日本企業は今こそ、手を組んでチャレンジに打って出るべき――カインズ 代表取締役社長 土屋裕雅氏長谷川秀樹のIT酒場放浪記(4/4 ページ)

» 2018年09月16日 07時00分 公開
[やつづかえりITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

第一線で活躍する人との出会いで、未来の日本を背負う世代に“化学反応”を

土屋: 大企業とベンチャーが組んでうまくいくことが少ないのも、大企業の方が一方的に良いとこ取りをしようというような姿勢があるからじゃないでしょうか。

 カインズは大企業というわけではないですけど、ベンチャーでないのも確かなので、大都とはいい化学反応を起こしたいですね。大都もカインズも、今まで持っていなかったようなことを生み出して、世の中にインパクトのあるようなことができたらと、本当に思っているんですよ。

長谷川: IT企業宣言をされたということですが、これからの小売業はどういう方向に行くべきだと思われますか?

Photo

土屋: 先日、イオンの岡田さんが「Amazonに学ぶべきところがあったと反省している」とコメントされているのを見ましたが、それは小売業全般にいえることかもしれません。Amazonが全て良いというわけではないですが、自分たちのお客さんがどういう人たちで、何を求めているか、もう一度、真剣に考え直す時期だろうと思います。

長谷川: ECに関しては、小売業のプロほど誤っていた面があるんですよね。AmazonがCDや本を売るのはみんな納得していました。あれはどれも品質が同じだし、腐りもしないから、と。

 でも、生鮮食品は絶対ない、ファッションも試着しないで買うなんてありえない、みたいなことを、小売業界の人ほど言ってたんですよ。それがもう、ドカーンとやられてしまった。

 だから、自分の経験からくる固定観念で判断してはいけないな、と。

土屋: 全てにおいて安泰ということはないわけですよね。いろんなことがあり得る中で、じゃあ何をするか、を考えることが重要だと思います。

 その中で、やっぱりIT化というか、テクノロジーを使うということ、特にお客さんにとって良いことは何かというところが、アイデア合戦みたいなことになるんでしょうね。

長谷川: 小売業の中で、土屋さんが注目している会社というのはありますか?

土屋: マツモトキヨシさんとか、どんなことをしているのか興味がありますね。

長谷川: なぜですか?

土屋: アウトサイダーだからでしょうか。大手ドラッグの中では、ちょっと違う路線をとろうとされているように見えます。他に気になるところは、やっぱりユニクロさんですかね。

長谷川: ユニクロで注目しているポイントというのは?

土屋: 柳井さんですね。志の高さが素晴らしいな、と思います。彼について読んだ中で、柳井さんが昔、有名なSPAの企業の社長のところに行って話を聞き、「この人にできるんだったら、俺にもできると思った」というエピソードがありました。

 その感覚って、すごく大事だと思うんです。僕自身も、柳井さんにアドバイスをもらったことがあるんですが、もっと早く出会っていたら違ったかもしれない。

 早稲田の授業も、そういう思いでやっているんです。例えば、今の学生が玉塚元一さん(ハーツユナイテッドグループ代表取締役社長CEO、リヴァンプ元顧問、ローソン顧問)に会うことによって、何か化学反応が起こればいいな、と。だから、これからの日本を背負う学生に影響を与える人たちに話をしてもらいたいと思って、僕が「ぜひ」と思う人に講義をお願いしているんです。

長谷川: 「俺にもできる」と、どんどんやってみる若い人たちをつくっていきたい、ということですか。

土屋: そうです。きっかけを早く持ってもらいたい。こういう言い方が良いかどうか分かりませんが、玉塚さんの話とか、「C CHANNEL 」の森川亮さんの話とか、すごいところもあるけれど、「社長だから特別なんだ」というふうに思わないで、「自分と同じ人間なんだ、大したことないんだ」って感じてもらいたいんですよね。柳井さんだってかなり特殊ですけれど、話をしているとすごくよく分かるところもあって、同じ人間だという気がするんです。テクニックというよりは、そういうことを感じてほしいんです。

長谷川: なるほど。僕も今日お話を伺って、カインズさんと一緒にできることとか、いろいろ考えてみたいなと思いました。

土屋: ええ、業界とか会社を超えて、強いものを作っていきたいですね。

長谷川: はい。今日はどうもありがとうございました。

Photo

ハンズラボ CEO 長谷川秀樹氏プロフィール

1994年、アクセンチュアに入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、Twitter、Facebook、コレカモネットなどソーシャルメディアを推進。その後、オムニチャネル推進の責任者となり、東急ハンズアプリでは、次世代のお買い物体験への変革を推進している。2011年、同社、執行役員に昇進。2013年、ハンズラボを立ち上げ、代表取締役社長に就任。(東急ハンズの執行役員と兼任AWSの企業向けユーザー会(E-JAWS)のコミッティーメンバーでもある。


取材・執筆:やつづかえり

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