4500万人のユーザーに“パスワード”をやめさせたい――ヤフーが進める「もっと安全で簡単な認証」とは「秘密を共有しない」のが鍵(1/3 ページ)

共通ID「Yahoo! JAPAN ID」を使って多数のWebサービスを展開するヤフー。同社では、パスワードを無効にし、代わりにSNSや生体認証を使った新たなログイン形式を推進している。「パスワードよりも安全で、簡単」というその中身とは。

» 2019年02月14日 07時00分 公開
[高木理紗ITmedia]
photo ヤフーのサービス統括本部 IDソリューション本部の三原一樹氏

 スケジューラーやメール、オンデマンドの映像配信サービスなど、今や手軽に使えるようになったWebサービス。プライベートや仕事の場面でも使えるものが増えている。

 しかし、「しばらくログインしていないうちにパスワードを忘れてしまい、再発行してまた忘れた」「いつの間にかパスワードが漏えいし、誰かが自分になりすましてログインしていた」といったトラブルの経験はないだろうか。

 そんな手間やリスクをなくそうと、近年はパスワード以外の認証を取り入れるのがトレンドになりつつある。特にポータルサイト「Yahoo! JAPAN」をはじめ、「Yahoo! ショッピング」「Yahoo! メール」などのWebサイトを展開するヤフーは「パスワードレス」を強力に推し進めようとしている。

 同社のWebサービス共通のアカウント「Yahoo! JAPAN ID」は、2018年9月時点で4500万人を超えるユーザーを抱え、その数を伸ばしている。従来は、IDとパスワードを入力するタイプの認証形式を使っていたが、現在ではSMS認証や生体認証など、“パスワードを使わない”形式に移行しているという。一体何がきっかけだったのか。

パスワード認証の何が課題なのか

 2019年1月に都内で開かれたイベント「Yahoo! JAPAN Tech Conference」で講演した同社の三原一樹氏は、「そもそも、パスワードを使った認証には、セキュリティ面のリスクや使いにくさといった課題があった」と語る。

 三原氏によれば、同社が独自に行った調査では、Webサービスのユーザーの96%が「パスワードを忘れたことがある」と回答し、73%が「複数のサービスで同じパスワードを使い回している」と答えた。

photo (画像提供:ヤフー)

 ユーザーによるパスワードの使い回しは、深刻なセキュリティリスクにつながりかねない。使い回し先の一つからIDとパスワードの組み合わせが漏えいしてしまえば、悪意ある第三者がその情報を使って手当たり次第にWebサービスなどへのログインを試みる、いわゆる「リスト型攻撃」で認証を突破されやすくなるためだ。しかし三原氏によれば、同じ調査では、リスト型攻撃について「知らない」と答えたユーザーの割合が85%に上ることも分かった。

 そこで同社が乗り出したのが、パスワードを一切使わない、いわゆる「パスワードレス認証」だ。

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