社員を労働集約的な作業から解放し、ビジネスにイノベーションを起こす「Intelligent Enterprise」とは何か

2018年6月に開催されたSAPの年次カンファレンスイベント「SAPPHIRE NOW 2018」では、SAP HANAとSAP Leonardoで提供される次世代テクノロジーを統合し、顧客を統合的にリアルタイムで把握するための「Intelligent Enterprise」というコンセプトが改めて強調された。このIntelligent Enterpriseは、企業にどのようなメリットをもたらすのか。

» 2018年08月24日 10時00分 公開
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「Intelligent Enterprise」とは

Photo SAPジャパン バイスプレジデント チーフカスタマーオフィサー 兼 デジタルエコシステム統括本部長の大我猛氏

 モバイルやクラウドの利用が当たり前になり、企業はいまやSNSやIoT機器、各種センサーを通じて膨大なデータを取得できるようになった。こうして集まったデータは“第4の経営資源”ともいわれ、ビッグデータの活用は企業にとっての喫緊の課題となっている。

 しかしながら、いまだ多くの企業がせっかく手に入れた膨大なデータを十分に生かせていないのが現状だ。企業のデータ活用については、「できている」と回答した企業が、わずか0.5%しかないという調査結果もあるほど。さらにIoT時代には、企業内のあらゆるところに点在するデータを集約するのも一苦労で、それが迅速な経営判断を阻んでいる。

 こうした中、「改めて企業のデータ活用を推進したいという考えから生まれたのがIntelligent Enterprise」と話すのが、SAPジャパン バイスプレジデント チーフカスタマーオフィサー兼デジタルエコシステム統括本部長の大我猛氏だ。

 Intelligent Enterpriseは、AIやIoT、ブロックチェーンなどのインテリジェントな技術を使って「ERPの前後にあるプロセス」も含めて連携させ、ビジネスに新たな価値をもたらそうというSAPの新構想。既にパートナー企業がさまざまな分野のソリューションを開発しており(参考リンク1234)、作業の自動化や業務プロセスの高度化に貢献するという。

 「インテリジェントスイート」と「デジタルプラットフォーム」、そして「インテリジェントテクノロジー」という3つの要素で構成され、これにより企業の全てのプロセスにおいて先進的なIT技術を活用できる。ERPにおいては、情報を集約する際に労働集約的な作業が発生することが多く、それが迅速な経営判断のボトルネックになることが少なくない。こうした課題を解決するソリューションを提示することで、これまでERPの導入に及び腰だった中堅中小企業にもアピールできると大我氏は胸を張る。

Photo 新技術によってビジネスプロセスのインテリジェント化を目指すのがIntelligent Enterpriseのコンセプト
Photo Intelligent Enterpriseのビジョンを具現化するソリューション

リアルタイムなインテリジェントの活用で「迅速な意思決定」を支援

 Intelligent Enterpriseについて、「単にERPにレポーティング機能が付くのとは違う」と話す大我氏は、受注から入金に至るプロセスを例に挙げて具体的な利用イメージを説明する。このプロセスでは、さまざまなタイミングで人による意思決定が必要になるが、例えばそこに機械学習の技術を組み込んで、人が行う意思決定を支援するような使い方を想定している。

 実際、SAP Cash Applicationでは、経理担当者がマニュアルで行う作業に機械学習を適用することで予測を行い、その結果を用いてプロセスを自動化したり、判断のための候補を自動で提示したりすることが可能になるという。これにより、例えば売掛金と入金の突合の精度を高めて、入金消し込み処理の負荷を大幅に軽減できるという。

 「入金では複数の請求が1本にまとめられていることも多く、請求金額と入金金額が一致しないものや、銀行からの入金名と請求名が一致しないものもある。経理担当者は毎月これらを一つ一つ確認し、消し込み処理を行っており、数百件、数千件といった規模の請求書があれば、この作業は膨大になる。この消し込み処理にCash Applicationの機械学習機能を適用した結果、94%の入金について自動で消し込み処理ができたという事例もある」(大我氏)

Photo 受注から入金に至るプロセスにおけるIntelligent Enterprise

 Intelligent Enterpriseは、人事領域でも効果が見込めるという。採用業務を行う人事部門では、膨大な応募書類を人が確認して候補者を絞り込んでいるが、機械学習を使えば、応募書類のデータを学習して自社が必要とする人材を自動で絞り込むことが可能になる。選ばれた優先度の高い応募書類を担当者が精査することで、迅速かつ精度の高い人材採用活動が行えるというわけだ。

 「業務プロセスの中には、かなり多くの繰り返し作業がある。それを楽にするのがIntelligent Enterpriseの役割だ」と大我氏。自動化によって空いた時間やリソースを、新たな価値を生む領域に投資することで、企業のデジタル変革が大きく進むという。

 繰り返しの作業をなくすことで、従業員は労働集約的な作業から解放され、それが働き方改革の進展にもつながる。顧客対応についても、納期の問い合わせに対する返答などが速くなることから、顧客体験の向上も期待できると大我氏は自信を見せる。

Photo

全てのビジネスプロセスにリアルタイムのインテリジェントを提供

 これまでのデータ活用については、多くが「見える化」や「見せる化」にとどまっていると大我氏は指摘する。例えば、さまざまな情報を可視化して経営層にダッシュボードで見せても、それだけでは現場レベルのスタッフをタイムリーに動かすような経営判断や施策にはなかなか結び付かないという。それは、日本においては現場のミドル層がリアルな課題を把握しており、そこに対して情報が行き届いていないことが課題になっているからだ。

 Intelligent Enterpriseでは「効果を最も享受できるのは、現場レベルのミドル層。トップの意思決定支援はもちろん、さまざまなビジネスプロセスの中で日常的に多くの意思決定を行っている人を支援できる」と大我氏。現場のリーダー層がデータに基づいて挙げた課題を経営層が吟味し、優先順位をつけて解決に当たる――というプロセスを組みやすい点も、Intelligent Enterpriseの大きなメリットといえる。

Intelligent Enterpriseは中小規模の企業にこそメリットがある

 ERPで企業のビジネスプロセスを連携し、正確なデータをリアルタイムで確認できるようにして、さらにプロセスをスムーズに回す――。これは、SAPが創業以来取り組んでいることであり、今後もこのアプローチは変わらない。これまではERPの領域でこのアプローチを洗練させてきたが、今後はIntelligent EnterpriseによってERPの前後にあるプロセスも含めた連携を実現することで、新たな価値の創出が可能になるはずだ。

 こうしたIntelligent Enterpriseの価値は、ともすれば大企業のものと思われがちだが、「IT化していないプロセスが多い中小規模の企業にこそ、より多くのメリットがある」と大我氏はいう。「IT化が進んでいない企業ほど、デジタル化に着手してインテリジェントを加えれば、プロセスの自動化や高度化によるメリットをすぐに享受できる。人手不足も中小企業のほうが深刻であり、Intelligent Enterpriseによる自動化が進み、働き方が変わることによる課題解決の効果は大きい」(大我氏)

 今後もSAPでは、顧客の声に耳を傾けながらIntelligent Enterpriseを進化させていく考えだ。もちろん、「日本企業や業界独自の要望にも応えていく」と大我氏。「日本企業の要望を反映させていくためにも、リソース不足で困っている中小規模の企業に、ぜひIntelligent Enterpriseを活用してほしい。ベースとなるソリューションをパートナー各社が提供している(参考リンク1234)ので、自社の業務に合ったものがあるかご覧いただきたい」(大我氏)

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2018年9月26日