高級ファッション専門店「バーニーズ ニューヨーク」のIT活用 そのカギは、情シスと総務のゆるい連携情シスの相棒は総務だった!? 会社を救う最強タッグ(2)

「情シス」と「総務」。同じ管理部門でありながら、会社が大きくなればなるほど、足並みがそろわなくなるのが一般的だ。しかしバーニーズ ジャパンでは、情シスと総務の“ゆるい”連携で、ITによる業務効率化を進めている。

» 2018年08月27日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]
PR

シリーズ:情シスの相棒は総務だった!? 会社を救う最強タッグ

 ITのコモディティ化により、情報システム部門に求められる役割が、ビジネスへの貢献や社員の業務改善といった方向へとシフトしています。このシリーズでは、情シスと現場、特に全社とのつながりを持つ総務とがタッグを組むことで、会社を変えるだけの力が生まれる――そんな事例を紹介していきます。

 情報システム部門と総務部門は、同じユニットで動くことも多いが、会社の規模が大きくなると別の部署に分かれることも多く、足並みがそろわなくなるのが一般的だ。それどころか、生産性を高めたい「総務」と、セキュリティで縛りたい「情シス」といった形で、対立してしまうことすら少なくない。

 しかし、会社の規模が大きくなっても、情シスと総務がうまく連携している企業もある。米国のスペシャリティストア「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」を日本で展開するバーニーズ ジャパンもそんな1社だ。600人を超える従業員を抱えながら、情シスはたったの3人。それでも、総務との「ゆるい」関係が互いの業務を補い合い、さまざまな施策を実現している。

photo バーニーズ ニューヨーク銀座本店

バーニーズ ジャパンの“業務効率化担当”が生まれた理由

photo バーニーズ ジャパン 総務人事デパートメント ディレクター 佐藤領さん

 同社で総務人事の責任者を務める佐藤領さんは、自部署の業務をはじめとして、生産性の向上と効率化を進めることをミッションとしている。直近では、店舗業務やバイヤー部門の業務を総務で引き取ることで、工数の削減に成功したそうだ。

 「バーニーズ ニューヨークは店舗の規模が大きいこともあり、各店に総務担当がいます。そのため、店舗に来る請求書の処理などは彼らが行っていました。しかし、うちは取引先も多いですし、店舗にかかる負荷が重かったため、本社の総務でまとめて引き受けることにしたんです。単に引き受けるだけでは、今度は本社側のリソースが厳しくなるので、並行して自動化も進めています。今後はRPAを使った自動処理システムの導入も検討しています」(佐藤さん)

 過去には、各店舗で受けていた顧客対応の電話を、カスタマーセンターを作って一元化した経験もあるという佐藤さん。カスタマーセンターに届いた連絡は、共通のWebデータベースに登録し、回答とともに各店舗に通知される仕組みを作り上げた。店舗のオペレーションを大きく変えることになったものの、移行は比較的スムーズに進んだという。

 「カスタマーセンターを通すことで、お客さまにもメリットがあるんです。店舗で電話を受けると、そのたびにスタッフは接客を止めることになります。問い合わせのあった内容について調べ、折り返すという作業にかかる時間もばかになりません。

 一方、カスタマーセンターで応対し、回答を準備した上で店舗から折り返せば、スタッフの電話は1回ですみます。お客さまも、早く確実な回答がもらえるほうがうれしいですよね。サービスの向上につながることが分かりやすかったため、スムーズに移行できました」(佐藤さん)

 会社全体という視点で、より効率が良い方法を模索し、日々実践する佐藤さん。アナログなイメージの強いファッション業界で、こうしたIT活用を進められるのは、前職での経験が生きているからだと話す。

 佐藤さんはもともと、東京・秋葉原にあるベンチャー企業に勤めていた。創業社長の“自分たちでやれることは何でもやる”というスタンスで、ITへの感度も高かったという。その後、バーニーズ ジャパンに移った佐藤さんは、総務や人事などのポジションを経験していった。

 「当時バーニーズ ジャパンは、将来に向けて内部統制の強化を図っていたこともあり、ルール作りや仕組み作り、業務プロセスの見直しが入社時のミッションでした。その後経営企画に異動し、店舗のルールブックを作ったり、従業員の教育を行ったりしていました。そして、5年ほど前に人事制度の改定に合わせて人事のマネジャーになり、今はまた総務人事に戻ってきました。店舗のオペレーションに詳しくなりましたし、業務の見直しについては、社内でも得意な方だと思っています」(佐藤さん)

社内の共有情報を「双眼鏡」で見ていたオフィス

 実際、佐藤さんが転職した当時は1台のPCを複数の人で使っていたり、ホワイトボードで情報共有をしていたりと非常にアナログな環境だったという。過去には、スケジュールや掲示が書かれたホワイトボードを、双眼鏡で確認する社員もいたことに驚いたという佐藤さん。

 そのような状況を変えるため、バーニーズ ジャパンでは、グループウェア導入による情報共有や業務効率化を目的に「サイボウズ Office(※)」を導入。スケジュール管理やスタッフのシフト情報、全社のお知らせなど、あらゆる情報が各自のPCから確認できるようになった。(※現在は上位版である「サイボウズ Garoon(ガルーン)」を利用している)

 「例えば、カスタマーセンターに社員への問い合わせがあったときにも、各店舗の出勤状況をすぐに確認できますし、急な欠員が出た際のシフト調整もスムーズになりました。他にも、商品の見本画像や各店舗のディスプレイなどを共有するなど、店舗同士や本部との情報共有にも活用しています。社外向けのメールはGmailを使っていますが、社内は全てGaroonに統一しました」(佐藤さん)

