日本IBM、顧客の導入支援へ“日本独自”のAIセンター設立 その目的と仕組みは“2週間かかった顧客へのAI提案が1日に”

日本IBMは、2019年末に発足させたという顧客向けのAI導入、活用のサポート組織「IBM AIセンター」の存在を初めて公表した。AI案件の提案や導入、活用を一本化して支援するという、その目的とは。

» 2020年02月10日 12時11分 公開
[高木理紗ITmedia]

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 日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)が、顧客企業の人工知能(AI)活用を本格化する施策に乗り出した。2020年2月7日、同社は顧客のAI導入サポートに特化した組織「IBM AIセンター」(以下、AIセンター)の内容を初めてメディアに公開した。

 同センターは、日本の顧客のAIソリューション活用に向けて、全体構想から実装、社内AI人材育成までの各段階別にサービスや製品などを全体で約150種類ほど用意。それらを各顧客のニーズに合う形に組み合わせ、日本IBMの営業部門や各事業部と連携しながら技術やサービスを提供する。同センターは2019年12月に発足し、2020年2月に本格稼働した。

日本IBMの伊藤 昇氏

 同社でAI事業を推進する伊藤 昇氏(クラウド&コグニティブソフトウェア事業本部長)は、「日本企業のAI活用は、各部門や業務といった小さな範囲で進んでいる。部分的な活用やコスト削減は実現しても、データドリブンな企業経営や新規事業の創出には取り組めていない企業が多いのではないか。企業全体でAIを活用することで成長に寄与したい」と話す。

 実は同センターは、全世界のIBM拠点にも例がない日本IBM独自の組織だ。同社が開設に踏み切った理由について、伊藤氏は「AI活用において、日本企業は他国に比べてベンダーが複数の製品やサービスをワンストップで“ソリューション”として提供してくれるよう望む傾向が強い。自身も過去に流通系の顧客を8年担当した際、同様の要望をよく聞いた。こうしたニーズを受け、日本独自の組織を立ち上げることになった」と話す。

戦略コンサル、営業、開発者――構成メンバーはさまざまな部門から

IBM AIセンターの体制

 AIセンターには、日本IBMの社内でAIに詳しいコンサルタントやデータサイエンティスト、AI製品やソリューションのスペシャリスト、開発者などが兼任の形で所属する。AIセンターの山田 敦センター長は「具体的な人数は明かせないが、メンバーの規模は3桁の数字に及ぶくらい」と説明する。

IBM AIセンターのセンター長を務める、日本IBMの山田 敦氏

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 「データとAIに理解があり、顧客の道筋をリードできる人材を部門横断的に結集した。企業全体で信頼できるAIを本格的に展開したい」と話す。

 同センターが提供するメニューは、大きく分けて「全体構想」「AI構築(業務、業種別)」「データ整備」「データ基盤、分析環境構築」「デジタル人材育成」の5段階に分けられる。そのうちデータ基盤としては、同社のAI製品群「Watson」をはじめ、Red Hatの買収で実現したオープンソース向けデータプラットフォーム「IBM Cloud Pak for Data」なども提供可能だ。

IBM AIセンターが提供するメニューの概要

 日本IBMは顧客のニーズを受け次第、国や部門を横断して約150種のサービスや製品から最適なメニューを組み合わせてワンストップのソリューションとして提示する。AIセンターを発足したことで、従来2週間必要だった提案を1日に短縮できたという。

 山田氏は、「メンバーは兼任でAIセンターの業務に関わるので、工数は増えているが、実際に現場の動きは迅速化している。全てのAI案件をセンターで扱うわけではなく、あくまで必要に応じて対応しているが、今後ニーズが増えれば、規模を拡大していきたい」と話す。

AI研究、コンサル出身のセンター長が語る「企業全体でAI活用」を実現する仕組み

 同センターがAI構築、運用、人材育成といった各段階にまたがるメニューを一元的に可視化し、ワンストップ式で提供可能にした目的は、顧客への対応や社員の行動の迅速化にとどまらない。

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