ITは目的ではなく手段、企業の競争力にいかにつなげるか
町田氏は、2003年1月1日付で現職に就き、この正月で1周年を迎えた。昨年、多くの企業向けセミナーに出席した中で、企業がITに取り組む姿勢が変わってきたことを感じているという。

 インテルはこの1年ほど、これまで自社のIT部門が実践してきたさまざまな取り組みを、生きた事例として取り上げ、ITをどう企業内で活用していくかを広める活動を、「IT@Intel」というキャッチフレーズのもとで展開してきた。CIOやCTOなどを集めたセミナーにも多く出席した町田氏は、ITを企業競争力にどう生かしていくかがポイントと話す。

ITmedia 2001年、2002年と企業向けPC需要は低迷していましたが、2003年には回復したと言えるのでしょうか?

町田 四半期ごとに見ていくと、Q1、Q2、Q3と、企業向けPCの需要回復傾向は確実に出ています。特にQ3では前年同期比で18〜19%の伸びを示しています。これは2000年問題を機に購入したPCの買い換えがスタートしたものだと感じています。2004年、2005年も順調に推移するでしょう。

 サーバでは、2003年の一番のキーワードといえるのがHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)ですね。この分野では大手の研究機関など向けに、数量的な伸びが見られました。サーバ市場全体の傾向としては、エントリーサーバ/ミッドレンジサーバではPCと同じような買い換え需要が見られ、2003年後半にかけて伸びてきました。ただ、メインフレーム、UNIX系RISCサーバ、Itanium 2搭載などのハイエンドサーバについては、もう少し時間がかかりそうです。

ITmedia 2003年夏にはItanium Processor Family(IPF)に、第三世代の「Madison(Itanium 2)」が加わりましたね。

町田 Itaniumについてインテルは、企業のデータベースやバックエンドシステム、IDCにおけるDBやアプリやWebであるとか、多種多様な要求において、これまで使っていたメインフレームからのダウンサイジングを考えたとき、ハードウェア、OS、ミドルウェア、アプリケーションなど、どれだけのプラットフォームが揃い、ユーザーが本当に移れるのか、という点にフォーカスしてきました。


ITをどういう目的のために使うか、そしてそのための投資をいかに行うかを考えて欲しいという町田氏

 Madison発表の7月時点でハードは40種ほどありましたが、それ以降もどんどんと裾野が広がってきています。マイクロソフトをはじめとするOSベンダーがItaniumをサポートするための準備も進んできています。またミドルウェアやOracleなどのデータベース、SAPやBEA WebLogicといったアプリケーションも揃ってきました。2003年はItaniumを搭載したサーバが、最終ユーザーが使える選択肢としての魅力が高まった年になりました。

 Itaniumシステムの基幹システムで採用した事例も、富士フイルム、UFJ、カブドットコム証券など次々と出てきています。こうした基幹システムに使っていただくようになったのは、ソリューションとして、上から下まで揃った材料として、お客様に提供できるようになったということです。各ITのベンダーさんたちが、それぞれの顧客に確実に訴求できるものを準備できたからです。2004年には、各ITベンダーと協力し、それをさらに進めていく年になると感じています。調査会社が、2003年にはIAベースのサーバが、RISCサーバを抜くだろうと予測していましたが、その傾向は出ています。インテルは2003年中に10万個以上のItaniumを出荷する予定だと、米インテルのオッテリーニ社長も話しています。

ITmedia 64ビットプロセッサということでは、Madisonとともに、2003年夏にはAMDがOpteronを投入しました。特にHPC分野ではTOP500 スーパーコンピュータリストにおいて、ItaniumやOpteronを搭載したHPCが上位に食い込むなどの動きが見られましたが、Opteronの登場についてはどのように見ていますか。

町田 いわゆるHPC分野は、パフォーマンスはもちろんのこと費用対効果も重視されます。使われるOSはある程度絞り込まれ、アプリケーションは専門的なものであり、企業の基幹系とは違ったものです。科学技術計算やビジネスインテリジェンスの分野で、これまでの10倍、100倍の速度で結果を出せるようになっており、HPCは今後どんどん伸びていく分野だと思います。そうした中で、技術的、価格的競争のもとで、最終的なユーザーがいいものを使えるようになるわけで、よいことだと考えます。

ITmedia IT@Intelという活動を積極的に進めていらっしゃいますね。

町田 2003年インテルではこれまでと違った取り組みとして、インテル自らものを売るということではなく、ITをどう活用して競争力を高めるかというセミナーを全国30カ所で開催しました。延べ7000人もの参加がありました。

 セミナーでは、IT部門の現場の方、CIOやCTOの方などに向けて、マイクロソフト、シスコシステムズ、シマンテック、NEC、東芝などの協賛を得て、具体的な事例を出しながら、ITを企業活動に生かす方法についてお話ししています。標準のハード、標準のOS、標準のアプリを使い、データベースもできるだけ標準化して共有化していくか。そして、ビジネスプロセスをどのようにして、導入したシステムにあった形に最適化していくのか。ITを使う上でどこに目標を持って、どのようにその効果を測るか。そういったことをインテル自身の例をはじめとして多くの事例を紹介しています。

ITmedia セミナーに参加する企業側の反応はどうですか。

町田 (インテルが紹介するようなIT化を)すでに実践されている会社もあります。そういう方針をITベンダーに対して持ち出されている会社、準備を開始した会社もあります。

ITmedia 新しいポジションに就かれて、1年経ったわけですが、この1年を振り返っていかがですか。

町田 1年は早かったですね。ほんとに早かった。2003年はプロダクトからソリューションまでを、確実に準備して、それをお客様に対して「これがほんとに使えますよ」といえる年になったと思います。2004年はほかのベンダーさんとの協力関係のもとで、ユーザーに対して、インテルの例や、先行した企業の成功例も示しながら、エンドユーザーをサポートできる体制を提供していきたいですね。

 インテルはムーアの法則を向こう10年続けられるよう、開発・製造技術に取り組んでいるわけですが、最終的には利用技術であるアプリケーションがそれをサポートしていかなければ、単なる技術革新で終わってしまいます。この1年の経験を踏まえて、テクノロジーとソリューションを組み合わせて、エンドユーザーに提供できる環境をつくっていきたいと思っています。

ITmedia インテルとして2004年に期待する製品群があったら教えてください。

町田 やはりItanium 2、Centrino、Pentium 4、この延長線上にあるでしょう。Centrinoでは企業におけるワイヤレスの利用促進を、Itanium 2では、ソリューションをもっと厚くできる環境作りを各ベンダーと協力してやっていきたいですね。

2004年、今年のお正月は?
昨年はゴルフの打ちっ放しに出かけると話していた町田氏だが、今年は温泉で静かに過ごすそう。旅館の予約はキャンセル待ちでたいへんだったとか。「温泉に出かけます。娘も息子ももう大きくなりましたので、家内と二人で静かな正月を過ごします」

2004年に求められる人材像とは?
お客様の問題点を解決するという受け身の姿勢ではなく、問題を発掘して提案していく、そういう姿勢でお客様に能動的に提案できる人が必要だと考えています。

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IT@Intel

[聞き手:佐々木千之,ITmedia]