 社員の中には、海外で商品の買い付けを行うスタッフもいる。時差がある中でも素早く情報交換を行うには、メールよりもスレッド式のコミュニケーションの方が使いやすい。ITリテラシーを今まで必要とする機会が多くなかったスタッフもいるが、それでも社員同士、活発にコミュニケーションを取っているという。

photo バーニーズ ジャパンでは「サイボウズ Garoon」で商品のディスプレイ方法などを共有しているという

情シスと総務の“ゆるい”連携プレー

photo バーニーズ ジャパン 経営企画デパートメント システムチーム チーフマネージャー小林博さん

 このように、社内でさまざまな施策を進める佐藤さんだが、その全てを1人で行っているわけではない。プロジェクトを進める際には、システム部門のマネジャーを務める小林博さんに、相談やアイデアを持ち掛けるのだという。

 システム部門は、基幹系を含めた既存システムの運用保守やリプレースを中心に業務を行っているが、相談を受けた際には、必要なサポートを行いつつ、協力会社とともにシステムの検討やテストを行うこともある。さまざまなアイデアを持ちかけてくる総務のことをどう思っているのだろうか。

 「いろいろと相談を受けますが、そんなに大変だと思ったことはないですよ。昨今は人材の確保が難しい時代なので、業務効率化を進めるのは当たり前だと思っています。人がやらなくていいことはシステムがやるべきですが、システムが全部できるかというとそうではありません。情シスは『どこまでをシステムがやり、どこまでを人間に任せるか』というバランスを取る役なのかなと思います」(小林さん)

 最近では、RFIDを使って店内にある棚、ショーケース、テーブル、アクリルボックスといった什器(じゅうき)の棚卸しを効率化できないかというテストも行ったという。総務から、年に1回の棚卸しにかかる労力を削減できないか、という相談があったためだ。精度やコストの問題からいったん見送ることになったが、「簡単に実施できるものであれば、すぐに試してみる」というのが小林さんのスタンスだ。

photo

 総務が一部、情シス的な仕事を請け負っている箇所もある。その代表的な例が、社員に貸与しているスマートフォンの管理だ。これはシステム部門ではなく、総務部門が行っている。

 「もともと、社用携帯がガラケーだったころの流れで、iPhoneになった今もそのまま管理してもらっているという感じです。私としては、スマホもPCも昔で言うノートと鉛筆のような“備品”という捉え方でもいいんじゃないかと思っています。もちろん、中に入っている情報を管理する必要があるので、簡単なことではありませんが、技術が進歩すれば、いずれそういう潮流になるんじゃないかと思います」(小林さん)

 一般的に情報システム部門がスマートフォンを管理しようとすると、セキュリティなどの観点から利用に制限をかけてしまいがちだ。バーニーズ ジャパンのように、総務が管理をする場合、現場の使いやすさを優先する傾向がある。実際に同社では、社内情報にアクセスする端末は証明書で認証をかけるといった対策はしているものの、使い方に細かな制限はないという。

 「システム全般にいえることですが、基本的にはやってはいけないことだけを決め、あとは自由に使えるようにしたほうがいいと考えています。現場の社員が予想もしていなかった使い方をして大きく効率が上がる、というケースはよくありますし、『この用途でしか使っちゃダメ』というような制限はかけないようにしています」(佐藤さん)

 「もちろん、個人情報などが絡むところは、情シスががっつり入り込んできちんとセキュリティ対策を行いますが、それ以外の部分では、使い勝手のいい業務改善ツールなどは、どんどん入れて、自由に使ってもらって構わないと考えています。自分たちで開発するとなると大変ですが、外部のツールやサービスを新しく入れることはそんなに難しいことではないので」(小林さん)

どうサボれるかを考える 「業務効率化はライフワーク」

 バーニーズ ジャパンでは、仕事の割り振りも含め、情報システム部門と総務の線引きは「あいまい」だ。しかし、そのおかげもあって、互いに業務を補完しあい、フラットな関係で仕事を進めているという。よくシステム部門に相談を持ち掛ける佐藤さんも「システム部門の人は人当たりがとてもいい。とても大事なことだと思います」と話す。小林さんも、今後は業務をシステム化するための相談が増えると考えているようだ。

 「佐藤のような人は、システムが人間に代わってできそうなことを日々考えていますが、他の人もだんだんと『これってシステムでできるのかな』という発想が増えてくると思うので、今後はシステム化の相談も増えてくるのではないかと。もうすぐWindows 7のサポートも終わりますし、消費税も変わるのでやることはたくさんあります。これからが大変ですね」(小林さん)

photo

 佐藤さんはこれからもIT活用を通じて、全社の業務効率化を進めていく考えだ。「業務効率化はライフワーク」――。そう語る佐藤さんにとって、前向きに相談に乗り、共に動いてくれる情シスは心強いパートナーなのだろう。

 「自分は同じ仕事を繰り返しやることが苦手な人間なんです。同じ業務をしているとどうサボろうかということばかり考えてしまうんですよ(笑)。業務効率化は、もはやライフワークであり、この会社にいるアイデンティティーのようなものですね。

 これからAIなどの技術が進歩すれば、定型業務のほとんどは機械に取って代わられるでしょう。逆に人間は、企画や仕組みを考える仕事をやっていかないと、会社として成長できません。ありがたいことに自部署のメンバーは、コツコツ行うような仕事が得意なので、自分みたいな人間がいて、ちょうどバランスが取れているのではないかと思います」(佐藤さん)

 業務改善やシステム導入を情シスだけが背負う必要はない。どの部署にもITのセンスがある人や、業務を効率化したいと願う人はいるはずで、彼らは情シスの力を求めている。総務と情シス、両者がタッグを組むことで、会社を変えるだけの力が生まれる――佐藤さんと小林さんの「ゆるい」関係はそんなヒントが詰まっているように感じられる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:サイボウズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2018年9月26日