ブランド戦略から“炎上”対策まで――ホンダが広報にAI導入、その効果は?(2/2 ページ)

» 2018年11月15日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]
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消費者の声を「1300種類」の項目で分析

photo 日立製作所 サービスソリューション本部 デジタルソリューション推進部 担当部長 西脇康人さん。新システム開発を中心となって推し進めた

 新たなシステムで注力したのは、高精度な“感性”の分析だ。徳島大学発のベンチャー企業である、言語理解研究所(ILU)の感性分析AI「ABスクエア」を使い、テキストトデータを話題、感情、意図に合わせて約1300種類の項目に当てはめる分析を行える。特に感情については「好意的」「中立」「悪意的」の3つに分類した上で、文意を考慮し、「満足」「落胆」といった81種類の中から特定するという。

 メンテナンス性の高さも特徴だ。SNSなどでは、頻繁に新しい言葉が登場する可能性があるために、類義語や同義語の更新が欠かせないが、それを人力で行うのは現実的ではない。そこで、新システムでは機械学習を用い、絞り込みに使う辞書を自動更新する機能を備えた。

 「Webクローラーで収集したデータから関連性の高い単語や、専門用語を機械学習で覚えさせていくことで、辞書のメンテナンスを自動化するとともに、絞り込みの精度を高めることが狙いです。ILUには既に数十種類の業種特化型のデータベースがあり、最初から高い精度を期待できるのも特徴です」(日立製作所 サービスソリューション本部 西脇康人さん)

 分析結果を表示するビュワーは、業務部門でも扱いやすいようUIを工夫し、検索機能を充実させた。ネガティブワードが増えた際に自動でアラートが出るなど、リスク対策ツールとしても使えるという。

photo 新システム(感性分析サービス)のデモ
photo ポジティブな反応について、感情を分析したデモ画面

コールセンターに届く声やメールに込められた思いも分析できないか?

 システムが完成したのは2018年3月。翌4月からは広報部が利用を開始した。新車発表やフォーミュラ1、CES(Consumer Electronics Show)といったイベント時の情報露出に対し、消費者のイメージや感情を車種別やトピック別などに可視化しており、レポートを作成する時間が短くなるなど、一定の効果が得られたそうだ。

 「以前のシステムに比べ、欲しい情報にたどり着くスピードがはるかに速くなりました。ストレスなく操作できるので、日々グラフを確認するだけでも知見がたまりますし、他社の情報も分析できるので、競合他社との比較もできます。今はメディア露出の反響を確認することしかできていませんが、将来的には狙った反応が引き出せるような、ブランド戦略に生かせればと考えています」(坂本さん)

 その後、日立製作所は本システムをベースに「感性分析サービス」を発表した。ホンダ側としては、多くのユーザーが使うことでシステムが改善されればいいと考えているという。

 「ユースケースが増え、新たな使い方などが見えてくることを期待しています。ホンダでも、このシステムを全社員が使えるようにしていますし、今後はコールセンターの音声やメールなどのデータでも、同じようなことができないかを検討しているところです」(坂本さん)

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