山口氏に続いて発表会見で説明に立った日本IBMの吉崎敏文 執行役員ワトソン&クラウドプラットフォーム事業部長によると、企業におけるAIへの取り組みは、これまでの実証実験(PoC)から一部業務で活用する段階に入ってきており、積極的なところではAIを強みにすべく全社で戦略的に活用する方向で動いている。
ただ、そうした企業では、山口氏の冒頭の発言にもあるように、業務部門ごとに複数のAIが使われるケースも見受けられるようになってきた。その状態を表したのが図1である。吉崎氏は、「こうした業務ごとの個別AIシステムになってしまうと、使用するクラウドやデータの活用方法、学習方法などもそれぞれ個別になってしまい、それらへの対応を含めてシステムをどう管理していくかが、新たな課題になってくる」と説明した。
そこでIBMが、その解決策として打ち出したのが「データ&AIプラットフォーム」を採用した図2のような仕組みだ。
実はこのデータ&AIプラットフォームに、IBMの戦略転換が見て取れる。というのは、吉崎氏によると、IBMがこれまでこの部分に提供してきたのは、あくまでWatsonに対応したデータプラットフォームだったからだ。それを「データ&AI」と銘打ち、「さまざまなデータ」と「複数のAI」に対応する形に変えたのである。
では、IBMが提供するデータ&AIプラットフォームとはどのようなものか。図3がその中身である。クラウドサービスの形態に対応した形で、最上部の業務アプリケーションがSaaS、その下のWatson APIからデータ・カタログまでがPaaS、その下のIBM CloudなどがIaaSという構造になっている。ただ、この図だとPaaSはWatsonの環境だけである。
それをマルチAIに対応する環境に広げるべく、日本IBMが今回発表したのがTrust and Transparency capabilitiesである。図3に当てはめてみると、図4のようになるわけだ。これによって「マルチAIの管理」が可能になるのは前述した通りである。
今回はIBMの新製品発表を機に、マルチAIの管理について取り上げたが、企業において業務部門ごとに複数のAIが使われることは必然かもしれない。ただ、IT部門にとって、それらの管理を野放図にしておくのは、データガバナンスの観点からも避けたいところだ。そこに問題意識を持ってもらいたいというのが、筆者からのメッセージである。
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