基幹システムのAzure移行を発表したクボタ MSとの“世界規模提携”で進めるクラウド×データ活用型ビジネスとはMicrosoft Focus(1/2 ページ)

農業向け機械や建機、水、環境など多くの事業を手掛けるクボタが、Microsoftと戦略的提携を発表した。基幹システムをAzureに移行するだけでなく、グローバル規模のデータ活用や新たなビジネスも加速したいという、同社の挑戦とは。

» 2020年04月15日 07時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

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 さまざまな分野で大規模システムのクラウド化が進む中、基幹システムのクラウド移行とデータを使った自社ビジネスの強化の両方に踏み切った日本企業がある。農業機械や建機、水道関連事業、スマート農業関連事業などを手掛けるクボタだ。

 2020年3月、同社はデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けて、米Microsoftと戦略的提携を発表した。

 今回の戦略的提携のポイントは2つだ。

 1つは「ITインフラストラクチャの最新化」だ。クボタのITインフラや、SAPなどの基幹システムを、「Microsoft Azure」(以下、Azure)に移行。AI(人工知能)をはじめとする先端技術を活用して業務を合理化すると同時に、グローバル規模でデータを統合して活用することでイノベーション創出を加速させ、ソリューション提供型ビジネスへの移行を目指す。

 もう1つは、「新たなイノベーションの創出」だ。

 クボタはイノベーションの創出を目的に、マイクロソフトと協力して「AI Machine Learning Labプロジェクト」を始動。クボタの社内で、AIソリューションを開発する新たな技術者の育成やAIを活用した業務革新、さらには、食料、水、環境分野における新サービスの構築を目指す。一方で、Microsoftは「Azure Machine Learning」で提供する技術や各種のトレーニングプログラムなどを活用し、クボタのAIへの取り組みを支援する。

 さらに、両社は将来に向けて持続可能な未来の実現を目指すために、お互いの取り組みにテクノロジーを活用した革新的なプロジェクトを、積極的に模索していくという。

農業、建機、水道、環境――幅広い事業を手掛けるクボタ

 両社の戦略的提携は数年にわたるものとなる。

 2020年1月に就任したクボタの北尾裕一社長は「クボタは、食料、水、環境分野において、事業を通じて課題解決に挑戦する企業。地球規模で広がる課題に対応するにはDXが不可欠であり、今回の提携は、その大きな一歩になる。Microsoftとともにイノベーションを創出し、新たなソリューションとバリューを社会に提供することを目指す」としている。

クボタの北尾裕一社長と、未来のコンセプトトラクター「Xtractor」(出典:クボタ)

 また、Microsoftのジャドソン・アルソフ氏(エグゼクティブバイスプレジデント)は「クボタは、環境に適合した農業および農業機械のリーダーとして認識されている。クボタの業界での深い経験とAzureのパワー、AI機能を組み合わせることで、世界各地に食料を供給し、きれいな水へのアクセスを確保し、全体的な持続可能性を促進する新しいイノベーションを実現できる」とする。

 2020年に創業130周年を迎えたクボタは、農機メーカーとしてのイメージが強い。実際、トラクターの全世界生産台数は400万台以上で、国内の農機市場ではほぼ半分のシェアを占める。また、建機でも高い実績を持ち、一般に「ミニユンボ」とも呼ばれる6トン未満のミニバックホーは18年連続世界シェア1位だ。だが、一般的には知られていないが、創業直後の1893年には、日本で初めて水道管を国産化している。その後、バルブやポンプなどの製造で事業を成長させてきた。現在、国内高度浄水処理施設におけるシェアは約80%に達するなど、水関連事業でも多くの実績を持つ。

 2019年度(2019年1月〜12月)の同社売上高1兆9200億円のうち、農機およびエンジンが65.7%、建機は16.2%に対して、水および環境関連も16.4%を占める。

 今回のMicrosoftとの協業でも、アルソフ氏が「きれいな水へのアクセスを確保し」という文言を使った背景はそこにある。

スマート農業をデータで支援 「クボタ スマートアグリシステム」(KSAS)とは

 また、クボタはスマート農業にも積極的に参入している。その中核的な役割を果たしているのが、農業経営支援システム「クボタ スマートアグリシステム」(KSAS)だ。

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