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» 2018年12月05日 07時00分 公開

システム更新の見積もりが億単位? ならば自分たちの手で 信州ハムはどうやって9カ月で基幹システムを内製したのか (2/2)

[高橋睦美,ITmedia]
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FileMakerにTableauを組み合わせ、データの戦略的な活用へ

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 信州ハムはシステム刷新の取り組みを皮切りに、さらにIT活用の領域を広げようとしている。「システムに集約したデータは、活用してこそその役割を果たす。FileMakerで各工程をつなげるだけでなく、そこから得られるデータをもっと戦略的に活用したい」(小口氏)という狙いから、データ分析ツールの「Tableau」を使った“情報の可視化”に取り組み始めたところだ。

 FileMakerプラットフォームで構築した新生産管理システムでは、日々の生産実績が即座に把握できるようになったが、集計にはやや時間がかかり、グラフ化した場合の表現にも限界がある。そこで、一連のデータをTableauを使って可視化することにより、「増えているのか、減っているのか」「どこにボトルネックがあるのか」といった事柄を直感的に把握できるようにしている。

 今後は、現状では並行して稼働しているオフコンに残っている情報や、Excel、Accessなどを使って各部署で作っていたさまざまなデータも全て、Tableauに集約していく計画だ。その作業を簡素化するため、データを自動的に吸い上げる作業を担うRPAの導入も開始した。これにより、月別実績や年間推移、品目別の推移を比較、確認したり、食の安全という観点から原産地表示を組み合わせて確認したりと、さまざまな形でのデータ活用がスタートしているという。

 信州ハムでは、他にも多くの周辺システムを内製で開発している。これまで熟練の担当者に頼っていた資材管理の作業を、バーコードで読み込むだけでマスターと連携して管理できるようにする「資材管理システム」や、手書きでやりとりされることの多い贈答用商品の伝票処理を、デジタル複合機や運送会社のWebサービスと連携して自動化し、少ない手間で行えるようにした「ギフト受注管理システム」などを開発し、現場の負荷削減、効率化を進めているところだ。

 「FileMakerの基幹システム導入後、生産管理だけでなく周辺領域にも踏み込めるようになってきています。現場の可視化ができないか――という視点でスタートした新生産管理システムですが、その周辺で新たなシステムを組み合わせて省力化を図り、ムダな仕事をなくしていくような領域にも踏み込みつつあります」(小口氏)。それも、外注頼みではなく自力で開発するが故のスピード感があってこそだという。

“精神論”から“データに基づく”意思決定へ

 もう一つ、小口氏が実感している効果がある。各種会議での意思決定プロセスが劇的に変化したことだ。これまで月単位で締めてみなければ把握できなかった歩留まりや売上の数字がほぼリアルタイムに得られるようになった結果、「ここってどうなってるの?」「じゃ、次の会議で持ってきます」といったやりとりがなくなり、その場ですぐTableauのデータをさまざまな角度からドリルダウンしながら議論できるようになった。

Photo Tableauの導入で、データがよりグラフィカルな形で可視化されるようになり、インサイトを得やすくなったという

 議論のスピードだけでなく、質も変化した。データに基づいて、より本質的な課題について“意味のある議論”ができるようになったと小口氏は言う。

 「“この先1年後にどうなるのか”すら読めない激動の世の中にあって、イメージや精神論に頼るのはナンセンスです。会議ではしばしば、発言者の意向に流されて議論のベクトルがずれることがありますが、数字はうそをつきません。しっかりとした数字を把握した上で議論を深めていけば、どこが本質的な課題なのかが分かってきます」(小口氏)。課題の本質が分かれば、部下からの報告が的を射たものかどうかをすぐに判断できるため、議論が横道にそれたり、ムダな議論をしたりすることもなくなる。

 こうして、「見える化」から「データの活用」へと一段進んだ取り組みを始めた信州ハム。今後は「現場側からのニーズやオファーが出てくる環境にできるよう情報の可視化と活用を進め、現場の力を上げていきたい」と小口氏は意気込む。

 すでに経営状態はV字回復に転じている信州ハムだが、創立100周年に向けてチャレンジを続けていく。「新しもの好きという長野県民の県民性もあるかもしれませんが、来年(2019年)の今ごろはどんなことをやっているのか、自分でもワクワクしています」(小口氏)

【聞き手:後藤祥子、高橋睦美】

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