機能を提供していく予定です」(奥田氏)

 具体的には、パケットを解析するDPI(Deep Packet Inspection)技術を使って通信内容を振り分け、特定のアプリケーションの遮断やQoSの帯域制御、特定のアプリケーションを直接インターネットへ接続するといったことだ。

 例えば、Office 365などのアプリケーションは、サービスを提供するドメイン名が頻繁に変わるため、ルーターやスイッチ側で適切に経路を制御することが求められる。また、動画やWeb会議などのアプリケーションは帯域に影響を与えやすくQoSでトラフィックを制御することで影響範囲を制限することが求められる。

 「クラウドを使ったビジネスが増えていくほど、ネットワークの役割は重要になっていくと考えています。クラウドにつないで、可視化して管理できるようにするだけではなく、クラウドをうまく使うという観点から新しいサービスを展開していきます」(奥田氏)

 SD-WAN戦略の中では、ヤマハのルーターを仮想ルーターとして提供することも進めている。仮想ルーターとしてクラウド上でそのまま動作するようになれば、店舗や拠点ルーターとクラウド上の拠点ルーターをVPNでつなぐといったこともより簡単になる。もちろん、ヤマハルーターが備えるさまざまな機能をクラウド上で実行することもできるようになる。さらに、クラウドのリソースを活用することで超高速なルーターを構築することや、大量のルーターによる並列分散処理なども可能になる。

 「国内のユーザーが使いやすい、日本のシステム環境に即したSD-WANを構築していきます。その意味では、現場の声を取り入れながら実用性追求を目指すのがヤマハ流のSD-WANです。将来的には、IoTであらゆるモノがつながっていき、モノ自体がルーティングの機能を備えるかもしれません。例えば、仮想ルーターの先には、キーボードやアンプといったこれまで想像もしなかったデバイス上で動くルーターすら考えられます。夢を持ちながら、現場に即したサービスを提供していきます」(奥田氏)

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2018年9月19日